OS-T: 6100 Fatigue Process Manager(FPM)を用いたRPCベースの荷重履歴入力を伴うシーム溶接疲労解析

この手法は、薄いメタルシートに適用可能なホットスポット応力アプローチです。

ホットスポット応力は溶接線における節点力から計算されます。この方式は、1.0~3.0mmのシート厚に対し、ラボでのテスト結果と十分な一致を示しています。通常、この方式では、2つのS-N曲線が必要です。1つは曲げ応力による曲げS-N曲線で、もう1つは膜応力による膜S-N曲線です。

本チュートリアルの実行には、cradle_SeamWeld_fpm_tutorial.zipに含まれる下記のファイル群が必要です。モデルファイルへのアクセスをご参照ください。
  • cradle_seamweld_fatigue_startup.fem
  • 荷重時刻歴ファイル(.rspファイル)

または

本チュートリアルで使用されるモデルファイル群のコピーは、<install_directory>/tutorials/hwsolvers/optistructで入手できます。

OptiStructで母材疲労およびシーム/スポット溶接疲労解析を行うことができます。チュートリアルでは、Fatigue Process Managerを使って、クレードルのシーム溶接疲労解析をセットアップします。
  • シーム溶接のモデリングには、CQUAD4要素の定式化を使用します。
  • “Volvo法”または“Hot Spot”応力アプローチは、溶接線における節点力からホットスポット応力を計算するために使用されます。
  • 溶接線での力の平衡は、溶接形状に関係なく維持されています。


図 1. 自動車のクレードル
シーム溶接位置で生じる損傷を計算することができます。疲労シミュレーションのセットアップは、Process Managerを用いて行います。以下の内容がカバーされます:
  • Fatigue Process Managerの起動
  • モデルの読み込み
  • 疲労サブケースの生成
  • 疲労解析パラメータの定義
  • 疲労要素とSNプロパティの定義
  • 荷重時刻歴と荷重順序の定義
  • ジョブのサブミット
  • 結果サマリーの確認とポスト処理のためのHyperViewの起動

HyperMeshの起動とOptiStructユーザープロファイルの設定

本演習に使用されるモデルは、図 1に示すような自動車のフレームのモデルです。入力ファイルには、フレームが受ける3つの静的荷重ステップFrontal torsion、Rear torsionおよびVertical bendingです。

  1. HyperMeshを起動します。
    User Profilesダイアログが現れます。
  2. OptiStructを選択し、OKをクリックします。
    これで、ユーザープロファイルが読み込まれます。ユーザープロファイルには、適切なテンプレート、マクロメニュー、インポートリーダーが含まれており、OptiStructモデルの生成に関連したもののみにHyperMeshの機能を絞っています。
  3. Tools > Fatigue Process > Create Newをクリックします。
  4. New Sessionで、作業ディレクトリフォルダーに名称を入力します。
  5. createをクリックします。
    これで、現在ロードされている疲労プロセステンプレートの内容を保存するための新しいファイルが生成されます。

モデルの読み込み

  1. File > Import > Solver Deckをクリックします。
    Importタブがタブメニューに追加されます。
  2. File typeにOptiStructを選択します。
  3. Filesアイコンfiles_panelを選択します。
    Select OptiStruct Fileブラウザが開きます。
  4. 自身の作業ディレクトリに保存したcradle_seamweld_fatigue_startup.femファイルを開きます。モデルファイルへのアクセスをご参照ください。
  5. Open をクリックします。
  6. Import、続いてCloseをクリックし、Importタブを閉じます。
    疲労解析のセットアップの大筋は、以下のステップで得られます。


    図 2. 疲労のセットアップ - フィレットシーム溶接

モデルのセットアップ

疲労サブケースの生成

Fatigue Analysisツリーの中でタスクFatigue Subcaseが選択されていることを確認します。

  1. Create new fatigue subcase欄にFatigue_SeamWeldと入力します。
  2. createをクリックします。
  3. Select existing fatigue subcase欄に新たに生成された疲労サブケースFatigue_SeamWeldを選択します。
    Fatigue_SeamWeldがアクティブな疲労サブケースとして選択されました。続くプロセス(解析パラメータ、疲労評価の要素とプロパティ、載荷順序など)はこのサブケースで行われます。
  4. Applyをクリックします。
    これで現在の定義が保存され、Fatigue Analysisツリーの次のタスクAnalysis Parametersに導かれます。

疲労パラメータの定義

  1. Modelブラウザ内で右クリックし、Create > Load Collectorを選択します。
  2. Nameにfatparamと入力します。
  3. Card ImageにFATPARMを選択します。
  4. TYPEがSNにセットされていることを確認します。
  5. STRESS COMBINEをSGVON(符号付きvon Mises)に設定します。
  6. STRESS CORRECTIONをGOODMANに設定します。
  7. STRESSUをMPA(応力単位)に設定します。
  8. RAINFLOW RTYPEをLOADに設定します。
  9. GATEREL=を0.0に設定します。
  10. CERTNTY SURVCERTを0.001に設定します。
  11. SMWLDの横のボックスにチェックマークを入れ、以下のオプションを選択します:

    METHOD = VOLVO

    Mean Stress Connection = NONE

    SURVCERT = 0.0

    THCKCORR = YES

  12. Applyをクリックします。
    これで現在の定義が保存され、Fatigue Analysisツリーの次のタスクであるElements and Materialsに進みます。詳細については、HyperWorks 2021ヘルプをご参照ください。

疲労要素と材料の定義

Fatigue AnalysisツリーでタスクElements and Materialsが選択されていることを確認します。

  1. Add Materialをクリックします。
    Material Dataウィンドウが開きます。


    図 3. 材料データ定義
  2. Material nameにSteel_Base_material_340Mpa_SAE960Xを選択します。
  3. Stress unitがMPAにセットされていることを確認します。
  4. UTSに600と入力します。
  5. Seam Weld Material Propertiesの横にあるボックスにチェックマークを入れ、Seam Weld Material Propertiesをクリックします。
    Seam Weld Material Propertiesダイアログが開きます。
  6. Mean Stress Sensitivity、MSS2、Structural SN Curve、およびBending SNとMembrane SNのカーブ材料値に、下に示す値を入力します。


    図 4. シーム溶接材料の定義
  7. OKをクリックし、Seam Weld Material Propertiesダイアログを閉じます。
  8. Saveをクリックして保存し、Material Dataダイアログを閉じます。

プロパティの定義

  1. Add Propertyをクリックします。
    Property Dataウィンドウが開きます。
  2. Property typeにProperty-PSHELLを選択します。


    図 5. 疲労プロパティデータ
  3. Closeをクリックします。

FATSEAM荷重コレクターの定義

FATSEAMは、シーム溶接タイプの選択に使用します。

ここではフィレット溶接です。

  1. Modelブラウザ内で右クリックし、Create > Load Collectorを選択します。
  2. NameにFATSEAM_OVRLAP_1と入力します。
  3. Card Imageに、FATSEAMを選択します。
  4. WTYPEをOVLAPに設定します。
  5. NUM_FATSEAM_PSHELL_PIDSを7に設定します。
  6. Data: PIDの横にあるTableアイコンをクリックし、ポップアップウィンドウで、テーブル内の7つのPID行すべてに7つの異なるPSHELL IDを選択します。
  7. Closeを2回クリックし、テーブルダイアログとFATSEAMダイアログを閉じます。
  8. 上記の手順に従って、下の画像のように、さらに4つのFATSEAMカードを作成します。FATSEAMカードには以下のように名前を付けます: FATSEAM_OVERLAP_2、FATSEAM_FILLET_1、FATSEAM_OVERLAP_3、FATSEAM_OVERLAP_4
    注: FATSEAM_FILLET_1カードの定義時に、WTYPEがFILLETに設定されていることを確認します。


    図 6. FATSEAM (FATSEAM_OVERLAP_1)の定義


    図 7. FATSEAM (FATSEAM_OVERLAP_2)の定義


    図 8. FATSEAM (FATSEAM_FILLET_1)の定義


    図 9. FATSEAM (FATSEAM_OVERLAP_3)の定義


    図 10. FATSEAM (FATSEAM_OVERLAP_4)の定義

PFATSMWプロパティの定義

  1. Modelブラウザ内で右クリックし、Create > Propertyを選択します。
  2. NameにPFATSMWと入力します。
  3. Card Imageに、PFATSMWを選択します。
  4. BRATIOを0.6に設定します。
  5. TREFを1.1に設定します。
  6. TREF_Nを0.1に設定します。

FATDEFカードの更新

  1. FATDEFの横にあるUpdateをクリックします。
    FATDEF Entity Editorダイアログが開きます。
  2. FATSEAMオプションにチェックマークが付き、FATDEF_FATSEAM_NUMIDS= 欄が5に設定されていることを確認します。
  3. Data: FATSEAMIDの横にあるテーブルアイコンをクリックし、プロパティセレクターから、全てのFATSEAMIDにプロパティPFATSMWを選択します。


    図 11. FATDEFダイアログ
  4. Closeをクリックし、FATDEFダイアログを閉じます。
  5. Closeをクリックし、Property Dataダイアログを閉じます。

荷重時刻歴の定義

Fatigue AnalysisツリーでタスクLoad-Time Historyが選択されていることを確認します。

  1. ASSIGNを使用し、Read RPC & DAC filesの横にあるチェックボックスを切り替えます。
  2. ASSIGNを使用し、Read RPC & DAC filesをクリックします。
    ダイアログがポップアップします。
  3. Time series folderに、RPCファイルがあるディレクトリを選択します。
  4. 下に示す値を入力します。


    図 12. ASSIGN Cardダイアログを用いたRPCの読み出し
  5. Applyをクリックします。
    これにより、選択された時刻歴入力フォルダーの全RPCファイル内の全チャンネルの出力フォルダーに、2つのインクルードファイル(1つはASSIGNカード付き、もう1つはFATLOADとFATEVENTカード付き)が作成されます。
    注: RPCファイルとDACファイルはFPMでサポートされるようになっています。これには、HyperMesh Desktopアプリケーションをご使用ください。

荷重順序の定義

前のステップでASSIGNカードを使ってFATLOADとFATEVENTの定義を定義したので、このステップは定義される必要がありません。

Nextをクリックし、Submit Analysisタスクに進みます。

FATPARM1荷重コレクターの定義

現在、疲労プロセスマネージャテンプレートでEN法のシーム溶接オプションを定義することができないため、このステップが必要です。

  1. Modelブラウザで、Load Collectorを展開し、FATPARM1材料をクリックします。
    Entity Editorが開きます。
  2. typeをENに設定します。
  3. MAXLFATをNOまたは空白に設定します。
  4. 以下が設定されていることを確認します:
    1. COMBINEがSGVON
    2. UCORRECTがSWT
    3. PLASTIがNEUBER
    4. SURFSTSがblank
  5. 以下を確認します:
    1. SMWLDチェックボックスがON
    2. METHODがVOLVOに設定されている
    3. UCORRECTおよびTHCKCORRがOFFに設定されている

出力リクエストの定義

Solverデックをエクスポートする前に、まず出力リクエストを選択します。以下の手順に従います。

  1. ModelブラウザLoad Stepsを展開し、Fatigue_Seamweldを選択します。
    Entity Editorが開きます。
  2. OUTPUT > DAMAGEのチェックボックスを選択します。
  3. FORMATをH3Dに設定します。
  4. TYPEをEVENTに設定します。
  5. OPTIONをALLに設定します。
    h3d結果ファイルに各イベントのダメージ結果を書き出します。
  6. 同様に、疲労荷重ステップの下のOUTPUTオプションで、LIFEのチェックボックスを選択します。
  7. FORMATをH3Dにセットします。
  8. OPTIONをALLにセットします。

ジョブのサブミット

Fatigue AnalysisツリーでタスクSubmit Analysisが選択されていることを確認します。

  1. AnalysisページからOptiStructパネルに入ります。
  2. input file欄に続くsave asをクリックします。
    Save Asダイアログが開きます。
  3. File nameに名称cradle_seamweld_fatigue_export.femを入力します。
    注: 必ずASSIGNおよびFATLOADインクルードファイルが書き出されたディレクトリと同じディレクトリを選択してください。
  4. 保存をクリックします。
  5. OptiStructをクリックし、解析をサブミットします。
    FYIダイアログがポップアップします。メッセージのとおり、Solverデックがエクスポートされ、セッションがクリアされます。

FATSEQ荷重コレクターの定義

作成された疲労イベントごとに繰り返し回数(N#)でFATSEQカードを更新する必要があります。

FATSEQソルバーカードのN 欄を更新するには、以下のいずれかの方法をとります:
  • エクスポートされたSolverデックをテキストエディタで開く、もしくは
  • HyperMeshにインポートし戻す

    HyperMeshセッションでFATSEQカードを更新する際は、以下の手順に従います。

  1. 新しいセッションで、Include ファイルを“Merge”に設定し、 OptiStruct Solverデック(前のステップでエクスポートされたもの)をインポートします。
  2. Modelブラウザで、Load Collectorを展開し、FATSEQ1カードを選択します。
    Entity Editorが開きます。
  3. Data: FIDの横にあるテーブルアイコンをクリックし、以下に示すように、すべての疲労イベントに対して適切なリピート値Nを入力します。


    図 13. FATSEQカード更新のダイアログ

Solverデックのエクスポート

OptiStructバージョン2019.1以下を使用している場合は、ジョブをサブミットする前に、エクスポートされたSolverデックを編集する必要があります。各MATFATの下のSMWLD行から“NORMAL”文字列を削除します。

  1. 最終のOptiStruct Solverデックをエクスポートします。
    このエクスポートされたファイルは、ジョブのサブミットの準備が整っています。
  2. HPCクラスタ上でジョブを実行する予定の場合は、ジョブのサブミットのためにすべてのRSPファイルと共にSolverデックをアップロードします。

ポスト処理

ジョブが正常に完了したら、ディレクトリをチェックして、.outおよび.h3dファイルが存在していることを確認します。

  1. 結果ファイル(.h3d)をHyperViewに読み込んでポスト処理します。
  2. サブケースドロップダウンからSubcase 71 (Fatigue_SeamWeld)を選択します。
  3. Contourパネルに進み、Damage result typeを選択します。
  4. Applyをクリックします。


    図 14. HyperViewでのダメージコンター