Throttle-off Cornering

Throttle-off Cornering eventは、定常状態で定常円旋回している車両の動特性、およびコーナリング中に駆動トルクが突然消失した場合の車両の反応をシミュレートします。このイベントには、車両が定常状態になるための短い直線経路、一定半径円経路、スロットルの解除およびそれに続く車両の反応が含まれています。左旋回または右旋回のシミュレーションが可能です。車両およびタイヤの適切な出力リクエストが組み込まれています。結果をプロットするために、プロットテンプレートが用意されています。



Figure 1. Throttle-off Cornering event


Figure 2. Throttle-off Cornering eventの上面図


Figure 3. ボディグラフィックスが表示された車両モデル

説明

このイベントは、MotionView Assembly Wizardを使用して構築されたフルビークルモデルで動作するように設計されています。Task Wizardを使用して追加したこのイベントは、自動的にモデルに付加されます。また、イベントのアタッチメント方式に厳密に従っていれば、手動で構築したモデルでもこのイベントを使用できます。

このイベントでは、まず車両は、定常挙動になるように短い直線経路を走行します。その後、円形路へと進み、定常状態でのコーナリングとなるように十分な距離を旋回走行します。次に、スロットルトルクを消失させ、トルクがないことによる動特性を観察できます。テストの目的は、このような突発的な出来事の間の車両の安定性を確認することです。

このイベントではエンジンブレーキによる影響は受けないということに注意してください。エンジンブレーキを考慮すると、イベントがより複雑になる可能性があります。

イベントのシーケンスは次のとおりです:

時間
説明
0
静解析 - 車両は地面に固定され、ホイールは回転できない状態のままとなります。
0+
車両を地面に固定する2つのジョイントが解除され、4つすべてのタイヤが回転可能となります。動解析が開始されます。
0->方向転換
車両は円形路に入るまで所定速度で走行します。円形路までの距離は、(2*π*円半径/2)または円周の4分の1となります。
方向転換->スロットル遅延時間
車両は定常円旋回のカーブへ向きを変え、コーナリングが定常状態になるまでカーブを曲がり続けます。
スロットル遅延時間
コーナリングのトルクが定常状態から0になるスロットルステップ継続時間により、車両からスロットルが除去されます。
Event end
イベントは20秒で終了します。イベント終了時間は、イベントテンプレート内で定義されており、そのテンプレート内の最後の<Simulateコマンドにおいて終了時間値を編集することで変更できます。


Figure 4. Throttle-off Corneringの経路の説明

横加速度、円の半径、スロットル遅延、およびスロットルステップ期間は、イベントフォーム経由で変更できます。旋回方向は、左または右に設定できます。地上z座標は計算値なので変更できません。

速度は、車両がイベント中は定常状態でコーナリングして所定の旋回半径に沿って走行すると想定し、リクエストされた横加速度、および円の半径を使用して、イベントのデータセット(ds_thrt_cm)で計算されます。使用されるコアの方程式は、Velocity=sqrt(circle radius * Lateral Acceleration)です。データセット内の実装では、以下のような変換係数も方程式で使用されます:
定数
定型
1000
メートルからミリメートルへ変換します(1m=1000mm)。
9810
Gを加速度(mm/秒^2)に変換します(1G =9810mm/秒^2)。
447.04
マイル/時をmm/秒に変換します(MPH*447.04=mm/秒)。

円形路に入るまでの距離は、イベントコントローラーによって固定されており、変更はできません。円形路までの距離は、(2*π*円半径/2)または円周の4分の1となります。円形路までの距離は、車両が直線走行で定常状態に達することができる長さとなります。

イベントを定義するために9タイプのモデリング要素コンテナーが使用されています(下記参照)。イベントには、3つのサブシステム(Output Requests、Steer controller、Drive torque controller)も含まれています。

アタッチメント

イベントは標準のイベントアタッチメントを使用します。Model Wizardを使用してモデルを構築している場合、アタッチメントは自動的に定義されます。アタッチメントには、イベントが解析を実行するために必要な最小限のデータが格納されています。アタッチメントは、大半のイベントで標準です。

データセット

システム内では1つのデータセットが使用され、そこには経路を記述するために使用するデータが格納されています。このイベントでは、Lateral Acceleration、Circle Radius、Throttle delay、およびThrottle step durationを設定できます。Turn Directionは、要件に応じて、LeftまたはRightに設定可能です。初期車両速度、ホイール回転速度、および地面の高さは計算された値で、変更できません。

フォーム

Formは、Throttle-off corneringイベントを変更する唯一の場所です。変更できるパラメータは、Lateral Acceleration、Circle Radius of the path、Turn Direction、Throttle delay、およびThrottle step durationです。Ground z Coordinateは、計算された値で、Tire Data FormのホイールのCG Z位置とタイヤ転がり半径を使用して計算されます。

グラフィックス

1つのグラフィックスがイベントに定義されています。グラフィックスは、路面グラフィックスを定義し、ユーザーが入力する必要はありません。

スキッドパッドグラフィックスは走行経路を表現するために含まれており、Throttle-off corneringのForm内のデータを使用してパラメータで定義されています。スキッドパッドのグラフィックスは、イベントが根本的に変更されないかぎり、編集する必要はありません。

ジョイント

Throttle-off corneringイベントには、1つの球ジョイントが含まれています。このジョイントは、ダミーボディをステアリングラックに結合します。このジョイントは、ADAMSで特定のイベントが機能できるように設けられています。モデルを手動で構築する場合は、ダミーボディをステアリングラックに結合します。

マーカー

Throttle-off corneringイベントには、1つのマーカーが組み込まれています。経路の原点は、スキッドパッドグラフィックスの原点で、車体のCGになるようにパラメータで定義されます。マーカーはポイントを指し示し、ポイントにはパラメータのロジックが含まれます。

モーション

3つのモーションがイベントに組み込まれています。ステアリングモーションは、ステアコントローラーによって提供され、ハンドルを車体に結合する回転ジョイントに作用します。ステアリングコラムが含まれない場合、ジョイントがステアリングラックのインプットシャフトと車体の間に作用します。

Front Wheel MotionおよびRear Wheel Motionは、ホイールのハブをナックルに繋ぐホイールのスピンドル回転ジョイントに作用します。ホイールがナックルに固定されていることから、当初のこのモーションは0なので、モデルは静的に収束します。動解析中にタイヤが回転できるように、静解析の後、モーションは非アクティブ化されます。

ポイント

2つのポイントがイベント内で定義されています。すべてのポイントを使用してスキッドパッドのグラフィックスが作成されます。ポイントには、それらのX、Y、Zの位置を定義するパラメータのロジックが格納されます。ポイントは変更しないでください。

ソルバー変数

Throttle-off corneringイベントは、1つのソルバー変数、Steer Path Variableのみで構成されています。この変数は、希望の経路に沿って走行するためにハンドルでの入力を適用するユーザーサブルーチンをコールします。

Templates

Throttle-off corneringイベントタスクにはテンプレートが組み込まれています。このテンプレートはソルバー固有で、MotionSolveテンプレートのみがドキュメント化されています。このテンプレートは、</Model>コマンドの後にソルバーデックに挿入されて、このイベントの実行を制御します。
このイベントのテンプレートを以下に示します:
<ResOutput
     angle_type          = "YPR"
  />
  <ResOutput
     mrf_file            = "TRUE"
  />
  <ResOutput
     plt_file            = "TRUE"
  />
  <H3DOutput
     switch_on           = "TRUE"
     increment           = "1"
  />
  <ResOutput
     abf_file            = "TRUE"
  />                                 
{if (tire_dataset.opt_omega.ival ==1)}
<!--Initial static analysis -->

<Simulate
	analysis_type = "Static"
	end_time      = "0.0"
/>	
{endif}
<Deactivate
	element_type = "MOTION"
	element_id = "{mot_frnt_wheel.l.idstring}"
/>

<Deactivate
	element_type = "MOTION"
	element_id = "{mot_frnt_wheel.r.idstring}"
/>
<Deactivate
	element_type = "MOTION"
	element_id = "{mot_rear_wheel.l.idstring}"
/>
<Deactivate
	element_type = "MOTION"
	element_id = "{mot_rear_wheel.r.idstring}"
/>
{if (tire_dataset.opt_omega.ival ==2)}
<!--Initial static analysis -->

<Simulate
	analysis_type = "Static"
	end_time      = "0.0"
/>	
{endif}
<Deactivate
	element_type = "JPRIM"
	element_id = "{j_clamp_1_body.idstring}"
/>
<Deactivate
	element_type = "JPRIM"
	element_id = "{j_clamp_2_body.idstring}"
/>

<Motion_Joint
     id                  = "{wh_motion.idstring}"
     expr                = "VARVAL({sv_path.idstring})"
  />

<Simulate
     analysis_type       = "Transient"
     end_time            = "20"
     print_interval      = "0.04"
  />

<Stop/>