材料
OptiStructによって提供される材料のタイプは、等方性材料、直交異方性材料、異方性材料です。構造モデルで使用される各材料の特性を定義するには、材料特性定義カードを使用します。
MAT1バルクデータエントリは等方性弾性材料の特性定義に用います。このエントリは任意の構造要素から参照でき、また任意のプロパティカードからでも参照できます。
MAT2エントリは異方性材料の特性定義に用いられます。このエントリは三角形または四角形の膜要素および曲げ要素にのみ適用され、PSHELL、PCOMP、およびPCOMPGプロパティカードのみから参照できます。この材料タイプでは、平面内の応力とひずみの関係を指定します。材料の座標系と要素の座標系間の角度は結合カードで指定します。
MAT3エントリは軸対称および平面ひずみ要素の材料特性定義に用います。このエントリはCTRIAX6要素から参照でき、PAXIプロパティカードからも参照が可能で、CTAXIまたはCQAXI要素上で参照されます。同様に、CQPSTNおよびCTPSTN要素から参照されるPPLANEプロパティによって参照が可能です。
MAT4エントリは、等方性熱材料特性の定義に使用されます。このエントリは任意の構造要素から参照でき、また任意のプロパティカードからでも参照できます。
MAT5エントリは、異方性熱材料特性の定義に使用されます。このエントリは任意の構造要素から参照でき、また任意のプロパティカードからでも参照できます。
MAT8カードは2次元の直交異方性弾性材料の特性定義に用います。積層複合材レイアップの個々の層は、一般的にこのような直交異方性の特性を持ちます。積層複合材の層はシェル要素を使用してモデル化されるので、MAT8特性データを参照できるのは、PSHELL、PCOMP、およびPCOMPG特性カードのみです。
MAT9バルクデータエントリは3次元ソリッドの異方性弾性材料の特性定義に用います。ある点における応力テンソルの6つの独立した応力成分と、その点におけるテンソルの6つの独立したひずみ成分とをリンクしている一般的な異方性の応力とひずみの関係では、弾性マトリックスに21の独立した定数が含まれます。これらの値はMAT9バルクデータカードを使って与えられます。MAT9バルクデータカードは、CHEXA、CPENTA、CPYRA、およびCTETRAソリッド要素と共に使用され、PSOLID特性カード上でのみ参照することができます。MAT9データが指定されるオプションの座標系は、PSOLIDバルクデータエントリを介して与えられます。
MAT10バルクデータエントリは流体-構造連成(音場)解析の流体要素の材料特性定義に用います。このエントリは、FCTN=PFLUIDを持つPSOLIDエントリからのみ参照されます。
ビオット(多孔質弾性体)材料は、MATPE1エントリを使用して定義されています。
温度依存の材料特性は、MATT1、MATT2、MATT8、およびMATT9を使って定義されます。これら4つはすべて、上記と同じ特徴を有します。各特性の温度依存性は、TABLEM1、TABLEM2、TABLEM3、またはTABLEM4テーブルエントリを使って定義されます。
複合積層材 は、PCOMP、PCOMPPおよびPCOMPG特性を使って定義されます。これらは材料タイプではなく、積層レイアップの各プライは、異なる材料を参照することが可能です。
弾塑性材料特性はMATS1を用いて定義されます。その非線形材料特性は表形式入力TABLES1が必要です。MATS1はMAT1の拡張として同じMIDで定義されます。MATS1は全ての非線形ソリューションに適用可能です。
超弾性材料特性はMATHEを用いて定義されます。Ogden、Arruda-Boyceなど、様々な超弾性材料モデルが用意されています。
粘弾性材料の特性は、周波数依存性が必要な場合は、 MATVEまたはMATFVEを使用して定義します。
クリープ材料特性はMATVPを用いて定義されます。
粘着域モデリングは、MCOHEまたはMCOHEDエントリを用いて定義できます。
鋳鉄塑性材料は、MCIRONバルクデータエントリを用いて定義できます。
ユーザー定義の構造材料プロパティは、MATUSRを用いて利用が可能です。LOADLIBエントリを介して、.dllまたは.soライブラリを参照することができます。詳細については、ユーザーズガイドのユーザー定義の構造材料をご参照ください。
ユーザー定義の熱材料プロパティは、MATUSHTを用いて利用が可能です。LOADLIBエントリを介して、.dllまたは.soライブラリを参照することができます。
材料モデルは、Multiscale Designerを用いて定義し、MATMDSエントリを介して使用することが可能です。
材料特性 | 非線形性 | 時間依存性 | 温度依存性 | 周波数依存性 | 材料カード |
---|---|---|---|---|---|
等方性 | - | - | - | - | MAT1 |
- | - | - | ○ | MAT1 + MATF1 | |
- | - | ○ | - | MAT1 + MATT1 | |
弾塑性 | - | - | - | MAT1 + MATS1 | |
弾塑性 | - | ○ | - | MAT1 + MATS1 (TABLESTを参照) | |
超弾性 | - | - | - | MATHE | |
粘弾性 | - | - | - | MAT1 + MATVE | |
粘弾性 | - | - | ○ | MAT1 + MATFVE | |
粘弾性、超弾性 | - | - | - | MATHE + MATVE | |
クリープ | - | - | - | MAT1 + MATVP | |
クリープ、弾塑性 | - | - | - | MAT1 + MATVP + MATS1 | |
クリープ | - | ○ | - | MAT1 + MATVP + MATTVP | |
異方性 | - | - | - | - | MAT9(ソリッド要素) MAT2(シェル要素) |
- | - | - | ○ | MAT9 + MATF9(ソリッド要素) MAT2 + MATF2(シェル要素) |
|
- | - | ○ | - | MAT9 + MATT9(ソリッド要素) MAT2 + MATT2(シェル要素) |
|
粘弾性 | - | - | - | MAT9 + MATVE | |
粘弾性 | - | - | ○ | MAT9 + MATFVE | |
直交異方性 | - | - | - | - | MAT9OR(ソリッド要素) MAT8(シェル要素) MAT3(軸対称および平面ひずみ要素) |
- | - | - | ○ | MAT8 + MATF8(シェル要素) MAT3 + MATF3(軸対称および平面ひずみ要素) |
|
- | - | ○ | - | MAT9OR + MATT9OR(ソリッド要素) MAT8 + MATT8(シェル要素) MAT3 + MATT3(軸対称および平面ひずみ要素) |
|
流体 | - | - | - | - | MAT10 |
- | - | - | ○ | MAT10 + MATF10 | |
熱 | - | - | - | - | MAT4(等方性) MAT5(異方性) |
○(温度) | - | ○ | - | MAT4 + MATT4(等方性) | |
ガスケット | - | - | ○ | - | MGASK |
疲労解析 | - | - | - | - | MATFAT |
ビオット(多孔質弾性体) | - | - | - | - | MATPE1 |
ユーザー定義の構造材料サブルーチン | ○ | ○ | ○ | - | MATUSR(サブルーチンはFortranおよびC) |
ユーザー定義の熱材料サブルーチン | ○(温度) | ○ | ○ | - | MATUSHT(サブルーチンはFortranおよびC) |
Multiscale Designerベースの材料 | ○ | - | - | - | MATMDS(Altair Multiscale Designerを使用) |
破壊基準 | - | - | - | - | MATFの基準と許容値 基準 / 許容値はMAT1、MAT2、MAT8、PCOMP、PCOMPP、PCOMPGで定義することも可能 |
材料特性 | 非線形性 | 時間依存性 | 温度依存性 | 周波数依存性 | 材料カード |
---|---|---|---|---|---|
等方性 | - | - | - | - | MAT1 |
弾塑性 | - | - | - | MAT1 + MATS1 | |
超弾性 | - | - | - | MATHE | |
粘弾性 | - | - | - | MAT1 + MATVE | |
粘弾性、超弾性 | - | - | - | MATHE + MATVE | |
異方性 | - | - | - | - | MAT2(シェル要素) |
粘弾性 | - | - | - | MAT9 + MATVE | |
直交異方性 | - | - | - | - | MAT8(シェル要素) |
陽解法動的サブケース(Radiossインテグレーションによる)では、より多くの非線形材料則が利用可能です。一般的な規則として、陽解法動的解析にのみ適用可能な材料定義は、基礎の弾性材料特性を定義するMAT1材料の拡張として定義されます。この拡張はベース入力と同じMIDを共有するものとしてグループ化されます。可能なMATXyz拡張のリストを以下に示します。材料則が材料の曲線を必要とする場合、TABLES1エントリが用いられます。
陽解法動解析(ANALYSIS=EXPDYNを介したRadioss連携)
- 材料カード
- 詳細
- MATX0
- ボイド材料
- MATX02
- Johnson-Cook弾塑性材料
- MATX13
- 剛体材料
- MATX21
- 岩石-コンクリート材料
- MATX25
- 複合材シェル材料、TSAI-WU と CRASURV 定式化
- MATX27
- 脆性弾塑性材料
- MATX28
- ハニカム材料
- MATX33
- 粘弾性フォーム材料
- MATX36
- 区分線形弾塑性材料
- MATX42
- Ogden-Mooney Rivlin材料
- MATX43
- Hill直交異方性材料
- MATX44
- Cowper-Symonds弾塑性材料
- MATX60
- 区分非線形弾塑性材料
- MATX62
- 超粘弾性材料
- MATX65
- 表形式ひずみ速度依存弾塑性材料
- MATX68
- ハニカム材料
- MATX70
- 表形式粘弾性フォーム材料
- MATX82
- Ogden材料
ユーザー定義の構造材料
MATUSRバルクデータエントリとLOADLIB入出力オプションエントリを組み合わせると、ユーザー定義の外部関数を介して構造材料を定義することが可能です。
外部関数は、FortranまたはCで書くことができます。プログラミング言語にかかわらず、結果のライブラリおよびファイルはOptiStructによってアクセス可能でなければならず、一貫した関数のプロトタイピングが遵守され、適切なコンパイルオプションおよびリンクオプションが使用されていることが前提です。
外部関数の書き出し
OptiStructインストレーションには、正しいサブルーチン定義、引数およびコンパイル指示文を含んだFortran(umat.F)用のサブルーチンのサンプルファイルが含まれています。このファイルは、ユーザー自身のサブルーチンを書くスターティングポイントとして使用できます。ファイルは、$ALTAIR_HOME/hwsolvers/demos/optistructにあります。
OptiStructでユーザー材料を定義するには、2つのFortranサブルーチンが必要です。1つは非線形ソリューション用の非線形サブルーチン、もう1つは線形ソリューション用のサブルーチンです。両方のサブルーチンは必須であり、次のように、同じ引数の順序に従っていなければなりません:
subroutine usermaterial(idu, stress, strain, dstrain, stater,
state, nstate, drot, props, nprops,
temp, dtemp, ieuid, kinc, dt, t_step,
t_total, cdev, cbulk)
integer idu, nstate, nprops, kinc, ieuid
double precision stress(6),stater(*),state(*),
$ cdev(6,6),cbulk, drot(3,3), temp, dtemp, dt,
$ t_step, t_total,
$ strain(6), dstrain(6), props(nprops)
subroutine smatusr(idu, nprop, prop, smat)
integer idu, nprop
double precision prop(nprop), smat(*)
サブルーチンの引数
引数 | タイプ | 入力 / 出力 | 詳細 |
---|---|---|---|
idu |
整数 | 入力 | MATUSRバルクデータエントリのUSUBIDパラメータを介して定義されます。この引数は、同じユーザーサブルーチン内の異なるタイプの材料間で選択、定義するために使用されます。 オプションでの使用 |
stress |
ダブル(テーブル) | 入力 / 出力 | 応力テンソル。初期応力は入力と見なされ、非線形ソリューション中に計算された応力、テンソルは、ユーザーサブルーチンからOptiStructに出力されます。 |
strain |
ダブル(テーブル) | 入力 | ひずみテンソル。初期ひずみは入力と見なされます。 |
dstrain |
ダブル(テーブル) | 入力 | インクリメントひずみテーブルインクリメントひずみは、OptiStructからユーザーサブルーチンに入力されます。 |
stater |
ダブル(テーブル) | 入力 / 出力 | 以前のインクリメントにおける状態変数のテーブル。状態変数は、H3Dファイルでの出力として要求可能な変数です。サブルーチンでのソリューションプロセス内で計算される変数(たとえば、塑性ひずみ、等価塑性ひずみなど)はいずれも、状態変数として定義することによって出力が可能です。 |
state |
ダブル(テーブル) | 入力 / 出力 | 現在のインクリメントにおける状態変数のテーブル。詳細については、stater をご参照ください。 |
nstate |
整数 | 入力 / 出力 | サブルーチン内にユーザーが必要とする状態変数の数。詳細については、stater をご参照ください。 |
props |
ダブル(テーブル) | 入力 | このテーブルには、MATUSRエントリのPROPERTY継続行からのユーザー定義材料プロパティ情報がすべて含まれます。 |
nprops |
整数 | 入力 | MATUSRエントリのPROPERTY継続行で定義された材料プロパティの総数。 |
temp |
ダブル | 入力 | 1つ前の収束したインクリメントにおける温度。 |
dtemp |
ダブル | 入力 | 温度のインクリメント。 |
ieuid |
整数 | 入力 | 要素ID。このサブルーチンは、各要素の積分点毎にコールされます。 |
kinc |
整数 | 入力 | 現在のインクリメント。 |
dt |
ダブル | 入力 | 現在の時間インクリメント。 |
t_step |
ダブル | 入力 | サブケース時間。 |
t_total |
ダブル | 入力 | 総時間(CNTNLSUBが使用されている場合)。 |
cdev |
ダブル(テーブル) | 出力 | 偏差材料モジュールマトリックス。これらはソリューション中に計算され、OptiStructに出力されて剛性マトリックスを形成します。 |
cbulk |
ダブル(テーブル) | 出力 | バルク材料モジュールマトリックス。これらはソリューション中に計算され、OptiStructに出力されて剛性マトリックスを形成します。 |
smat |
ダブル(テーブル) | 出力 | 材料モジュールマトリックス。これらはソリューション中に計算され、OptiStructに出力されて剛性マトリックスを形成します。 |
ユーザー定義材料の外部ライブラリの構築
WindowsまたはLinux上での共有ライブラリの構築を可能にします。
詳細については、外部ライブラリの構築をご参照ください。
ユーザー定義の熱材料
MATUSHTバルクデータエントリとLOADLIB入出力オプションエントリを組み合わせると、ユーザー定義の外部関数を介して熱材料を定義することが可能です。
外部関数は、FortranまたはCで書くことができます。プログラミング言語にかかわらず、結果のライブラリおよびファイルはOptiStructによってアクセス可能でなければならず、一貫した関数のプロトタイピングが遵守され、適切なコンパイルオプションおよびリンクオプションが使用されていることが前提です。
外部関数の書き出し
OptiStructインストレーションには、正しいサブルーチン定義、引数およびコンパイル指示文を含んだFortran(userlmat.F)用のサブルーチンのサンプルファイルが含まれています。このファイルは、ユーザー自身のサブルーチンを書くスターティングポイントとして使用できます。ファイルは、$ALTAIR_HOME/hwsolvers/demos/optistructにあります。
subroutine usrmatht(idu, matID, ieuid, Stater, State,
nState, drot, rmat, nprops, etempmat,
dtemp, kinc, dt, t_step, hgen, smat)
integer*8 i, idu, matID, ieuid, nState, nprops, kinc
double precision Stater(nState), State(nState)
double precision drot(3,3), rmat(nprops)
double precision etempmat, dtemp, dt, t_step
double precision hgen, smat(*)
サブルーチンの引数
引数 | タイプ | 入力 / 出力 | 詳細 |
---|---|---|---|
idu |
整数 | 入力 | MATUSHTバルクデータエントリのUSUBIDパラメータを介して定義されます。この引数は、同じユーザーサブルーチン内の異なるタイプの材料間で選択、定義するために使用されます。 オプションでの使用 |
matID |
整数 | 入力 | 材料ID |
ieuid |
整数 | 入力 | 要素ID。このサブルーチンは、各要素の積分点毎にコールされます。 |
drot(3,3) |
ダブル(テーブル) | 入力 | 変換マトリックス |
props |
ダブル(テーブル) | 入力 | このテーブルには、MATUSHTエントリのPROPERTY継続行からのユーザー定義熱材料プロパティ情報がすべて含まれます。 |
nprops |
整数 | 入力 | MATUSHTエントリのPROPERTY継続行で定義された熱材料プロパティの総数。 |
temp |
ダブル | 入力 | 現在の増分終了時の温度。 |
dtemp |
ダブル | 入力 | 現在の増分の温度。 |
kinc |
整数 | 入力 | 現在の非線形増分。 |
dt |
ダブル | 入力 | 現在の時間ステップ増分。 |
t_step |
ダブル | 入力 | 現在の時間ステップの現在のサブケース時間。 |
Stater |
ダブル(テーブル) | 入力 / 出力 | 最後に収束した時間ステップでの状態変数の表。これらは、同じ時間ステップの繰り返しの間で一定です。状態変数は、H3Dファイルでの出力として要求可能な変数です。サブルーチンでのソリューションプロセス内で計算される変数はいずれも、状態変数として定義することによって出力が可能です。 |
State |
ダブル(テーブル) | 入力 / 出力 | 現在の時間ステップでの状態変数の表。これらは更新され、同じ時間ステップの反復の間に渡されます。詳細については、Stater をご参照ください。 |
nState |
整数 | 入力 / 出力 | サブルーチン内にユーザーが必要とする状態変数の数。詳細については、Stater をご参照ください。 |
hgen |
ダブル(テーブル) | 出力 | 積分点で発生する熱。 |
smat |
ダブル(テーブル) | 出力 | 材料マトリックス。これらはソリューション中に計算され、OptiStructに出力されます。smatマトリックスのフォーマットは以下の通りです。
|
ユーザー定義材料の外部ライブラリの構築
WindowsまたはLinuxで共有ライブラリを構築できます。
詳細については、外部ライブラリの構築をご参照ください。
鋳鉄の塑性特性
鋳鉄材料モデルは、引張と圧縮の挙動が異なるねずみ鋳鉄の降伏挙動を表すために使用されます。
- は、偏差応力のテンソルフォーム。
![](../../../images/solvers/cast_iron_plasticity_yield_function.png)
図 1.
![](../../../images/solvers/cast_iron_plasticity_hydrostatic_axis.png)
図 2.
![](../../../images/solvers/cast_iron_plasticity_plane.png)
図 3.
![](../../../images/solvers/cast_iron_plasticity_uniaxial.png)
図 4.
硬化則
この材料モデルでは、等方硬化のみが考慮されます。等価塑性ひずみが大きくなるにつれて、降伏強度が大きくなります。引張と圧縮では流動則が異なるため、等価塑性ひずみは引張と圧縮で異なることに注意が必要です。したがって、引張降伏強度と圧縮降伏強度は、引張の表と圧縮の表から別々に調べます。
ここで、は塑性ひずみ速度の偏差部分のテンソルです。
ここで、です。
上の式で、下付き指数は物理量が時刻にあることを意味し、は、物理量が最後に収束した時間を意味します。
入力
鋳鉄塑性材料データは、既存のMAT1バルクデータエントリと同じ識別番号を有するMCIRONバルクデータエントリを使用して指定することができます。引張および圧縮応力-ひずみ曲線は、MCIRONエントリのTABLE_TおよびTABLE_Cフィールドを使用して定義することができます。
MCIRONを介した鋳鉄材は、微小変位および大変位非線形静解析に対応しています。CHEXA、CTETRA、CPENTA、CPYRA要素(1次と2次の両方)についてサポートされています。
通常の結果出力に加えて、STRAIN(PLASTIC) I/Oオプションが指定されている場合は、この材料モデルの追加結果が出力されます。これらの結果には、6つの塑性ひずみ成分、等価圧縮塑性ひずみ、等価引張塑性ひずみ、節点結果、積分結果などがあります。
マルチスケールモデリング
OptiStruct(OS)およびMultiscale Designer(MDS)を組み合わせて、線形および非線形の両方の材料を使用して構造コンポーネントに対するマルチスケール解析を実行できます。
複合材、土、ソリッドフォーム、多結晶体などの不均質材料は、さまざまな機械的特性を持つ1つ以上の区別可能な成分で構成されます。3 たとえば、繊維強化複合材には、補強材と呼ばれるより剛性が高く強固な相と、母材と呼ばれる剛性が低く弱い相があることが知られています。支配方程式は、ミクロスケールまたはマクロスケールのいずれかのスケールで適切に解明されています。一般的な構成方程式はマクロスケールで変形を受けるソリッドに対して適用可能である一方、連続体モデルはミクロスケールである必要があります。この2つのスケールのギャップを埋めるためには、同時に異なるスケールでモデルを考える必要があります。これは、マルチスケール技術により達成されます。
従来の積層材理論は不均質積層材の全体の特性を予測でき、均質化理論は個々の相の特性および相の形状についての情報を提供します。個々の相についての知識は、材料の損傷や破壊を特性化するのに重要です。したがって、マルチスケール技術は異なるレベルの物理法則での材料の挙動に焦点を当ててモデル化するという他に例のない機会をもたらします。
![](../../../images/solvers/mds_os_integration.png)
図 5. Multiscale Designer - OptiStruct統合
- 単位セル形状とメッシュ定義
- 線形材料特性
- 次数低減均質化
- 非線形材料特性
単一スケールモデル
単一スケール材料モデルを構築するために必要な基本手順。
鋳鉄の塑性特性は、引張および圧縮荷重を受けたときの降伏挙動および硬化挙動が異なるため、興味深い研究対象です。最初の2つのセクションでは、Multiscale Designer(MDS)から要求される入力データについて説明します。次の2つのセクションでは、材料をOptiStruct(OS)に統合し、構造解析を実行する手順について説明します。
線形材料の特性計算
- 等方性
- トランス等方性
- 直交異方性
- 異方性材料
ここでは、線形領域の特性に鋳鉄の特性を持つ均一な材料が使用されます。材料の入力弾性特性 / パラメータと値は次のとおりです:
- 引張ヤング率(GPa)、
- 95.5
- 圧縮ヤング率(GPa)、
- 95.5
- ポアソン比、
- 0.26
非線形材料の特性計算
Multiscale Designerでは、速度に依存しない塑性、粘弾性、損傷則など、さまざまな構成則を使用できます。ここでは、等方性損傷 - 3区分線形展開を使用して、材料の非線形挙動をシミュレートします。Multiscale Designer内の損傷モデル定式化は、連続体損傷力学フレームワークに従います。弾性剛性マトリクス、主ひずみの関数である損傷状態変数を使用することにより縮退されます。圧縮荷重の場合のみ、主ひずみに圧縮係数がかけられ、圧縮での損傷が緩和されます。圧縮係数は、材料の入力特性に基づいて、内部的に計算されます。
- 損傷開始時の応力 – 引張(MPa)、
- 126.0
- 最大応力 – 引張(MPa)、
- 210.3
- 最大応力時のひずみ – 引張、
- 0.008
- 破壊ひずみ – 引張、
- 0.008
- 損傷開始時の応力 – 圧縮(MPa)、
- 303.0
- 最大応力 – 圧縮(MPa)、
- 443.3
- 最大応力時のひずみ – 圧縮、
- 0.010
- 破壊ひずみ – 圧縮、
- 0.010
非線形材料の定式化は、ノッチなし引張 / 圧縮組み込みマクロシミュレーションモデルにより行われます。ASTM D3039、D3518、およびD6641に準拠する2つのシミュレーションが定義されます。1つは引張挙動のシミュレート用、もう1つは圧縮挙動用です。プロセスで、単位メッシュ(ソリッドキューブ)は一端で固定され、もう一端のx方向変位を受けます。応力は、反力を単位面積で割ることで計算されます。
- 荷重速度 – 引張(/ 秒)
- 0.008
- 最大ひずみ – 引張
- 0.008
- 荷重速度 – 圧縮(/ 秒)
- -0.01
- 最大ひずみ – 圧縮
- -0.01
荷重速度は試験のひずみ速度です。すべての速度に依存しない材料則(これには等方性損傷則 - 3区分線形展開が含まれます)では、荷重速度を最大ひずみと同じに設定するのが一般的です。機械的荷重の増分の最小数は、20と定義されます。これは、初期時間ステップが、総ステップ時間を最小機械的増分で割ったものとして設定されることを意味します。
出力データファイルは、材料モデルディレクトリに生成されます。ファイルパスは、Multiscale Designer設定で変更できます。対応するファイル名と説明は、Multiscale Designer User Manualの‘Unit Cell Data Files’をご参照ください。
構造解析
![](../../../images/solvers/mds_unit_chexa_element.png)
図 6. スプリングに結合された単位CHEXAキューブ要素モデル
Multiscale DesignerファイルとOptiStructとの統合
単一スケール結果
Multiscale Designer-OptiStruct統合用にサンプルカードが生成され、OptiStructでユーザー定義材料による引張および圧縮の試験の結果が得られます。
均質化および損傷則の応力-ひずみ曲線より、弾性特性が示されます。
線形材料の特性計算
![](../../../images/solvers/mds_built_in_macro_simulation.png)
図 7. Multiscale Designerの組み込みマクロシミュレーション(コンタープロット). (a)と(d)は、それぞれ引張と圧縮のx方向応力。(b)と(e)は、それぞれ引張と圧縮のx方向ひずみ。(c)と(f)は、それぞれ引張と圧縮のy方向ひずみ。
- 引張ヤング率(GPa)、
- 95.5
- 圧縮ヤング率(GPa)、
- 95.5
- ポアソン比、
- 0.26
非線形材料の特性計算
![](../../../images/solvers/mds_stress_strain_curve_cast_iron.png)
図 8. Multiscale Designerと実験による鋳鉄の応力-ひずみ曲線
Multiscale Designer-OptiStruct統合
![](../../../images/solvers/mds_os_plugin_example.png)
図 9. Multiscale DesignerからのOptiStructプラグインファイル
構造解析
![](../../../images/solvers/mds_structural_analysis_os_contour_plot.png)
図 10. OptiStructでの構造解析(コンタープロット). (a)と(d)は、それぞれ引張と圧縮のx方向応力。(b)と(e)は、それぞれ引張と圧縮のx方向ひずみ。(c)と(f)は、それぞれ引張と圧縮のy方向ひずみ。
![](../../../images/solvers/mds_stress_strain_curve_cast_iron2.png)
図 11. 鋳鉄の応力-ひずみ曲線
マルチスケールモデル
マルチスケール材料モデルを構築するために必要な基本手順。
一方向繊維強化ポリマー複合材は、繊維の軸方向および横方向での引張荷重を受けます。材料の応答が出力され、実験データを使用して検証されます。 最初の2つのセクションでは、Multiscale Designer(MDS)から要求される入力データについて説明します。次の2つのセクションでは、材料をOptiStruct(OS)に統合する手順について説明します。
単位セルモデルと線形材料特性
![](../../../images/solvers/mds_fiberous_unit_cells.png)
図 12. 繊維単位セルモデル. (a)正方形パッキング配列、(b)インターフェースのある正方形パッキング配列、(c)六角形パッキング配列、(d)インターフェースのある六角形パッキング配列、(e)ノンクリンプ楕円織物、(f)不連続繊維パッキング配列
母材は均一な弾性特性でモデル化され、繊維は横方向の等方性を持つとみなされます。複合材の均質化剛性母材が得られるよう、単位セルには周期的境界条件が適用されます。
- 母材のヤング率(GPa)、
- 3.8
- 母材のポアソン比、
- 0.32
- 繊維の縦方向ヤング率(GPa)、
- 252.25
- 繊維の横方向ヤング率(GPa)、
- 13.45
- 縦方向ポアソン比、
- 0.02
- 横方向ポアソン比、
- 0.3
非線形材料の特性計算
母材は等方性損傷に従うものとみなされ、双一次展開モデルおよび繊維は直交異方性損傷に従うものとみなされます。双一次展開は、材料の非線形挙動のシミュレーションで使用されます。
- 損傷開始時の応力(MPa)、
- 126.0
- 最大応力時のひずみ、
- 0.1
- 損傷開始時の応力 – 縦方向(GPa)、
- 4.2
- 最大応力時のひずみ – 縦方向、
- 0.017
- 損傷開始時の応力 – 横方向(MPa)、
- 75.0
- 最大応力時のひずみ – 横方向、
- 0.05
繊維の軸方向および横方向での非線形材料特性では、単位板厚の2つの積層材レイアップがそれぞれ0°および90°の向きに作成されます。各積層材に対しては、さまざまな荷重速度でノッチなし引張 / 圧縮マクロシミュレーションが行われます。
- 荷重速度 – 繊維の軸方向の試験(/ 秒)
- 0.05
- 最大ひずみ – 繊維の軸方向の試験
- 0.05
- 荷重速度 – 繊維の横方向の試験(/ 秒)
- 0.017
- 最大ひずみ – 繊維の横方向の試験
- 0.017
出力データファイルが材料モデルディレクトリ内に生成され、応力-ひずみ曲線データが<material_model_directory\model_name\mechanical\model_name_NLmatl.xlsx>のExcelスプレッドシートファイルにエクスポートされます。
Multiscale DesignerファイルとMultiscale Designer-OptiStructとの統合
マルチスケールの結果
OptiStructの試験結果により、Multiscale Designer-OptiStruct統合用のサンプルカードが生成されます。
均質化および損傷則の応力-ひずみ曲線より、弾性特性が示されます。
単位セルモデルと線形材料特性
![](../../../images/solvers/mds_unit_cell_model_square_packing_array.png)
図 13. 正方形パッキング配列の単位セルモデル. 繊維体積率 = 65%
- 縦方向ヤング率(GPa)、
- 165.4
- 横方向ヤング率(GPa)、
- 8.8
- 縦方向ポアソン比、
- 0.11
- 横方向ポアソン比、
- 0.34