Pulse Steer

Pulse steerイベントは、直線上を一定速度で走行中に発生するハンドルへの突然のパルス入力に対して、車両がどのように応答するかをシミュレーションします。イベントへの入力はハンドルへのトルクの場合も角度の場合もあります。ユーザーはパルス振幅とパルス幅を設定できます。パルスは、sine、step、またはramp関数として入力でき、ユーザーはその幅を制御できます。駆動トルクコントローラーを使用して、車両を一定速度に維持します。また、タイヤシステムと出力リクエストシステムには、車両とタイヤの標準出力が組み込まれています。結果をプロットするために、プロットテンプレートが用意されています。

車両の動的応答を特徴づけるために、Pulse steerが使用されます。車両の共振周波数を特定するために、結果は通常、周波数領域内で解析されます。周波数解析のための十分なデータを得られるように、パルスイベント前後におよそ10秒間、車両が固定のステアリングホイール角で走行されます。


Figure 1.

このイベントは、MotionView Assembly Wizardを使用して構築されたフルビークルモデルで動作するように設計されています。Task Wizardを使用して追加したこのイベントは、自動的にモデルに付加されます。また、イベントのアタッチメント方式に厳密に従っていれば、手動で構築したモデルでもこのイベントを使用できます。

このイベントを使用して、ハンドルへの突然のパルス入力に対する車両の応答を判断します。イベントパラメータは、イベントフォームで入力します。

ステアリングホイールの変位

ハンドルの変位パルスの拡大表示を以下に示します。正弦波とステップは、非常によく似た入力です。この入力のパルス幅は0.2秒、パルス振幅は20度のステアリングホイール角です。モデルは通常、ドライバーや走行マシンより正確な正弦波で駆動できます。


Figure 2. ステアリング入力 - 正弦波状パルス、ステップパルス、およびランプパルス
イベント全体のステアリングホイール角を以下に示します。イベントが20秒間実行され、パルスが10秒地点に集中しています。


Figure 3. Pulse Steerのステアリング入力
正弦波入力に対するステアリング入力の拡大部分を以下に示します。このグラフでは、パルス入力パラメータのステアリング入力の大きさと長さを示しています。個々のテスト要件に合わせて、パラメータを変更してください。


Figure 4.

イベントシーケンス

Pulse steerイベントは20秒間のイベントであり、パルスはイベントの中央で発生します。イベントの前後およそ10秒前後で、周波数応答のポスト処理用のデータがパルスによって作成されます。大部分の車両は左右対称ではないため、ステアリング入力の大きさの符号を変更して、右および左のステアリング方向でイベントを実行できます。
時間 説明 目的
0 Statics 車両を地面に固定しホイールをハブに固定して行う、静的解析。
0+ ジョイント解放 車両を地面に固定している2つのジョイントと、ホイールをスピンドルに固定している4つのジョイントが解放されます。
0++ 動解析 ハンドルが0に固定され、トルクコントローラーが一定速度を維持した状態で、動的イベントが開始します。
10-1/2

(パルスの長さ)

パルスの開始 イベントフォームで指定した方法を使用してパルスイベントが始まります。
10+1/2

(パルスの長さ)

パルスの終了 イベントフォームで指定した方法を使用してパルスイベントが終了します。
20 イベント終了 イベントが終了します。イベントテンプレートを変更して、終了時間を変更します。
Note:
  • ステアリングパルスの式はイベントテンプレートで定義し、イベントフォームを使用して入力したデータセット値がその式で参照されます。上級ユーザーであれば、テンプレートを編集してイベントを変更できます。
  • 当社の調査では、フォース入力より変位入力の方が安定性があることが示されています。
  • イベントは、無限に平坦な路面で実行されます。また、道路用グラフィックは表示されません。イベントを見やすくするには、グラフィックを追加します。

参考資料

ISO +7401-2003 – Road Vehicles-Lateral transient response test methods-Open-loop test methods.

Pulse Steerイベントの作成

  1. Task WizardをクリックしてPulse steer analysisオプションを選択します。
  2. Finishをクリックします。
    Project Browserに新しいデータが入力され、Car/Small truck - Full vehicle tasksダイアログが開きます。
  3. Vehicle velocity欄の値によって、イベント中に車両が維持する速度が決まります。この欄に値を入力します。
  4. ドロップダウンメニューでステアリング入力タイプを選択して入力します。角度の場合は、ハンドルにステップの角度を適用します。トルクの場合は、ハンドルにステップのトルクを適用します。
  5. ステアリング入力の大きさによって、適用されるステアリング入力の大きさ(度またはNewton-mm)が決まります。正の値は左回り、負の値は右回りです。
  6. パルスの長さを秒単位で入力します。
  7. イベントのパルス過程で使用する関数タイプを選択します。
  8. Nextをクリックします。
  9. Finishをクリックします。
    イベントが作成され、Project Browserに表示されます。

数種類のモデリング要素コンテナーを使用してイベントを定義します。イベントには、1つのサブシステムとして駆動トルクコントローラーもあります。

  1. Project Browserで、Data Setsを展開してFull Vehicle Dataをクリックします。
    パネルにデータセット情報が表示されます。システム内でデータセットが1つ使用され、そのデータセットに、Pulse steerイベントを記述するために使用されるデータが格納されます。このイベントを使用すると、横加速度、円の半径、ステア解放時間、および旋回方向(左または右)を設定できます。初期車両速度、ホイール回転速度および地上高は計算値であり、手動で変更できません。

フォースは、単一のボディまたはボディペア間にフォースまたはトルクを適用するエンティティです。イベントフォームで適用方法としてフォースを選択している場合は、トルクをハンドルに適用する際にこのイベントのフォースが使用されます。フォースのブラウザビューは次のとおりです:

  1. Project Browserで、Forcesを展開してSteering Torqueをクリックします。
    Forceパネルが表示されます。このモデルのフォースは、ハンドルに適用されます。ハンドルとステアリングコラムが含まれていない場合は、フォースはステアリングギアのインプットシャフトに適用されます。
  2. Rot Propertiesタブをクリックします。
    フォースは、最初はゼロに定義されています。イベントテンプレートでイベントフォームの入力を使用してフォースを再定義します。
  3. Project Browserで、Formsを展開してPulse Steer Dataをクリックします。
    フォームは、レーンチェンジイベントを変更する必要のある唯一の場所です。変更できるパラメータは、横加速度、円の半径、旋回方向、およびステア解放時間です。地上のZ座標は計算値です。タイヤデータフォームでホイール重心のZ位置とタイヤ転がり半径を使用して計算されます。
  4. Project Browserで、Jointsを展開して、Rack Dummy Ball Jointをクリックします。
    Pulse steerイベントには球ジョイントが1つ組み込まれています。ジョイントは、ダミーボディをステアリングラックに結合します。ジョイントは、特定のイベントをADAMSで機能させるために含まれています。
  5. モデルを手動で構築する場合は、パネルを使用してダミーボディをステアリングラックに結合します。
  6. Project BrowserMotionsを展開します。
    3つのモーションがイベントに組み込まれています。車両に対するステアリングモーションは、ステアコントローラーによって提供され、ステアリングコラムを車体に接合する回転ジョイントに作用します。モデルにステアリングコラムがない場合、このジョイントはステアリングラック入力軸と車体の間で機能します。

    前輪と後輪のモーションは、ホイールハブをナックルに結合する、ホイールスピンドルの回転ジョイントに作用します。ホイールがナックルに固定されていることから、当初のこのモーションは0なので、モデルは静的に収束します。動解析中にタイヤが回転できるように、静的平衡解析の後、モーションは非アクティブ化されます。

  7. Steering Wheel Motionをクリックします。
    新しいデータを反映してパネルが更新されます。
  8. 必要に応じて変更を加えます。
  9. Project Browserで、Templatesを展開してPulse steerをクリックします。
    このテンプレートはソルバー固有で、MotionSolveテンプレートのみがドキュメント化されています。テンプレートは、</Model>コマンドの後にソルバーデックに挿入され、イベントの実行を制御します。
    このイベントのテンプレートを以下に示します。テンプレートには、生成される出力ファイル、実行される一連のイベント用のコマンドと、Pulse Steerイベントシーケンスの作成に使用されるフォース、ジョイント、およびモーション用の実行時コマンドがあります。
    <ResOutput
         angle_type          = "YPR"
      />
      <ResOutput
         mrf_file            = "TRUE"
      />
      <ResOutput
         plt_file            = "TRUE"
      />
      <H3DOutput
         switch_on           = "TRUE"
         increment           = "1"
      />
      <ResOutput
         abf_file            = "TRUE"
      />
    <!--Initial static analysis -->
    
    <Simulate
    	analysis_type     = "Static"
    	end_time          = "0.0"
    />	
    
    <Deactivate
    	element_type      = "MOTION"
    	element_id        = "118002"
    />
    
    <Deactivate
    	element_type      = "MOTION"
    	element_id        = "218002"
    />
    
    <Deactivate
    	element_type      = "MOTION"
    	element_id        = "118003"
    />
    
    <Deactivate
    	element_type      = "MOTION"
    	element_id        = "218003"
    />
    <Deactivate
    	element_type      = "JPRIM"
    	element_id        = "303001"
    />
    
    <Deactivate
    	element_type      = "JPRIM"
    	element_id        = "303002"
    />
    
    <Deactivate
    	element_type      = "FORCE"
    	element_id        = "31801"
      />
    
    <Motion_Joint
         id                 = "318001"
         expr               = "IF(TIME-9.9:0,0,IF(TIME-10.1:-10D-(-10D)
    *COS(2*PI*5*(TIME-9.9)),0,0))"
    />
    
    <Simulate
            analysis_type   = "Transient"
            end_time        = "20"
            num_steps	= "2000"
    />
    
    <Stop/>