ACU-T:5000 移動座標(定常)による遠心送風機

前提条件

このチュートリアルを実行する前に、HyperWorksの入門チュートリアルであるACU-T:1000 HyperWorksユーザーインターフェースをすでに完了しHyperMeshAcuSolve、およびHyperViewの基本を理解しているものとします。この解析を実行するには、ライセンス供与済みバージョンのHyperMeshAcuSolveにアクセスできる必要があります。

このチュートリアルを実行する前に、HyperMesh_tutorial_inputs.zip<Altair_installation_directory>\hwcfdsolvers\acusolve\win64\model_files\tutorials\AcuSolveから作業ディレクトリにコピーします。 ACU-T5000_BlowerSteady.hm HyperMesh_tutorial_inputs.zipから取り出します。

HyperMeshデータベース(.hm ファイル)には、メッシュとジオメトリが含まれています。このチュートリアルには、ジオメトリのインポートおよびメッシュ生成に関する手順は含まれていません。

問題の説明

このチュートリアルで扱う問題は、図 1および図 2に図示しています。この問題は、前曲羽根型ホイール付き遠心送風機、吹き込みダクトおよび吹き出しダクト付きハウジングで構成されています。吹き込み面を通る流体は羽根型ホイールのハブに入り、羽根を通過する際に遠心力によって放射状に加速され、吹き出し面を通って送風機のハウジングを出ていきます。軸流ファンと比較して安価で単純であることから、遠心送風機は建築物のHVAC(暖房、換気、および空調)システムに広く使用されてきました。



図 1. 遠心送風機の概略図


図 2. ファンの羽根の概略図

HyperMeshモデルデータベースを開く

  1. HyperMeshを起動し、AcuSolveのユーザープロファイルを読み込みます。
    User ProfilesからAcuSolveを選択する方法については、HyperMeshの入門チュートリアルACU-T:1000 HyperWorksユーザーインターフェースをご参照ください。
  2. 標準ツールバーのOpen Modelアイコン をクリックします。
    Open Modelダイアログが開きます。
  3. モデルファイルの保存先ディレクトリを参照します。HyperMeshファイルのACU-T5000_BlowerSteady.hmを選択してOpenをクリックします。
  4. File > Save Asをクリックします。
    Save Model Asダイアログが開きます。
  5. 名前をCentrifugalBlowerとして新しいディレクトリを作成し、このディレクトリへ移動します。
    このディレクトリが作業ディレクトリになり、シミュレーションに関連するすべてのファイルがこの場所に保存されます。
  6. データベースのファイル名としてBlower_Steadyと入力するか、別の名前を入力します。
  7. 保存をクリックしてデータベースを作成します。

一般的なシミュレーションパラメータの設定

この手順では、シミュレーション全体に適用されるシミュレーションパラメータを設定します。

  1. Solverブラウザに移動して01.Globalを拡張表示し、PROBLEM_DESCRIPTIONをクリックします。
  2. Turbulence equationモデルをSpalart Allmarasに変更します。


    図 3.

移動座標系の作成

この手順では、羽根領域で流体の回転座標系を作成します。これにより、これらの領域にある各要素を指定の回転座標系で解析し、そのボリュームセットに回転体力を追加します。

  1. Solverブラウザで、04.REFERENCE_FRAMEを右クリックし、Createを選択します。
  2. Entity Editorで、座標系の名前をImpeller_RFに変更します。
  3. Rotation centerを(0, 0, 0.05)に設定します。
  4. Angular velocity-Zを-157.08rad/secに設定します。


    図 4.

境界条件と材料モデルパラメータの設定

デフォルトでは、すべてのコンポーネントは、壁境界条件に含まれます。この手順では、それらを適切な境界条件に変更し、流体ボリュームに材料特性を割り当てます。
  1. Solverブラウザ12.Surfaces > WALLの順に拡張表示します。
  2. Inletをクリックします。Entity Editorで、
    1. TypeをINFLOWに変更します。
    2. Inflow typeをStagnation Pressureに設定します。
    3. Turbulence input typeをViscosity Ratioに設定します。
    4. MaterialをAir_HMに設定します。
    5. Turbulence viscosity ratioを10.0に設定します。


    図 5.
  3. Outletをクリックします。Entity Editorで、TypeをOUTFLOWに変更します。


    図 6.
  4. Wallsをクリックします。Entity Editorで、TypeがWALLに設定されていることを確認します。


    図 7.

    送風機の外壁、ファンの羽根、羽根車と主流体との界面を構成するすべてのサーフェス要素を、1つのサーフェスセットにグループ化できます。AcuSolveの高度な機能であるAuto_Wallでは、これらの要素を外壁と内壁に再グループ化し、適切な壁面条件と界面条件を適用します。この場合、ファンの羽根を構成するサーフェス要素はまとめてグループ化され(AUTO Fluid_Impeller wall)、羽根車の流体に割り当てられた座標が継承されます。界面を構成するサーフェス要素はAUTO Fluid_Impeller internalにグループ化され、外側ケースを構成する要素はAUTO Fluid_Main wallにグループ化されます。これらのグループ化プロセスはすべて内部で実行されるので、手動で何らかの操作を実施する必要はありません。

  5. Fluid_Mainをクリックします。Entity Editorで、
    1. TypeをFLUIDに変更します。
    2. MaterialとしてAir_HMを選択します。


    図 8.
  6. Fluid_Impellerをクリックします。Entity Editorで、
    1. TypeをFLUIDに変更します。
    2. MaterialとしてAir_HMを選択します。
    3. Reference frameとしてImpeller_RFを選択します。


    図 9.
  7. モデルを保存します。

解析計算

この手順では、HyperMeshからAcuSolveを直接起動して解析を完了します。

AcuSolveの実行

  1. すべてのメッシュコンポーネントの表示をオンにします。
    解析を実行するには、アクティブなすべてのコンポーネントのメッシュを可視化した状態にする必要があります。
  2. ACUツールバーの をクリックします。
    Solver job Launcherダイアログが開きます。
  3. オプション: 解析時間を短縮するには、使用可能なプロセッサの数に応じて、使用するプロセッサの数に大きい値(4または8)を設定します。
  4. Output time stepsはAllまたはFinalに設定できます。これは定常状態解析なので、最後の時間ステップでの出力が得られれば十分です。
  5. 他のオプションはデフォルト設定のままとして、Launchをクリックして解析プロセスを開始します。


    図 10.

結果のポスト処理

AcuProbeによる圧力上昇プロットの作成

解析が進むに伴い、AcuTailウィンドウとAcuProbeウィンドウが自動的に開きます。この手順では、ユーザー定義関数(UDF)を作成し、吹き込み口と吹き出し口の間で発生する圧力上昇のプロットを生成します。

  1. 解析が収束した後、AcuProbeウィンドウのUser Functionアイコン をクリックします。
    User Functionダイアログが開きます。
  2. 関数名としてPres Riseと入力します。
  3. Function欄でP_Outlet =と入力します。
  4. Surface Output > Outlet > Pressureの順に拡張表示します。pressureを右クリックし、Copy Nameをクリックします。Function欄のP_Outlet =の後に、コピーした値を貼り付けます。
  5. 次の行でP_Inlet =と入力し、吹き込み口圧力について上記の手順を繰り返します。
  6. 次の行でvalue = P_Outlet - P_Inletと入力します。


    図 11.
    注: 単語“value”は大文字と小文字が区別され、必ず小文字にする必要があります。先頭を大文字で入力し始めると、エラーのウィンドウが表示されます。
  7. Applyをクリックしてプロットを表示します。
    注: プロットを正しく表示するために、ツールバーで をクリックする必要がある場合があります。


    図 12.
次の手順では、HyperViewを使用してZ平面上の断面に圧力コンターを作成します。AcuProbeウィンドウとAcuTailウィンドウを閉じます。HyperMeshウィンドウのAcuSolve Controlタブを閉じます。

HyperViewの起動とモデルおよび結果の読み込み

  1. HyperMeshのメインメニューでApplications > HyperViewをクリックしてHyperMeshを開きます。
    HyperViewウィンドウを読み込むと、デフォルトでLoad model and resultsパネルが開きます。このパネルが表示されない場合は、File > Open > Modelの順にクリックします。
  2. Load model and resultsパネルで、Load modelの隣にある をクリックします。
  3. Load Model Fileダイアログで、作業ディレクトリに移動して、ポスト処理する解析実行のAcuSolve .logファイルを選択します。この例で選択するファイルは、Blower_Steady.1.Logです。
  4. Openをクリックします。
  5. パネル領域Applyをクリックしてモデルと結果を読み込みます。
    読み込むと、モデルが形状で色分けされます。

断面上での圧力コンターの作成

  1. Resultsブラウザの空白部分を右クリックし、Create > Section Cut > Planarの順に選択します。
    新しいエンティティとしてSection 1が作成されます。
  2. Section 1を右クリックしてEditを選択します。
  3. パネル領域のDefine planeセクションでZ-axisを選択し、Applyをクリックします。
  4. Baseの値として(0,0,0.05)を入力してEnterキーを押します。
  5. DisplayオプションをClipping planeからCross sectionに変更します。
  6. Gridlineをクリックします。ダイアログで、Showオプションのチェックをはずし、OKをクリックします。
  7. Resultsツールバーで をクリックしてContourパネルを開きます。
  8. Result typeとしてPressure(s)を選択します。
  9. ComponentsコレクターをクリックしてAllを選択します。
  10. Applyをクリックします。
  11. パネル領域のDisplayタブで、Discrete colorオプションをオフにします。


    図 13.
  12. Legendタブをクリックし、つづいてEdit Legendをクリックします。表示されたダイアログで、Numeric formatをFixedに変更してOKをクリックします。
  13. グラフィックスウィンドウで結果が見やすくなるようにその表示方向を調整し、次の図のようなコンタープロットになることを確認します。


    図 14.

要約

このチュートリアルでは、遠心送風機内に回転座標系を指定した定常状態シミュレーションを設定する基本的なワークフローに取り組みました。まず、メッシュをインポートし、ケースが設定された後、AcuSolveを使用して解を生成しました。次に、AcuProbeを使用して圧力の上昇を計算し、HyperViewを使用して切断面上に圧力のコンタープロットを作成しました。