バルク材との相互作用

バージョン2019.1以降のMotionSolveでは、バルク材挙動シミュレーションインターフェースのEDEM®(現在はAltairの傘下)を使用した連成シミュレーションをサポートしています。EDEMを使用して、石、砂、草、被膜などの粒状材料とマルチボディとの相互作用をシミュレートできます。

前提条件

  1. HyperWorks 2019.1以降
  2. EDEM 2019.1以降

連成シミュレーションの概略手順

  1. MotionViewでシステムモデルを定義します。
  2. EDEMでバルク材のモデリングを定義します。EDEMの使用法の詳細については、EDEMのマニュアル(http://www.edemsimulation.com/resources-learning)をご参照ください。
  3. MotionView EDEMサブシステムユーティリティを使用して、連成シミュレーションに必要なエンティティを持つサブシステムを作成します。このサブシステムには、バルク材と相互作用するすべてのコンポーネントが揃っています。必要に応じて、同じユーティリティを使用してMotionViewからEDEMにグラフィックスを転送できます。
  4. シミュレートモードの状態で、EDEMのカップリングサーバーをオンにします。
  5. MotionViewのRunパネルからMotionSolveシミュレーションを開始します。


Figure 1. MotionSolveとEDEMとの相互作用のインスタンスを作成するためのユーザーインターフェース

EDEMサブシステムを使用したモデルの構築

EDEMサブシステムツールは、MotionSolveとEDEMとの連成シミュレーション設定を定義します。このツールでは以下の操作が可能です。
  • MotionViewからEDEMにグラフィックスを転送する。
    Note: この機能は、チェーン駆動など、大量のコンポーネントを使用したモデルの場合に特に有用です。これにより、EDEMで同じコンポーネントを再モデル化する必要がなくなります。MotionViewは、バックグラウンドでSTLを生成し、EDEMカップリングサーバーを経由してEDEMに転送します。
  • EDEMをローカルで稼働しているか、別のサーバー上で稼働しているかを選択します。
  • EDEMを別のサーバー上で稼働している場合は通信パラメータを定義します。
  • EDEMの通信間隔やシミュレーション開始時刻などのシミュレーション設定を定義します。

HyperWorks v2020以降では、このインターフェースがWindowsのほか、Linuxプラットフォームでもサポートされています。このインターフェースは、クロスプラットフォーム環境で使用できます(WindowsではHyperWorksを使用して、LinuxではEDEMを使用できるほか、それを入れ替えた組み合わせも可能です)。

このツールを呼び出すには、Bulk Material Interfaceツールバーで EDEM Subsystemアイコンをクリックして以下のパネルを表示します。


Figure 2. EDEM Subsystemパネル
  1. GraphicsコレクターまたはBodyコレクターをアクティブにして、EDEMでバルク材と相互作用するグラフィックスまたはボディを選択します。Bodyコレクターを使用する場合は、そのボディに関連付けられた有効なグラフィックスがすべて選択されます。グラフィックス領域では、Box、Cylinder、Sphere、Ellipsoid、CADGraphics、FileGraphicsのグラフィックスタイプを選択できます。
    Note: 弾性体(CMS)を選択するにはBodyコレクターを使用します。
    Tip: 複数のグラフィックスを同時に選択するには、Select a Graphic/Bodyダイアログを使用します(以下のダイアログを表示するには該当のコレクターをダブルクリックします)。


    Figure 3. Select a Graphicダイアログ
    Note:
    • 現在のところ、この機能でサポートしているグラフィックスは、Box、CADGraphic、Cylinder、Ellipsoid、File(H3D/OBJなどのメッシュベースのグラフィックス)、およびSphereです。これら以外のグラフィックスをAdvanced Graphicsセレクターダイアログで選択しても使用されず、警告メッセージが表示されます。
    • 選択したグラフィックスにボディが割り当てられていない場合、そのグラフィックスはリストで赤色の強調表示になります。形状をEDEMに転送する前やEDEMシステムを作成する前に、このようなグラフィックスをリストから削除しておく必要があります。
  2. EDEMに転送するグラフィックス(CADGraphicsとPrimitives)のメッシュの粗さを制御するにはMesh Refinementボタンをクリックします。
    Maximum facet width ratio 要素の最大幅(m)。
    Curve chord tolerance factor 湾曲したエッジでの弦偏差を制御する許容係数。
    Surface plane tolerance factor 湾曲したエッジでのサーフェス偏差を制御する許容係数。
  3. 次のようにEDEM serverを選択します:
    1. MotionViewおよびMotionSolveと同じローカルマシン上でEDEMを稼働している場合はLocalを選択します。
    2. 別のマシン上でEDEMを稼働している場合はRemoteを選択します。
      1. EDEM IP address - EDEMアプリケーションを実行するマシンのIPアドレスを指定します。デフォルトでは、ローカルマシンを参照する127.0.0.1に設定されています。
      2. MotionView Export directory – リモートサーバー上のEDEMに形状を転送する場合にのみ使用します。両方のマシンからアクセスできる共有ディレクトリを選択します。MotionViewでは、このディレクトリを一時的な場所として使用し、形状を転送します。
      3. EDEM Import directory – 上記と同じ共有ディレクトリへのパス文字列ですが、EDEMを実行しているマシンで認識できるディレクトリです。
  4. MotionSolveとEDEMとの間の通信間隔をcommunication intervalで指定します。
  5. EDEMに形状を転送するには、EDEMのGUIをオン、カップリングサーバーをオンにした状態で、Transfer to EDEMをクリックします。選択したグラフィックスが形状としてEDEMに転送されます。
  6. Start EDEM simulation at time - EDEMシミュレーションを開始する時刻を入力します。MotionSolve側のシミュレーション時間がこの指定時間に達すると、MotionSolveとEDEMとの間の連成が確立されます。デフォルトは0.0です。
これで、EDEMとの連成シミュレーションに向けたシステムの準備が完了しました。
Note: EDEMの各コンポーネントは個別に作成できます。コンポーネントの名前は、component_0000やcomponent_0001などの名前にする必要があります。弾性体の場合は、命名規則がflex_component_0000のようになります。この名前の順序は、ツールでグラフィックスを選択する順序と一致している必要があります。

モデルの解析

モデルを定義した後は、“MotionSolve単独で”シミュレーションを実行する場合とまったく同じ解析プロセスを実行します。

MotionView/MotionSolveRun Solverパネルを使用してシミュレーションを開始します。MotionViewによってMotionSolveが起動します。

MotionSolveは、指定されたマシンでEDEMにサブプロセスとして接続し(EDEMでカップリングサーバーをオンにしておく必要があります)、通信を開始します。以降は、システムを解析するためにユーザーによる操作が別途必要になることはありません。
Note: EDEMでは、可変または固定のステップサイズでの実行が可能です。シミュレーションは固定ステップで実行することをお勧めします(通常は1e-4または1e-5で十分です)。さらに、通信間隔は選択したステップサイズで割り切れる値とする必要があります。これにより、EDEMソルバーは、バルク材による荷重をMotionSolveに伝えるうえで最適な時間に、その処理を実行できるようになります。


Figure 4. MotionSolveとEDEMを組み合わせたシミュレーションを実行するためのユーザーインターフェース
Tip: 連成シミュレーションをバッチモードで実行する必要がある場合は、EDEMメニューMS/EDEM cosimulation in batch modeユーティリティを使用できます。

結果の確認

EDEM結果は、MotionViewのEDEMメニューにあるGenerate H3D from EDEM結果ツールを使用してH3Dフォーマットに変換することにより、HyperViewで表示できます。


Figure 5.
表示されたGenerate H3D from EDEMダイアログでEDEMモデルファイル(.dem)を指定し、変換先の単位を指定します。
これで、MotionSolveとEDEMの結果が2つの別々のH3Dファイルで得られます。MotionSolveのH3Dには、システムレベルの情報が記述されています。EDEMのH3Dには、バルク材の情報が記述されています。
  1. MotionSolveのH3DをHyperViewのウィンドウに読み込むには、MotionViewのRunパネルにあるAnimateボタンを使用します。
  2. システム全体を1つの環境で可視化するには、Load Model and ResultsパネルのOverlayオプションを使用して、HyperViewでEDEMのH3Dをオーバーレイ表示します。


Figure 6. MotionSolveとEDEMを組み合わせたシミュレーションの結果をオーバーレイするためのユーザーインターフェース

既知の制限事項

  1. MotionSolveでEDEMと相互作用できるコンポーネントの最大数は1024個です。
  2. EDEM連成のインスタンスを複数作成することはできません。
  3. NLFEボディはサポートされていません。
  4. コンポーネントによっては、EDEMに転送すると複数のコンポーネントとしてマージされていない状態になるものがあります。そのようなコンポーネントを1つのコンポーネントにマージするには、EDEMの“Merge Geometry”ツールを使用します。
  5. グラウンドボディに属しているグラフィックスとの連成は現在サポートされていません。MotionViewで作成したシステムにグラフィックスを追加せずに、別途、そのグラフィックスをEDEMに転送する必要があります。
  6. MotionSolveのSave/Load操作に、EDEMの対応する操作を組み合わせることはできません。
  7. この接続では、準静解析と線形解析がサポートされていません。
  8. Windowsでは、Microsoft C++ 2010 SP1再頒布可能パッケージ(x64)がインストールされていないと、エラー“Failed to load edem.dll”(edem.dllを読み込めませんでした)が発生して連成シミュレーションが失敗します。
MotionSolveの連成シミュレーションと後処理に関する詳細については、MotionSolveヘルプの“MotionSolveでの離散要素法シミュレーション”をご参照ください。

関連項目

MV-7021: MotionSolve/EDEMの連成シミュレーション

www.edemsimulation.com