ドラム路面

ドラム路面を使用すると、ドラム上で回転するタイヤをシミュレートできます。MBSモデルでドラムの回転ボディを作成して配置する必要はありません。ドラムの一般的な用途は、タイヤの無荷重半径よりもはるかに小さい高さの起伏によるたわみに対して、タイヤがどのように反応するかをテストすることです。一般的に、ドラムを基準にしたタイヤのステア角、傾斜角、垂直荷重を制御するためのメカニズムが存在します。ホイールとタイヤがドラム上で自由に回転できるほか、ホイールの回転速度を制御することもできます。

ドラム路面をモデル化するための一般的な入力は、ドラムの寸法(直径と長さ)、ホイールの中心を基準にしたドラムの位置と向き、クリートの数、ドラム上の起伏の位置と向き、起伏の形状、そして最後にドラムの回転速度です。ただし、ドラムの直径は、ドラムの表面プロファイルから推算できます。

ドラムの表面プロファイルは、表で指定できるほか、.csvファイルから読み込むこともできます。どちらの場合も、表または.csvファイルの1列目にはドラムの円周上での距離、2列目にはドラムの高さを記述します。この円周上の距離の値は、初期値をゼロ、最後の値をドラムの円周長さとする必要があります。したがって、ドラムの直径は最後の距離値を円周率で除算した値です。ドラムの高さは、円周上の距離を基準として線形補間されます。

ドラム路面を使用するときは、ドラム上の車両やホイール / タイヤがドラムから脱落しないように、ドラムを基準とした車両やホイール / タイヤの運動をゼロまたは十分に小さい値にする必要があります。ドラムから離れようとする車両の運動を警告するためのチェックは実施されません。ただし、最初に車両がドラムのx軸方向の範囲外にあると、車両はドラムの底面位置に落下します。シミュレーション中のドラムの幅は無限大です(ドラムのグラフィックスが有限の場合でも同様です)。

車両モデルの要件

ステアリングが発生しないように、ステアリングホイールジョイントはロックしておく必要があります。

車両が前後方向に動くことがないようにします。ドラムから離れようとする車両の運動を警告するためのチェックは実施されません。ただし、最初に車両がドラムのx軸方向の範囲外にあると、車両はドラムの底面位置に落下します。ソルバー側では、ドラムの幅は無限大と見なされます。

ヨー方向、ピッチ方向、ロール方向、垂直並進方向に車両が運動できるようにするジョイントを設ける必要があります。

プロパティファイル

ドラム路面プロパティファイルのフォーマットは、他のTeimOrbitフォーマット2D路面プロパティファイルと同様です。これらのフォーマットは、HEADER、UNITS、MODEL、PARAMETERS、GRAPHICSの各ブロックで構成されます。UNITSブロックについては、こちらに説明があります。
ドラム路面の選択
MODELブロックでは、このファイルで指定する路面の種類を規定するほか、ドラム路面の場合は、ドラムプロファイルとドラム速度の指定方法も選択します。ドラム路面を指定するには、METHODとROAD_TYPEを次のように設定します。
パラメータ タイプ 有効値 説明
METHOD 文字列 '2D' 2次元路面のファミリーを選択します。
TYPE 文字列 'DRUM_PROFILE' ドラム路面を選択します。
DRUM_SPEC 文字列 'TABLE'またはファイル名 [PARAMETER]ブロックの表でドラムの表面プロファイルを指定するには、DRUM_SPEC = ‘TABLE’を設定します。

.csvファイルからドラムの表面プロファイルを読み込むには、DRUM_SPECでそのファイル名を指定します。以下に例を示します。

DRUM_SPEC = '..\roadProperties\drumProfile_2.csv'

下記のドラムプロファイルの指定をご参照ください。
DRUM_VELOCITY 文字列 'TABLE'またはファイル名 [PARAMETER]ブロックの表でドラムの表面速度を指定するには、DRUM_VELOCITY = ‘TABLE’と設定します。

.csvファイルからドラムの表面プロファイルを読み込むには、DRUM_VELOCITYでそのファイル名を指定します。以下に例を示します。

DRUM_VELOCITY = '..\roadProperties\drumVel_2.csv'

下記のドラム表面速度の指定をご参照ください。
MODELブロックの例
$------------------------------MODEL
[MODEL]
 METHOD             = '2D'
 ROAD_TYPE          = 'DRUM_PROFILE'
 DRUM_SPEC          = ‘TABLE’          
 DRUM_VELOCITY      = ‘TABLE’          
ドラムプロファイルの指定
ドラムプロファイルは、ドラム円周上での移動距離に対する、公称ドラム半径位置からの高さ増分(h)として指定します。円周上の移動距離の初期値を0.0として、最後の移動距離値によってドラムの円周長が決まります。ドラムの高さは、正の値でも負の値でもかまいません。負の値は、ドラム内側方向への起伏を示します。

ドラムプロファイルは、プロパティファイルのPARAMETERSブロックに記述した表で指定するか、プロパティファイルから参照するコンマ区切り値(.csv)ファイルで指定します。

テーブル
PARAMETERSブロックの表でドラムプロファイルを指定する場合は、次の例のように[MODEL]ブロックでDRUM_SPEC = ‘TABLE’と設定します。
[MODEL]
  DRUM_SPEC = ‘TABLE’
[PARAMETERS]
(DRUM_PROFILE)
{distance height}
  0000.0, 0
  1000.0, 0
  1050.0, 50
  1100.0, 0
  3000.0, 0
  3050.0, -50
  3010.0, 0
  4000.0, 0
  5000.0, 0
ファイル
コンマ区切り値ファイルでドラムプロファイルを指定する場合は、次の例のようにDRUM_SPECでそのファイル名を指定します。
[MODEL]
  DRUM_SPEC = '..\RoadFiles\drumProfile.csv'
このファイルの指定には、絶対パスを使用できるほか、路面プロパティファイルの場所を基準にした相対パスを使用することもできます。.csvファイルの1行目には列見出しとして‘distance’と‘height’を記述し、2行目以降の各行でドラムプロファイルの値を記述する必要があります。最初の移動距離値はゼロ(0.0)とする必要があり、最後の距離値はドラムの円周長に一致します。以下に例を示します。
distance, height
0.0, 0.0
1.0, 0.0
2.0, 0.1
3.0, 0.1
4.0, 0.2
ドラム表面速度の指定
ドラム表面速度(ドラムの回転数ではありません)は、時間に対する速度の関係を示す表として指定します。表またはファイルに記述する時間値は、単調に増加する値とする必要があります。これにより、時間で線形補間した表面速度が得られます。表にある最後の時間値を過ぎた時間に対しては、最後の速度値が使用されます。表にある最初の時間値よりも早い時間に対しては、速度ゼロが使用されます。

ドラム速度は、プロパティファイルのPARAMETERSブロックに記述した表で指定できるほか、プロパティファイルから参照するコンマ区切り値(.csv)ファイルで指定することもできます。

テーブル
表でドラムプロファイル速度を指定するには、次のように記述します。
[MODEL]
  DRUM_VELOCITY = ‘TABLE’
[PARAMETERS]
(TV_TABLE)
{ TIME, VEL }
0.0  1.0
0.2  1.0
ファイル
.csv ファイルのMODELブロックでドラム表面速度を指定するには、次のようにDRUM_VELOCITYでそのファイル名を指定します。
[MODEL]
  DRUM_VELOCITY = '..\RoadFiles\velocityInput.csv'
このファイルの指定には、絶対パスを使用できるほか、路面プロパティファイルの場所を基準にした相対パスを使用することもできます。.csvファイルの1行目には列見出しとして‘time’と‘vel’を記述し、2行目以降の各行でドラム速度の値を記述する必要があります。以下に例を示します。
time, vel
0.0, 10.0
1.0, 10.0
2.0, 10.1
3.0, 11.0
4.0, 12.0
ドラムグラフィックスパラメータの指定
ドラムのグラフィックスには、ドラム幅の入力と、以降の節点でメッシュを作成するための節点間隔の入力が必要です。幅を入力する目的は、適切なドラムサイズを指定することにすぎません。ソルバーのコードでは、ドラムの幅は無限大であると見なされます。
[GRAPHICS]
  WIDTH     = 500  $ width of drum for graphics 
  ROAD_INCR = 50   $ distance between two nodes along the surface