サブケース依存モデリング

サブケース依存モデリングでは、1回のソルバーランで複数の構造を解析できます。

構造は、完全に独立であることが可能で、同じモデルの異なる領域、もしくは共通するパートを共有する異なるアセンブリを表すことができます。サブケース依存モデリングは、サブモデリングとも呼ばれます。サブモデリング機能のない従来のモデリング手法では、境界条件に関わらずソルバーを実行するたびにモデル全体が解析され、構造の一部のみを変更する場合でも複数のモデルを作成する必要がありました。サブモデリングでは、モデルの特定の部分を個別に解析でき、構造の残りの部分に影響を与えることはありません。

利用目的

サブケース依存モデリングを採用すると、解析と最適化の両方においてさまざまな利点があります。サブモデリングの主な利点は、共通部分を持つ独立した構造を解析できるということです。たとえば、ピックアップトラックの場合を考えると、荷台およびシャーシを変更することなく、さまざまなキャビン形状を解析できます。これは、異なるキャビンタイプに属する要素をそれぞれ異なるセットに割り当てることによって実現されます。変更のない部分であるシャーシおよび荷台は別の要素セットとして定義できます。これらの要素セットを組み合わせて、ソリューションごとに構造の共通パートを繰り返すことなく、さまざまな構造サブモデルをモデル化できるようになりました。


図 1. サブケース依存モデリングの適用例

図 1は、各キャビン本体を特定の要素セットとして定義し、複数の共通パートが1つの要素セットを構成する例を示しています。これらは、異なる境界条件を持つ3つの異なるサブケースの下で別々に組み合わせて、1回の解析実行で解くことができます。

データ作成方法

サブケース依存のモデリング機能は、要素セットおよびサブケースセレクターエントリSUBMODELの使用によって実現されます。SUBMODELエントリは、このソリューションで使用される要素セットを選択するために、特定のサブケース内のサブケース情報セクションで使用できます。

SUBMODELサブケース情報エントリ

全体モデルは、いくつかの共通セクションまたは共有セクションから構成されます。変更のない部分を共通セクションや共有セクションとしますが、他のセクションは個別の用途に応じて変更されます。このような場合、SUBMODELエントリを使用して、モデル変更ソリューションのために要素セットを選択できます。このエントリで必要な唯一の入力データは要素セットのID番号です。

フォーマット
SUBMODEL, SID, SID_r

フィールド“SID”および“SID_r”では、要素および剛体要素のセットのID番号を指定し、このサブケース内で解析されるサブモデルをそれぞれ定義します。“SID_r”フィールドはオプションです。詳細についてはOptiStructリファレンスガイドをご参照ください。

サブモデリング - OptiStruct入力デックの例

$ サブケース情報セクション

SUBCASE 1

$ サブモデル依存のSPCおよびLOADはここで定義できます。

SUBMODEL, 11

SUBCASE 2

$ サブモデル依存のSPCおよびLOADはここで定義できます。

SUBMODEL, 12

$ バルクデータセクション

SET, 1, ELEM $は、共有/共通パートを定義します(たとえば、のシャーシ、荷台およびホイール)。 図 1

SET, 2, ELEM $は、独立したパートを定義します(たとえば、のキャビン本体1)。 図 1

SET, 3, ELEM $は、独立したパートを定義します(たとたとえば、のキャビン本体1)。 図 2

SET, 11, ELEM, OR, 1, 2 $は、キャビン本体1および共通パートがある、トラックのフルモデルを定義します。

SET, 12, ELEM, OR, 1, 3 $は、キャビン本体2および共通パートがある、トラックのフルモデルを定義します。

コメント

  1. 単点拘束(SPC)、荷重(LOAD)、多点拘束(MPC)、およびその他の類似するサブケースセレクターでは、対応するサブモデルまたはサブ構造のみに適用できる属性を定義する必要があります。これらの属性は、SUBMODELで定義されたサブケース依存モデルのみを参照していなくてはいけません。SUBMODELエントリでは、定義されたサブケースに指定された属性(荷重、制約条件など)の一部(もしくは全部)がモデルに合わせて自動的に削除されることはありません。
  2. この機能は、現在は線形静解析にのみ利用可能です。線形静解析からの応答を含んだ全ての最適化タイプがサポートされます(SPCFORCE/残差力応答を除く)。
  3. GRIDの使用に制限はありません。2つのサブモデルが同じ場所にGRIDを有する場合、共有GRIDまたは2つ別々のGRIDエントリを使うことができます。
  4. サブケース依存のコンフィギュレーションについては、すべての剛体およびCONNECTエントリの定義は、INSTANCEベースのリロケーションで処理されます。

グローバル-ローカルモデリング

グローバル-ローカル解析は、2つ以上のサブモデルを使用して全体モデルを解析するテクニックです。1つのサブモデルは構造全体を表しますが、精度は低く(たとえば、メッシュサイズが大きくなる)、一方のサブモデルは、構造の一部分しか表しません(たとえば、より小さなメッシュサイズを使用)。

全体(グローバル)構造が最初に解析され、選択した領域からの変位が補間されて局所(ローカル)構造に適用されます。グローバル-ローカル解析は、上記で説明したサブケース依存モデリングテクニックの使用によって実装されます。

グローバル-ローカルモデリングは近似にすぎず、その使用は、ローカルモデルが正確なほど全体構造の変位に及ぼす影響は少ないという前提に基づいています。このプロセスは、ローカルサブモデルでの剛性のわずかな変化がその外部のソリューションに大きな影響を与える可能性がある場合には、使用しないでください。

利用目的

グローバル-ローカル解析は、局所的な応力集中があるモデルにおいて結果の改善に役立つ場合があります。構造内のパートに、比較的高い精度を必要とする細かな部分がある場合は、それらのパートを細かいメッシュでローカルサブモデルとしてモデル化でき、構造全体は、粗いメッシュを使用してモデル化できます。これにより、構造内のパートのみが細かいメッシュで解析されることになり、解析時間を短縮できます。


図 2. グローバル-ローカル解析の適用例

図 2は、ピラー-ルーフジョイントを含むセクションが細かいメッシュで別個のサブモデルとしてモデル化される建造物の例を示しています。メッシュが細かいほど、高い応力が集中する領域での精度が高くなります。グローバル-ローカル解析機能を使用すると、粗いグローバルモデルからの結果が補間され、切断面でローカルモデルの細かいメッシュに適用されます。これにより、ローカルモデルの結果をグローバルモデルの結果から導くことができます。

データ作成方法

グローバル-ローカルモデリングの機能は、サブケース依存モデリング機能およびサブケースセレクターエントリGLOBSUBを使用することで実現されます。このエントリは、ローカルモデル定義を含むサブケースにおいて指定されます。ローカルモデルのサブケースセクションのGLOBSUBエントリでは、特定のローカルモデルの結果を計算するのに使用されるグローバルモデル(SUBCASE ID)を指定します。このグローバル-ローカルの関係は、これら2つのサブケースにのみ適用されます。入力デック内にはこのようなペアが多く存在しているに違いなく、複数のサブケースはグローバルとして設定でき、1つのペアからのローカルモデルを、別のサブケースのグローバルモデルとして使用することが可能です。

GLOBSUB - サブケース情報エントリ

全体モデルは、高い応力が集中する領域、もしくは、より高い精度が求められる対象領域を含むいくつかのセクションから構成されます。このような場合、モデル全体はより粗いメッシュで解析でき、対象となるサブモデルが定義されている各ローカルサブケースではその全体構造がGLOBSUBエントリを使用して参照できます。局所構造内の変位の切断面にある節点のセットもここで指定する必要があります。

フォーマット

GLOBSUB, SUBID, SID

フィールドSUBIDには、全体構造が定義されている(SUBMODELを使用)サブケースのID番号を指定し、フィールドSIDには、変位の切断面を定義するための局所構造内の節点のセットを指定します。全体構造からの変位は、このセットの節点に適用されます。このセット内のすべての節点は、ローカルサブストラクチャーに属しているはずです。詳細についてはOptiStructリファレンスガイドをご参照ください。

保存とリスタート

グローバル-ローカルモデリングの機能の保存 / リスタートでは、1つまたは複数のグローバルサブケースの結果を保存することができます。また、ローカルサブケースの入力デックの修正および / または解析対象とするローカルサブケースの追加を選択し、グローバルサブケースを複数回解くことなしにモデルを再実行することも可能です。グローバルサブケースの結果は、それ以前に保存されたリスタートファイルから復元できます。現時点では、この機能は線形静解析のみに使用が可能です。
注: リスタートジョブがGETDISPを用いて実行される場合でも、グローバルサブケースは存在していなければなりません。その場合、グローバルサブケースのソリューションはスキップされ、結果はGETDISPで直接復元されます。
保存されるべきサブケースのコントロールセクションに、以下のエントリを挿入します:
ASSIGN, SAVEDISP, <Filename>
復元されるべきサブケースのコントロールセクションに、以下のエントリを挿入します:
ASSIGN, GETDISP, <Filename>

詳細については、ASSIGNバルクデータエントリの項をご参照ください。

例: OptiStruct入力デック

$ サブケース情報セクション
SUBCASE 1
$ サブモデル依存のSPCおよびLOADはここで定義できます。
SUBMODEL, 11 SUBCASE 2
$ サブモデル依存のSPCおよびLOADはここで定義できます。
SUBMODEL, 12 GLOBSUB, 1, 15

$ バルクデータセクション

SET, 11, ELEM $は、グローバル構造を定義します(たとえば、の建物全体)。 図 2

SET, 12, ELEM $は、ローカル構造を定義します(たとえば、のピラー-ルーフジョイント)。 図 2

SET, 15, GRID $は、切断面を定義します(たとえば、図 2の、変位が補間されるピラー-ルーフジョイントの接触節点)。

コメント

  1. ローカルとグローバルのサブ構造間のソリューション遷移には、切断面セットSIDに属する各節点位置における変位と回転を補間するために、グローバルモデル内の2次元および3次元要素が使用されます。グローバル構造内の切断面の近傍に他の(梁、ロッド、剛体などの)要素が存在しないことが推奨されます。これは、そのような要素がローカルモデルに影響を及ぼさないようにするためです。特に、切断面は、グローバル構造内で1次元または剛体要素にのみ結合しているような節点が存在しないように選択される必要があります。
  2. ローカルモデルの切断面近傍の要素内のソリューションは、グローバルサブ構造からの補間からのノイズを生む場合があり、これは結果から破棄されるべきです。実際に着目する領域(例えば、応力集中など)は、ローカルモデル内で少なくとも2つの要素の層によって、切断面から隔離される必要があります。
  3. 切断面は、構造の切断面上の節点でのみ構成されてなければなりません。通常、荷重または支持条件のない自由エッジ / サーフェスは、切断面の一部となり得ません。
  4. 切断面節点がローカルモデルの境界上にのみ存在している必要はありません。シェルサブモデルについては、要素の外側の層にすべての節点が含まれているのが都合がよく、これは、サブケース間の回転の伝達精度が向上するためです。
  5. グローバルサブモデルの一定の荷重および / または支持条件がローカルサブモデル内に留まっている場合、ローカルモデルの精度と一致したかたちで実際の荷重を表すことが推奨されます。例えば、グローバルシェル構造のポイント荷重は、より現実的であるローカルソリッドサブ構造上の分散荷重と置き換えられるべきです。もしくは、ローカルサブモデルに荷重 / 支持を適用しないことを選択します。そのような場合、元の荷重 / 支持領域内の節点は、グローバルサブモデルからの変位が補間され、ローカル構造に適用されるよう、切断面内に含まれるべきです。ただし、これを行うと、ローカルソリューションの精度はかなり低下します。
  6. 切断面を表す切断面は、その構造内で複数存在していてもかまいません。ただし、複数の切断面は分離している必要があります。つまり、それぞれがグローバルモデルの要素サイズより離れていなければなりません。
  7. 切断面の各節点について、OptiStructは最も近い複数の要素群を(各要素の中心位置に基づき、グローバルモデルからシェルまたはソリッド要素を)選択し、これらの要素の全ての節点からのソリューションを用いて、切断面の節点位置に補間します。結合されていないサブストラクチャ(たとえば、接触しかけている2つのシェル要素)が切断面に含まれる場合、この補間は他のサブストラクチャからの節点を含まなくなることに注意が必要です。そのような際は、PARAM,GLOBEXPT,0を使って、補間に用いる要素の数を減らします(グローバルモデル内の要素群の中心近くに位置する節点のみを使用します)。
  8. GLOBSUBエントリは、必ず、対応するローカルサブケースより前に定義されている、グローバルサブケースのサブケースIDを参照する必要があります。
  9. この機能は、現在は線形静解析にのみ利用可能です。線形静解析からの応答を含んだ全ての最適化タイプがサポートされます。
    制約事項:
    • SPCFORCE/残差力応答はサポートされていません。
    • トポロジー最適化の設計領域は、ローカルパート(複数可)の外部にある必要があります。また、ローカルサブモデルに影響するすべての設計変数は、グローバルモデルにマップされる必要があります。