粘着域のモデル化
粘着域のモデル化手法を使用して、接着および接合インターフェースおよび対応する亀裂発生や進展をモデル化できます。現在OptiStructでモデル化できる接着および接合インターフェースを使用した複数の手法が存在します。
手法に応じて、接着 / 接合インターフェースの板厚を定義できます(損傷モデルに基づいた粘着要素の場合)。亀裂が予想される場所を特定し、粘着域として定義する必要があります。
接着 / 接合インターフェースの実装方法
粘着域を使用して、接着 / 接合インターフェースをモデル化します。これらのインターフェースは一般に、接着剤または接着剤状の材料を使用してパート同士が結合される場所です。
- 引張力-開口量曲線法
- 損傷モデル法
引張力-開口量曲線法
引張力-開口量曲線は、MCOHEバルクデータエントリのMODELフィールドで直接定義できます。
引張力-開口量曲線法では、特定の接着または接合インターフェースのモデル化に、単一の粘着要素層のみを使用できます。
一般に、インターフェースにおける引張変形とせん断変形は、接着 / 接合の整合性や劣化を明らかにする上で参考となります。圧縮での剛性は、MCOHEエントリのSFCフィールドを介して制御します。
上面と底面の節点間の相対変位が計算されます。
- 、、および
- は、要素のx、y、およびz軸に沿った粘着要素の上面と底面の相対変位です。
- は混合係数です。これはBETAフィールドに入力できます。
この組み合わされた相対変位()を使用して、選択された引張力-開口量曲線(MOCHEのMODELフィールド)に基づいて組み合わされた引張力が決定されます。
損傷モデル法
損傷モデル法を使用すると、接着 / 接合インターフェースの有限板厚をモデル化できます。これにより、実験データに基づいて接着サーフェスをモデル化することが可能になります。また、損傷の開始と進展 / 拡大をモデル化できます。
MCOHED、DMGINI(損傷開始)、DMGEVO(損傷拡大)の各エントリは必須です。モデル化技法(要素ベースまたは接触ベース)に応じて、CIFHEX/CIFPEN/PCOHEエントリまたはCONTACTインターフェースが必要です。モデリングテクニックをご参照ください。
MCOHEDエントリのKZ、KX、およびKYフィールドで、3方向のペナルティ剛性を定義できます。ここで、KZは法線方向のエントリであり、KXとKYは2つの接線方向のエントリです。インターフェース内で、1つまたは複数の粘着要素層を定義できます。
要素に基づいたモデル化では、粘着要素層の板厚は、PCOHEのTHICKNESSフィールドを使用して定義できます。接触に基づいたモデル化では、粘着域の板厚は、内部的に1.0に等しいと見なされます。
一般に、インターフェースにおける引張変形とせん断変形は、接着 / 接合の整合性や劣化を明らかにする上で参考となります。圧縮での剛性は、MCOHEDエントリのSFCフィールドを介して制御します。
要素に基づいたモデル化では、MCOHEDのDMGINIDおよびDMGEVOIDフィールドを使用して、必須のDMGINIおよびDMGEVOバルクデータエントリを指定できます。接触に基づいたモデル化の使用時は、圧縮での剛性は接触プロパティによって決定されます。
上面と底面の節点間の相対変位が計算されます(引張力-開口量法と同様)。まず、3方向それぞれの相対変位と弾性係数を乗算することで、試行引張力値()が計算されます。
次に、DMGINIエントリのCRIフィールドで指定された基準を使用して、損傷開始が決定されます。
ひずみに基づいた基準
- 最大ひずみ値は、DMGINIエントリのV1、V2、V3フィールドで定義されます。
- 実際のひずみは、 相対変位を板厚で除算することによって算出されます。ここで、板厚はPCOHEのTHICKNESSフィールドで定義されます。
- 最大ひずみと実際のひずみの両方を使用し、次の式に基づいて損傷開始が決定されます:
- MAXE
-
(2) ここで、- はV1です。
- はV2です。
- はV3です。
- QUADE
-
(3) ここで、- はV1です。
- はV2です。
- はV3です。
応力に基づいた基準
- 最大応力値は、DMGINIエントリのV1、V2、V3フィールドで定義されます。
- 実際の応力は、対応する3方向それぞれの試行引張力の値です。
- 最大応力と実際の応力の両方を使用し、次の式に基づいて損傷開始が決定されます:
- MAXS
-
(5) ここで、- はV1です。
- はV2です。
- はV3です。
- QUADS
-
(7) ここで、- はV1です。
- はV2です。
- はV3です。
上記の式で、x、y、およびz方向は材料座標系での方向です(MCOHEDカードをご参照ください)。z方向は法線方向であり、xおよびy方向は2つの接線方向です。
損傷開始基準が満たされない場合、損傷は発生しません。試行引張力は実際の引張力と等しい値です。
したがって、亀裂の発生や伝搬は起こらず、対応する粘着関連の出力は結果ファイルに出力されます。
- 変位に基づいた損傷指数(DMGEVOエントリのTYPE=COHDISP)
- エネルギー散逸に基づいた損傷指数(DMGEVOエントリのTYPE=COHENRG)
どちらのタイプの損傷指数計算でも、引張力-開口量曲線の線形(SHAPE=LIN)形状または指数(SHAPE=EXP)形状をDMGEVOエントリで使用できます。
変位に基づいた損傷指数
SHAPE = LINの場合:
SHAPE=EXPの場合
- は、履歴中の最大離間距離()です。粘着域が載荷されるだけの場合は、は現在のと等しくなります。この値は、OptiStructによって計算され、各ステップで更新されます。粘着域が除荷もされる場合は、除荷領域内で、は履歴中で最大のと等しくなります(この値は、除荷開始前の値である可能性があるため)。
- は、臨界離間距離(損傷が開始されたとき、すなわち亀裂発生基準が満たされたときの離隔距離)です。
- は、最大離間距離()です。
- は、DMGEVOエントリのALPHAフィールドです。
- は、解析の各ステップにおける現在の開口量です。
- は、DMGEVOエントリのW1フィールドです。
- 、、および
- は、要素のx、y、およびz軸に沿った粘着要素の上面と底面の相対変位です。
エネルギー散逸に基づいた損傷指数
エネルギー散逸に基づいた損傷指数については、臨界総エネルギー( )が計算に使用されるキー値です。その計算と使用法は、曲線のタイプ(LIN/EXP)とモード混合法(MMXFM = ブランク、1、2)に依存します。 は、破壊が発生する際のエネルギーを表します。
W1DMGEVOエントリの、W2、W3の各フィールドによって、3つの各破壊モード(それぞれ法線、面内せん断、面外せん断)における臨界エネルギーが定義されます。
- 法線破壊モード:
- Mode 1
- 面内せん断破壊モード:
- Mode 2
- 面外せん断破壊モード:
- Mode 3
は、粘着によって吸収される弾性エネルギーです。これは、指数曲線の直線部分(損傷開始前)の下の面積です。
ここで、は損傷指数(常に1.0以下)です。
SHAPE = LINの場合:
- は、履歴中の最大離間距離()です。粘着域が載荷されるだけの場合は、は現在のと等しくなります。この値は、OptiStructによって計算され、各ステップで更新されます。粘着域が除荷もされる場合は、除荷領域内で、は履歴中で最大のと等しくなります(この値は、除荷開始前の値である可能性があるため)。
- は、臨界離間距離(損傷が開始されたとき、すなわち亀裂発生基準が満たされたときの離間距離)です。
- は、解析でゼロの引張力が生じる離間距離です。
- は、亀裂発生基準が満たされたときの有効引張力です。
- モード混合形式に依存します(DMGEVOエントリのMMXFMフィールド)。
- MMXFMフィールドが空白の場合:
(14) - MMXFMフィールドが1に設定されている場合(べき乗法則): は次の式によって得られます:
(15) ここで、、、およびは、DMGEVOエントリのW1、W2、およびW3フィールドです。の値は次の式によって得られます:(16) ここで、- は、DMGEVOエントリのALPHAフィールドです。
- 、、および
- は、DMGEVOエントリのW1、W2、およびW3フィールドです。
- 、、および
- は、要素のx、y、およびz軸に沿った粘着要素の上面と底面の相対変位です。
- MMXFMフィールドが2に設定されている場合(BK形式):の値は、次の式に基づいています:
(17) ここで、- は、DMGEVOエントリのALPHAフィールドです。
- および
- は、DMGEVOエントリのW1およびW2フィールドです。
SHAPE=EXPの場合:
- は、複合引張力です。
- は、粘着によって吸収される弾性エネルギーです。
- は、臨界離間距離(損傷が開始されたとき、すなわち亀裂発生基準が満たされたときの離間距離)です。
- は、最終離間距離です。
- は、現在の開口パターン下で粘着によって消散できる合計エネルギーです(、、およびの組み合わせ)。放出されたエネルギーはOptiStructによって自動的に計算され、モード混合形式(DMGEVOエントリのMMXFMフィールド)と、各モード(W1、W2、およびW3)で消散できるエネルギーに依存します。
- MMXFMフィールドが空白の場合:
(19) - MMXFMフィールドが1に設定されている場合(べき乗法則):は次の式によって得られます:
(20) ここで、- 、、および
- は、DMGEVOエントリのW1、W2、およびW3フィールドです。
- 、、および
- は、現在のステップまでの曲線の下のエネルギーです。これらは、曲線のタイプ(LIN/EXP)に依存します。
ただしデフォルトでは、線形曲線と同じの値が、べき乗法則の指数曲線に使用されます。(21) ここで、- は、DMGEVOエントリのALPHAフィールドです。
- 、、および
- は、DMGEVOエントリのW1、W2、およびW3フィールドです。
- 、、および
- は、要素 / 局所のx、y、およびz軸に沿った粘着要素 / 接触の上面と底面の相対変位です。
- MMXFMフィールドが2に設定されている場合(BK形式):の値は:
(22) ここで、- は、DMGEVOエントリのALPHAフィールドです。
- および
- は、DMGEVOエントリのW1およびW2フィールドです。
実際の引張力の計算
実際の引張力は、上記で選択された損傷指数計算に基づいて次のように計算されます。
- および
- は、それぞれ、i方向の初期弾性剛性および開口量です。
- は、PCOHEエントリで定義される板厚です。
この実際の引張力は、後で解析に使用されます。
粘着要素の破壊
いずれかの粘着要素内の全積分点の損傷指数が、MCOHEDカードのMXDMGフィールドで定義された値に達し、これらの積分点のいずれも圧縮状態にない場合、その粘着要素は破壊され、現在のサブケースおよび継続サブケース内の残りの解析では機能しなくなります。
モデリングテクニック
- 粘着要素の直接定義(CIFHEX/CIFPEN要素)
- 接触に基づいた手法(CONTACTエントリ)
粘着要素の定義(CIFHEX要素とCIFPEN要素)
- CIFHEX要素とCIFPEN要素が主に焦点を置くのは、上面と底面の間の相対移動です。
- 3つの方向(要素X、Y、Z)それぞれの各積分点における上面と底面の節点間の相対変位によって、粘着開口量が決定されます。
- 引張力によって引張剛性とせん断剛性が与えられ、PCOHEエントリのSFCフィールドによって粘着要素の圧縮剛性が指定されます。注: 引張力の計算は、接着 / 接合インターフェースのモデル化に使用される手法に依存します。
- 粘着要素の定式化の詳細については、インターフェース要素をご参照ください。
- 亀裂進展の経路内に粘着要素を挿入する必要があります。
- 引張力-開口量法では、単一の粘着要素層のみを使用する必要があります。
- 損傷モデル法では、複数の粘着要素層を使用できます。
- 粘着要素のモデル化には、CIFHEX要素とCIFPEN要素を使用できます。
- 粘着要素は、ベースモデルのシェル要素またはソリッド要素のみに結合できます。
- ベースモデルのシェル / ソリッド結合層と粘着要素層の間で、メッシュ密度がまったく同じであり、正確な1対1の節点対応関係が存在する場合は、それらの節点を共有(結合)することができ、接触定義は不要です。
- このような正確な1対1の節点対応関係がない場合は、CONTACT(FREEZE)結合またはTIE結合を使用して、上面層または底面層の粘着要素をベースモデルの対応するシェル / ソリッド要素に結合する必要があります。
- 粘着要素は、インターフェース内に形状的板厚を有していることがあります。引張力-開口量法では、形状的板厚とは無関係に、1.0という板厚が内部で自動的に使用されます。損傷モデル法では、PCOHEのTHICKNESSフィールドを使用して板厚の解釈を制御できます。
- 一部のケースでは、粘着要素を伴う解析が収束することが難しい場合があります。粘着要素に減衰安定化を導入することで、収束を促進できます。減衰安定化は、MCOHEおよびMCOHEDエントリのVEDで定義できます。現時点では、粘着接触で減衰安定化を使用することはできません。
接触に基づいたテクニック(CONTACTエントリ)
接触に基づいたテクニックでは、粘着域のモデル化に粘着要素(CIFHEX/CIFPEN)を使用する必要はありません。このテクニックにより、粘着要素のメッシングおよび設定が不要になるため、モデル設定を簡素化できます。
CONTACTバルクデータエントリのCOHE継続行を使用して、接触に基づいた手法を粘着域モデル化に対してアクティブ化できます。MCOHEDIDフィールドではMCOHEDの識別番号が参照され、その結果として接触インターフェースが接着 / 接合インターフェースとして識別されます。
接触に基づいたモデリングでは、損傷モデル法のみを使用できます。また、この手法の場合は、粘着域の板厚は内部で常に1.0に設定されます。
圧縮での貫通を回避するには、接触ペナルティを使用します。接触効果は無視され、粘着効果は個別にアクティブ化されます。
現在、粘着モデリングでサポートされているのは、SMALLのスライディング接触、無摩擦接触、N2S/S2S接触のみです。
サポートされるソリューションシーケンス
- 非線形静解析(SMDISPとLGDISP)
- 非線形過渡解析(SMDISPとLGDISP)
- 粘着要素では質量は考慮されません。
- 静解析、過渡解析、座屈解析、固有モード解析を含む線形解析
- 線形解析では粘着効果を使用できません。
- 線形解析では、粘着要素の初期剛性が使用されます。初期剛性は、MCOHEエントリまたはMCOHEDエントリ(MCOHEエントリで定義された引張力-離間距離曲線の初期勾配またはMCOHEDエントリで定義されたKi値)によって決定されます。
- 亀裂の進展/ 開始は起こりません。
- 線形解析では、粘着要素関連の出力はありません。
- 粘着要素は現在、陰解法解析のみでサポートされています。陽解法解析はサポートされていません。
出力
粘着域からの出力は、現在はH3Dフォーマットのみに対応しています。
- 粘着損傷開始指数
- このアイテムは、粘着要素と粘着接触のセカンダリ(旧称“スレーブ”)サーフェスに表示されます。
- 粘着損傷指数(損傷指数)
- このアイテムは、粘着要素と粘着接触のセカンダリサーフェスに表示されます。
- モード別の粘着エネルギー(モード別の消散粘着エネルギー)
- 粘着エネルギーは、3つのモード(モードI、II、III)で出力されます。
- このアイテムは粘着接触では得られません。
- モード別の単位面積当たりの粘着エネルギー(モード別の単位面積当たりの消散粘着エネルギー)
- 単位面積当たりの粘着エネルギーは、3つのモード(モードI、II、III)で出力されます。
- このアイテムは粘着接触では得られません。
- 履歴中で最大の粘着開口量(最大開口量)
- これは、履歴中で最大の相対変位です。
- このアイテムは粘着接触では得られません。
- 粘着開口量
- これにより、局所要素座標系と基準座標系での相対変位の出力が提供されます。
- 粘着ステータス(ステータス)
- 要素の載荷 / 除荷 / 破壊状態を示します。
- 0: 載荷
- 1: 除荷 / 再載荷
- 2: 破壊
- 粘着引張力(引張力)
浸食された粘着要素は、その破壊された解析時間のh3d出力には表示されません。したがって、上記のアイテムは浸食された粘着要素では得られません。
粘着域のモデル化に接触が使用される場合の粘着域出力では、粘着引張力と粘着開口量は、‘Contact Traction / Normal’、‘Contact Traction / Tangent’、‘Contact Deformation / Normal’、‘Contact Deformation/Tangent’というラベルでリストされます。これを接触圧力と整合させるため、‘Contact Traction / Normal’では粘着法線引張力は負の値として表示されます。