OS-T: 6020 E-Nアプローチを用いた多軸疲労解析(ひずみ - 寿命)

与えられた周期荷重の下で塑性ひずみが発生する場合、疲労寿命の予測にE-N(ひずみ - 寿命)アプローチが選択されるべきです。

S-N(応力 - 寿命)アプローチは疲労挙動に塑性ひずみが中心的な役割を担う低サイクル疲労には適していません。S-N解析で疲労寿命が 10,000 サイクル以下となった場合、E-Nアプローチがより良い選択となり得る兆候です。E-Nアプローチは計算的には S-Nアプローチよりも高価ですが、高サイクル疲労の場合においても妥当な推定を行うはずです。

rd2070_SN_curve
図 1. S-N曲線の低サイクルと高サイクルの領域
E-N理論は単軸ひずみを扱うため、それぞれの計算点、それぞれの時間ステップにおけるひずみ成分は一つの統合された値にする必要があり、そこで、等価な公称ひずみが用いられ、E-N曲線に適用されます(図 2)。

rd2080a_strainlife_curve
図 2. ひずみ-寿命曲線

OptiStructではさまざまなひずみの組み合わせタイプが利用可能で、デフォルトは “Absolute maximum principle strain (絶対値最大の主ひずみ)”です。一般的に脆性材料には "Absolute maximum principle stain"が推奨されますが、延性材料には "Signed von Mises stain"が推奨されます。符号付きパラメータの符号には最大絶対値主値の符号が用いられます。

HyperMeshでの疲労セットアップのフローチャートは、図 3に示すように記述することができます。


図 3. 疲労解析のフローチャート
疲労定義の3つの見地は、材料の疲労特性、疲労パラメータと荷重の順序(sequence)とイベント(event)の定義です。
FATDEF
要素と関連する疲労解析に用いられる疲労特性の定義。
PFAT
表面仕上げ、表面処理、解析に用いる面、要素の疲労強度低下係数の定義。
MATFAT
疲労解析の為の材料特性の定義。これらの特性は材料の E-N曲線から得られます(図 2)。その E-N曲線は、多くは鏡面加工された試験体の完全反転の曲げ試験から得られます。
  • 疲労パラメータ

    rd2070_mean_stress_corr
    図 4. 平均応力補正
    FATPARM
    疲労解析のパラメータの定義。これには応力の組み合わせ方法、平均応力修正法(図 4)、レインフローパラメータ、 応力の単位が含まれます。
  • 疲労の順序(sequence)とイベント(event)の定義

    rd2070_load_time_history
    図 5. 荷重時刻歴
    FATSEQ
    疲労解析での荷重の順序の定義。このカードは他のFATSEQカードやFATEVNTカードを参照することができます。
    FATEVNT
    疲労解析の荷重のイベントを定義します。
    FATLOAD
    疲労荷重パラメータを定義します。
    TABLEFAT
    それぞれの点の荷重時刻歴のy値の定義(図 5

本チュートリアルの実行には、optistruct.zipに含まれる下記のファイル群が必要です。モデルファイルへのアクセスをご参照ください。

ctrlarm.femload1.csvload2.csv

または

本チュートリアルで使用されるモデルファイル群のコピーは、<install_directory>/tutorials/hwsolvers/optistructで入手できます。

本チュートリアルでは、図 6に示すような、ブレーキ力と鉛直力を受けるコントロールアームが用いられます。2つの荷重の時刻歴は 1 Hzで 2545秒間図 7図 8に示すように得られており、これが使われます。コントロールアームに用いられる材料はアルミニウムでそのE-N曲線を図 9に示します。亀裂は常に表面から始まるため、 表皮のシェルメッシュがソリッド要素を覆って置かれています。これにより、計算精度も良くなります。

rd2070a_control_arm
図 6. 疲労解析に用いるコントロールアームモデル

rd2070a_load_time
図 7. 鉛直力の荷重時刻歴

rd2070a_vertical_force
図 8. ブレーキ力の荷重時刻歴

rd2080a_en_curve
図 9. アルミニウムのEN曲線

HyperMeshの起動とOptiStructユーザープロファイルの設定

使用されるモデルは、図 6に示すようなコントロールアームのモデルです。荷重と拘束条件、および2つの静的荷重ケースは、このモデルに既に定義されています。

  1. HyperMeshを起動します。
    User Profilesダイアログが現れます。
  2. OptiStructを選択し、OKをクリックします。
    これで、ユーザープロファイルが読み込まれます。ユーザープロファイルには、適切なテンプレート、マクロメニュー、インポートリーダーが含まれており、OptiStructモデルの生成に関連したもののみにHyperMeshの機能を絞っています。

モデルの読み込み

  1. File > Import > Solver Deckをクリックします。
    Importタブがタブメニューに追加されます。
  2. File typeにOptiStructを選択します。
  3. Filesアイコンfiles_panelを選択します。
    Select OptiStruct Fileブラウザが開きます。
  4. 自身の作業ディレクトリに保存したctrlarm.femファイルを開きます。モデルファイルへのアクセスをご参照ください。
  5. Open をクリックします。
  6. Import、続いてCloseをクリックし、Importタブを閉じます。

    疲労解析のセットアップの大筋は、以下のステップで得られます。

モデルのセットアップ

TABFAT荷重コレクターの定義

荷重順序の定義の最初のステップはTABFATカードの定義です。このカードは荷重履歴を示します。
  1. Viewメニュー内のUtilityメニューが選択されていることを確認します。View > Browsers > HyperMesh > Utilityをクリックします。
  2. ブラウザのModel タブの横にあるUtilityメニューをクリックします。ToolsセクションでTABLE Createをクリックします。
  3. OptionsをImport tableに設定します。
  4. TablesをTABFATに設定します。
  5. Nextをクリックします。
  6. 荷重ファイルをブラウズします。
  7. Open the XY data Fileダイアログボックスで、Files of type filterをCSV (*.csv)に設定します。
  8. インストールフォルダーから自身の作業ディレクトリに保存したload1.csvファイルを開きます。
  9. Create New Table でNameをtable1とします。
  10. Applyをクリックし、テーブルを保存します。
    TABFATカードイメージのカーブコレクターtable1が生成されます。
  11. 2番目の荷重ファイルload2.csvをブラウズします。
  12. Create New Table でNameをtable2とします。
  13. Applyをクリックし、表を保存します。
    TABFATカードイメージのカーブコレクターtable2が生成されます。
  14. CancelでImport TABFATウィンドウを終了します。
    Modelブラウザ内のCurvesの下にテーブルが現れます。
    注: DACフォーマットのファイルはHyperGraphで簡単に読み込むことが可能で、HyperMeshで読めるCSVフォーマットに変換できます。

FATLOAD荷重コレクターの定義

  1. Modelブラウザ内で右クリックし、Create > Load Collectorを選択します。
  2. NameにFATLOAD1と入力します。
  3. Colorをクリックし、カラーパレットから色を選択します。
  4. Card ImageにFATLOADを選択します。
  5. TID(テーブルID)に、荷重コレクターのリストからtable1を選択します。
  6. LCID(荷重ケースID)に、荷重ステップのリストからSUBCASE1を選択します。
  7. LDM(荷重の大きさ)を1に設定します。
  8. Scaleを5.0に設定します。
  9. もう1つの荷重コレクターFATLOAD2についても、FATLOADカードイメージでtable2SUBCASE2を指定して、同じプロセスを繰り返します。
  10. LDMを1に、Scaleを5.0に設定します。

FATEVNT荷重コレクターの定義

  1. Modelブラウザ内で右クリックし、Create > Load Collectorを選択します。
  2. NameにFATEVENTと入力します。
  3. Card Imageに、FATEVNTを選択します。
  4. FATEVNT_NUM_FLOADに2と入力します。
  5. Data欄の横のTableアイコンtable_pencilをクリックし、ポップアップウィンドウでFLOAD(1)にFATLOAD1を、FLOAD(2)にFATLOAD2を選択します。

FATSEQ荷重コレクターの定義

  1. Modelブラウザ内で右クリックし、Create > Load Collectorを選択します。
  2. NameにFATSEQと入力します。
  3. Card ImageにFATSEQを選択します。
  4. FID(疲労イベント定義)にFATEVENT を選択します。
    疲労解析のためのイベントのシーケンスの定義が完了しました。次に疲労パラメータが定義されます。

疲労パラメータの定義

  1. Modelブラウザ内で右クリックし、Create > Load Collectorを選択します。
  2. Nameにfatparamと入力します。
  3. Card ImageにFATPARMを選択します。
  4. TYPEがENにセットされていることを確認します。
  5. 多軸手法について、MAXLFATをYesに設定します。
  6. STRESSUをMPA(応力単位)に設定します。
  7. RAINFLOW RTYPEをLOADに設定します。
  8. CERTNTY SURVCERTを0.5に設定します。

疲労材料特性の定義

疲労解析の材料カーブはMAT1カードで定義できます。

  1. Modelブラウザで、Aluminum材料をクリックします。
    Entity Editorが開きます。
  2. Entity Editorで、MATFATをENに設定します。
  3. UTS (ultimate tensile stress)を600に設定します。
  4. ENに以下を設定します(これらの値は材料のEN曲線より得られます):
    SF
    1002.000
    B
    -0.095
    C
    -0.690
    EF
    0.350
    NP
    0.110
    KP
    966.000
    NC
    2E+08
    SEE
    0.100
    SEP
    0.100

PFAT荷重コレクターの定義

  1. Modelブラウザ内で右クリックし、Create > Load Collectorを選択します。
  2. Nameにpfatと入力します。
  3. Card ImageにPFATを選択します。
  4. LAYERをTOPに設定します。
  5. FINISHをNONEに設定します。
  6. TRTMENTをNONEに設定します。
  7. Kfを1.0に設定します。

FATDEF荷重コレクターの定義

  1. Modelブラウザ内で右クリックし、Create > Load Collectorを選択します。
  2. Nameにfatdefと入力します。
  3. Card ImageをFATDEFに設定します。
  4. Entity Editor内でPSHELL をアクティブにします。
  5. PSHELLの下で、PID(1)にshellを、PFATID(1)にpfatを選択します。
  6. Closeをクリックします。

疲労荷重ステップの定義

  1. Modelブラウザ内で右クリックし、Create > Load Stepを選択します。
  2. NameにFatigueと入力します。
  3. Analysis typeをfatigueに設定します。
  4. FATDEFにfatdefを選択します。
  5. FATPARMにfatparamを選択します。
  6. FATSEQにfatseqを選択します。

ジョブのサブミット

  1. AnalysisページからOptiStructパネルに入ります。
  2. input file欄に続くsave asをクリックします。
    Save Asダイアログが開きます。
  3. File nameに名称ctrlarm.femを入力します。
  4. 保存をクリックします。
    field input file:はctrlarm.femspring_link_hm.femの場所に設定されます。
  5. OptiStructをクリックし、解析をサブミットします。

結果の確認

  1. OptiStructパネルから、HyperViewをクリックします。
    HyperViewが起動され、結果が読み込まれます。HyperViewにモデルと結果が正しく読み込まれたことを示すメッセージウィンドウが現われます。
  2. Resultsタブに移動します。
  3. Load CaseをSubcase 3 – fatigueに変更します。
  4. ResultsツールバーでresultsContour-16をクリックし、Contourパネルを開きます。
  5. Result typeにDamageをセットし、Applyをクリックして要素コンターを表示させます。
    図 10. 要素ダメージの結果