ACU-T:5002 自動車のディスクブレーキシステムの冷却

このチュートリアルでは、ディスクブレーキシステム内のブレーキディスクのシミュレーションの設定、解析、および結果表示を行うための手順を説明するとともに、ディスクの冷却メカニズムについて説明します。このチュートリアルで使用するモデルは、ブレーキ動作のシミュレーションに熱源が適用されるブレーキディスクの一部で構成されます。この熱源は、ホイールとともに回転するブレーキディスクと、ホイールの回転に対して静止しているブレーキパッドの間の摩擦によるものです。ブレーキをかけると、油圧機構によりパッドが作動してディスクに押し当てられます。ディスクとパッドの間の摩擦力によって、ディスクが減速することで、ホイールも減速します。走行中の自動車が減速する際に力学的エネルギーを消散させるための最も一般的なメカニズムは、パッドとディスクの間の摩擦による熱エネルギーへの変換です。このチュートリアルは、車両が減速と加速のサイクルを経る際のディスクの温度上昇を数値化することを目的とします。

CFDシミュレーションの基本的な手順については、ACU-T:2000 ミキシングエルボ内の乱流をご参照ください。このチュートリアルでは、AcuSolveの新しい概念や機能は紹介しません。代わりに、このチュートリアルでは、ディスクブレーキシステムなどの複雑な問題を正しくシミュレートする際のAcuSolveの機能の実演に重点を置き、同様のシミュレーションを設定する方法に関する指針を提示します。

このチュートリアルでは、以下を実行します。
  • 問題の解析
  • AcuConsoleの起動とシミュレーションデータベースの作成
  • 一般的な問題パラメータの設定
  • 解法パラメータの設定
  • シミュレーション用の形状のインポート
  • ボリュームグループの作成とボリュームパラメータの適用
  • サーフェスグループの作成とサーフェスパラメータの適用
  • グローバルメッシングパラメータとローカルメッシングパラメータの設定
  • メッシュ生成
  • AcuSolveの実行
  • AcuProbeによる解析のモニター
  • AcuFieldViewによる解析のポスト処理

前提条件

入門チュートリアルであるACU-T:2000 ミキシングエルボ内の乱流をすでに完了している必要があります。ここでは、AcuConsoleAcuSolve、およびAcuFieldViewをある程度使い慣れていることを前提としています。ライセンス供与済みバージョンのAcuSolveにアクセスできることも必要です。

このチュートリアルを実行する前に、AcuConsole_tutorial_inputs.zip<<Altair_installation_directory>\hwcfdsolvers\acusolve\win64\model_files\tutorials\AcuSolveから作業ディレクトリにコピーします。をAcuConsole_tutorial_inputs.zipから取り出します。からbrake_disc_partial.x_theatSource.cの各ファイル、precursor_runフォルダーを取り出します。

問題の解析

CFDシミュレーションにおける重要なステップは、目前の工学的問題を調べ、AcuSolveに対して指定する必要のある重要なパラメータを決定することです。パラメータは、形状要素(入口、出口、壁など)に基づいて行うことができるとともに、流れの条件(流体プロパティ、速度、流れを乱流または層流のどちらでモデル化するのかなど)に基づいて行うことができます。

図1は、一般的なディスクブレーキシステムの動作メカニズムの概略図を示しています。ブレーキのペダル / レバーはプッシュロッドに結合されており、プッシュロッドによってマスターシリンダーピストンに力がかかります。ピストンにかかった圧力は、ピストンの運動によって、油圧ラインを通じて、ブレーキキャリパーアセンブリ内に配置されたブレーキパッドに伝達されます。これらのパッドがローター(ブレーキディスク)に押し付けられることで、回転するディスクに摩擦力がかかり、ドライバーがブレーキレバーを引くまでディスクが減速します。走行中の自動車が減速する際に力学的エネルギーを消散させるための最も一般的なメカニズムは、パッドとディスクの間の摩擦による熱エネルギーへの変換です。



図 1. シミュレーションに使用するモデル
ブレーキ力によって生じる熱は、特定の状況で非常に高くなることがあり、周囲の空気にすばやく放散されないと、ディスクの温度が大きく上昇する可能性があります。ディスクの温度が一定の限度を超えると、ブレーキの性能が低下する可能性があり、最悪の場合はブレーキが故障する可能性もあります。このような起こり得る状況のいくつかを以下に説明します。
  1. 下り坂ブレーキ – 車両が長い下り坂を走行しているときは、通常はブレーキ力がディスクに継続的にかかることで、車両の速度が安全限度内に保たれます。その結果として、ディスクは継続的に加熱されて、加熱と冷却が均衡状態になるまで、ディスクの温度は上昇し続けます。最終的な状態で達する温度は非常に高くなる可能性があります。
  2. 繰り返しブレーキも、ディスクの温度を安全限度に近づかせる原因となることが多い状況です。これは、車両が常に減速または加速されるカーレースでよく見られます。繰り返しブレーキでは、通常、ブレーキ-解除のサイクルが短時間に複数回発生します。各サイクルでは、ブレーキをかけるとディスクの温度が上昇し、ブレーキを解除するとディスクの温度が低下します。各サイクルの終了時に、温度が十分には下がらない可能性があります。その結果として、サイクルを重ねるごとにディスクの温度がますます上がり、最終的に安全限度を超える可能性があります。
  3. 非常ブレーキも原因の1つです。車両は急停止するため、冷却効果はディスクの温度を下げるのに十分ではありません。その結果、ブレーキサイクルの終了時には温度が非常に高くなる可能性があります。

最新のディスクブレーキは、最大1200Kの表面温度まで安全に動作できますが、最適な動作範囲は約900Kまでです。したがって、ほとんどのブレーキディスクは、少なくとも通常のブレーキ状況で、この温度が最大温度となることを目指して設計されています。ブレーキシステムの冷却が不十分な場合は、熱変形、ブレーキフェード、およびブレーキ液の蒸発が生じる可能性があります。熱変形の原因は過大な熱膨張であり、過大な熱膨張の原因は高温です。ブレーキフェードはパッドとディスクの間の摩擦力を表し、固定圧力下では温度上昇に伴ってこの摩擦力は弱くなります。ブレーキ液は、高温になると蒸発して、油圧システムの効率が低下します。その結果、ブレーキパッドのストローク距離がガスの圧縮に無駄に費やされることになります。

機械エンジニアが通常気にしていることは、ブレーキフェード速度、熱応力、熱変形、材料強度の限度、ブレーキ液の温度といった特性です。CFDシミュレーションでは、これらすべての懸念事項は、ディスクのピーク温度とディスクの温度分布という2つの出力に関連しています。

熱伝達の形態

熱伝達の3つの一般的な形態は、伝導、対流、および放射です。これら3つの形態はすべて、ブレーキの冷却サイクル時に作用します。熱は、ブレーキパッドとブレーキディスクが接触する領域で、これら2つのサーフェス間の摩擦により発生します。発生した熱の一部はパッドに伝導し、残りの熱はディスクに吸収されます。吸収された熱は、伝導によってディスクボリューム内で消散します。パッドと接触していないディスクのサーフェスは、対流と放射によって熱を消散させます。

このチュートリアルでは、これら3つの熱伝達形態すべてが考慮されます。ただし、放射による熱伝達のモデリングは、ディスクの周囲に何も障害物がない黒体放射理論を利用することで簡素化されています。放射による熱伝達を正確に再現するには、ディスクと周囲の物体の間の形態係数を評価する必要があります。

シミュレーションシナリオ - 繰り返しブレーキ

このチュートリアルでは、繰り返しブレーキのシナリオをシミュレートします。車両の初期速度は60mphと想定され、これはディスクの角速度400rpmに相当します。車両は、2.8秒間にわたる線形減速プロセスを経て停止されます。車両の速度が0になると、その後の15.9秒間で、車両は再び60mph(400rpm)まで線形に加速します。したがって、ブレーキ-解除のサイクルは全体で18.7秒間にわたります(図2)。このサイクルの最初の2.8秒間、すなわち減速プロセス中は、ブレーキによる発熱が原因でディスクの温度が上昇します。その後の15.9秒間は、熱が周囲に消散されるため、ディスクの温度が低下します。このような1サイクルが終了すると、ブレーキが再びかけられて、ディスクの温度が再び上昇します(図3)。



図 2. 繰り返しブレーキ-解除のシナリオ


図 3. ブレーキ-解除のサイクルの進行に伴うディスクの予想温度上昇

このチュートリアルでは、全2回分のブレーキ-解除サイクルを検証します。

ディスクブレーキの形状

このチュートリアルでは、ブレーキディスクの一部分が考慮されます。図4は、シミュレーションで使用する形状を示しています。この形状は、ディスクローターの8分の1(45度分)に簡素化されています。パッド、キャリパーアセンブリ、ホイールハウジングなどの周辺コンポーネントは除外されています。



図 4.

領域の中心にディスクがあります。内側の空気ボリュームがディスクに近い空気ボリュームを囲んでいます。これは、ホイールとともに回転するホイール内部の空気ボリュームを表しています。外側の空気は周囲の気流を表しています。したがって、外側の空気には移動座標系は不要です。ディスクの外半径は0.15mで、内側空気半径は0.2mです。周辺境界は、計算領域の外側サーフェスです。これは、高さが1.1mで半径が1.0mの円筒です。現在のシミュレーションでは、車体と他の機械部品は無視されています。基本的に、この計算領域は実験用の理想化された試験装置に対応しています。空気ボリュームは、ブレーキディスクの外側環境を単に簡素化したものです。

熱源の適用

図5は、ブレーキがかけられたときのブレーキシステム内のエネルギーの流れを推測するための概略図を示しています。この図を参照すると、走行している車両は、停止する際に、総力学的エネルギーのうち推定12.5%が、前輪ディスク上の各接触サーフェスに伝達されることがわかります。



図 5. 前輪上の熱流束を推測するためのエネルギーの流れ
ここで、 d MathType@MTEF@5@5@+= feaagKart1ev2aaatCvAUfeBSjuyZL2yd9gzLbvyNv2CaerbuLwBLn hiov2DGi1BTfMBaeXatLxBI9gBaerbd9wDYLwzYbItLDharqqtubsr 4rNCHbGeaGqiVu0Je9sqqrpepC0xbbL8F4rqqrFfpeea0xe9Lq=Jc9 vqaqpepm0xbba9pwe9Q8fs0=yqaqpepae9pg0FirpepeKkFr0xfr=x fr=xb9adbaqaaeGaciGaaiaabeqaamaabaabaaGcbaGaamizaaaa@36DF@ は引き摺り損失で、その値は約27.4%です。定数 s MathType@MTEF@5@5@+= feaagKart1ev2aaatCvAUfeBSjuyZL2yd9gzLbvyNv2CaerbuLwBLn hiov2DGi1BTfMBaeXatLxBI9gBaerbd9wDYLwzYbItLDharqqtubsr 4rNCHbGeaGqiVu0Je9sqqrpepC0xbbL8F4rqqrFfpeea0xe9Lq=Jc9 vqaqpepm0xbba9pwe9Q8fs0=yqaqpepae9pg0FirpepeKkFr0xfr=x fr=xb9adbaqaaeGaciGaaiaabeqaamaabaabaaGcbaGaam4Caaaa@36EE@ は、前輪上の重量分率で、その推測値は約72.5%です。これら2つの定数の参照情報は、Martinによって記されています(2004年)。熱配分割合σ = 0.05は、パッドのサーフェスに伝達される熱です。この値は、方程式1によって推測できます(AdamowiczおよびGrzes、2011年)。 σ = k 1 · ρ 1 · c ρ 1 k 1 · ρ 1 · c ρ 1 + k 2 · ρ 2 · c ρ 2 MathType@MTEF@5@5@+= feaagKart1ev2aaatCvAUfeBSjuyZL2yd9gzLbvyNv2CaerbuLwBLn hiov2DGi1BTfMBaeXatLxBI9gBaerbd9wDYLwzYbItLDharqqtubsr 4rNCHbGeaGqiVu0Je9sqqrpepC0xbbL8F4rqqrFfpeea0xe9Lq=Jc9 vqaqpepm0xbba9pwe9Q8fs0=yqaqpepae9pg0FirpepeKkFr0xfr=x fr=xb9adbaqaaeGaciGaaiaabeqaamaabaabaaGcbaGaeq4WdmNaey ypa0ZaaSaaaeaadaGcaaqaaiaadUgadaWgaaWcbaGaaGymaaqabaGc cqWIpM+zcqaHbpGCdaWgaaWcbaGaaGymaaqabaGccqWIpM+zcaWGJb WaaSbaaSqaaiabeg8aYjaaigdaaeqaaaqabaaakeaadaGcaaqaaiaa dUgadaWgaaWcbaGaaGymaaqabaGccqWIpM+zcqaHbpGCdaWgaaWcba GaaGymaaqabaGccqWIpM+zcaWGJbWaaSbaaSqaaiabeg8aYjaaigda aeqaaaqabaGccqGHRaWkdaGcaaqaaiaadUgadaWgaaWcbaGaaGOmaa qabaGccqWIpM+zcqaHbpGCdaWgaaWcbaGaaGOmaaqabaGccqWIpM+z caWGJbWaaSbaaSqaaiabeg8aYjaaikdaaeqaaaqabaaaaaaa@60FB@

ここで、 k MathType@MTEF@5@5@+= feaagKart1ev2aaatCvAUfeBSjuyZL2yd9gzLbvyNv2CaerbuLwBLn hiov2DGi1BTfMBaeXatLxBI9gBaerbd9wDYLwzYbItLDharqqtubsr 4rNCHbGeaGqiVu0Je9sqqrpepC0xbbL8F4rqqrFfpeea0xe9Lq=Jc9 vqaqpepm0xbba9pwe9Q8fs0=yqaqpepae9pg0FirpepeKkFr0xfr=x fr=xb9adbaqaaeGaciGaaiaabeqaamaabaabaaGcbaGaam4Aaaaa@36E6@ は伝導率、ρは密度、 c p MathType@MTEF@5@5@+= feaagKart1ev2aaatCvAUfeBSjuyZL2yd9gzLbvyNv2CaerbuLwBLn hiov2DGi1BTfMBaeXatLxBI9gBaerbd9wDYLwzYbItLDharqqtubsr 4rNCHbGeaGqiVu0Je9sqqrpepC0xbbL8F4rqqrFfpeea0xe9Lq=Jc9 vqaqpepm0xbba9pwe9Q8fs0=yqaqpepae9pg0FirpepeKkFr0xfr=x fr=xb9adbaqaaeGaciGaaiaabeqaamaabaabaaGcbaGaam4yamaaBa aaleaacaWGWbaabeaaaaa@37FF@ は比熱容量です。添え字1はパッド材料を示し、添え字2はディスク材料を示します。

ブレーキプロセスに、車両の位置エネルギーと運動エネルギーの両方の変化が含まれている場合は、熱流束を計算するための方程式は次のようになります:

q·t= Es(1σ)(1d) 4A MathType@MTEF@5@5@+= feaagKart1ev2aaatCvAUfeBSjuyZL2yd9gzLbvyNv2CaerbuLwBLn hiov2DGi1BTfMBaeXatLxBI9gBaerbd9wDYLwzYbItLDharqqtubsr 4rNCHbGeaGqiVu0Je9sqqrpepC0xbbL8F4rqqrFfpeea0xe9Lq=Jc9 vqaqpepm0xbba9pwe9Q8fs0=yqaqpepae9pg0FirpepeKkFr0xfr=x fr=xb9adbaqaaeGaciGaaiaabeqaamaabaabaaGcbaGaamyCaiabl+ y6NjaadshacqGH9aqpdaWcaaqaaiaadweacaWGZbGaaiikaiaaigda cqGHsislcqaHdpWCcaGGPaGaaiikaiaaigdacqGHsislcaWGKbGaai ykaaqaaiaaisdacaWGbbaaaaaa@475F@

総力学的エネルギーは次のとおりです。

E= m v 2 2 +mgh MathType@MTEF@5@5@+= feaagKart1ev2aaatCvAUfeBSjuyZL2yd9gzLbvyNv2CaerbuLwBLn hiov2DGi1BTfMBaeXatLxBI9gBaerbd9wDYLwzYbItLDharqqtubsr 4rNCHbGeaGqiVu0Je9sqqrpepC0xbbL8F4rqqrFfpeea0xe9Lq=Jc9 vqaqpepm0xbba9pwe9Q8fs0=yqaqpepae9pg0FirpepeKkFr0xfr=x fr=xb9adbaqaaeGaciGaaiaabeqaamaabaabaaGcbaGaamyraiabg2 da9maalaaabaGaamyBaiaadAhadaahaaWcbeqaaiaaikdaaaaakeaa caaIYaaaaiabgUcaRiaad2gacaWGNbGaamiAaaaa@3F1F@

現在のブレーキシナリオでは、車両は平面道路を走行していると想定されています。したがって、位置エネルギーの変化は想定されておらず、車両の運動エネルギーのみが熱に変換されます。

q·t= m v 2 s(1σ)(1d) 2·4A MathType@MTEF@5@5@+= feaagKart1ev2aaatCvAUfeBSjuyZL2yd9gzLbvyNv2CaerbuLwBLn hiov2DGi1BTfMBaeXatLxBI9gBaerbd9wDYLwzYbItLDharqqtubsr 4rNCHbGeaGqiVu0Je9sqqrpepC0xbbL8F4rqqrFfpeea0xe9Lq=Jc9 vqaqpepm0xbba9pwe9Q8fs0=yqaqpepae9pg0FirpepeKkFr0xfr=x fr=xb9adbaqaaeGaciGaaiaabeqaamaabaabaaGcbaGaamyCaiabl+ y6NjaadshacqGH9aqpdaWcaaqaaiaad2gacaWG2bWaaWbaaSqabeaa caaIYaaaaOGaam4CaiaacIcacaaIXaGaeyOeI0Iaeq4WdmNaaiykai aacIcacaaIXaGaeyOeI0IaamizaiaacMcaaeaacaaIYaGaeS4JPFMa aGinaiaadgeaaaaaaa@4CA1@

ディスクとパッドのサーフェスの接触面積を特定するには、2つの方法があります。1つ目は、ディスクとパッドの間の実際の接触面積を考慮する方法です。この方法は、ディスク内で到達するピーク温度を推測しやすくするため、現実的なシミュレーションを行うのに便利です。モニターポイントがディスクサーフェス上に配置された場合は、ディスクの回転ごとに、このモニターポイントが接触パッチに入ったり出たりするたびに、この温度値は上下します。

2つ目は、ディスク上の平均熱源を使用する方法です。この場合、接触パッチ内で生じた熱流束は、ディスクとパッドの接触サーフェスによってスイープされる周辺領域全体にわたって平均化されます。これによりシミュレーションが簡素化されますが、この方法では、熱源自体が平均化されるため、ディスク内で生じるピーク温度を特定することはできません。



図 6. モニターポイントで熱パッチが温度変化に与える影響

熱源の使用は、シミュレーションで使用される形状によっても制限されます。部分的なディスク形状が使用される場合は、平均熱源に制限されます。このチュートリアルは、ディスクに適用される平均熱源を使用して設定されます。ただし、参考情報として、両方の方法において方程式で面積を計算するために使用される式は以下のとおりです。

現実的な接触パッチ熱源の場合

A= θ 2π ·π·( r o 2 r i 2 ) MathType@MTEF@5@5@+= feaagKart1ev2aaatCvAUfeBSjuyZL2yd9gzLbvyNv2CaerbuLwBLn hiov2DGi1BTfMBaeXatLxBI9gBaerbd9wDYLwzYbItLDharqqtubsr 4rNCHbGeaGqiVu0Je9sqqrpepC0xbbL8F4rqqrFfpeea0xe9Lq=Jc9 vqaqpepm0xbba9pwe9Q8fs0=yqaqpepae9pg0FirpepeKkFr0xfr=x fr=xb9adbaqaaeGaciGaaiaabeqaamaabaabaaGcbaGaamyqaiabg2 da9maalaaabaGaeqiUdehabaGaaGOmaiabec8aWbaacqWIpM+zcqaH apaCcqWIpM+zcaGGOaGaamOCamaaDaaaleaacaWGVbaabaGaaGOmaa aakiabgkHiTiaadkhadaqhaaWcbaGaamyAaaqaaiaaikdaaaGccaGG Paaaaa@4A9A@

平均熱源の場合

A=π·( r o 2 r i 2 ) MathType@MTEF@5@5@+= feaagKart1ev2aaatCvAUfeBSjuyZL2yd9gzLbvyNv2CaerbuLwBLn hiov2DGi1BTfMBaeXatLxBI9gBaerbd9wDYLwzYbItLDharqqtubsr 4rNCHbGeaGqiVu0Je9sqqrpepC0xbbL8F4rqqrFfpeea0xe9Lq=Jc9 vqaqpepm0xbba9pwe9Q8fs0=yqaqpepae9pg0FirpepeKkFr0xfr=x fr=xb9adbaqaaeGaciGaaiaabeqaamaabaabaaGcbaGaamyqaiabg2 da9iabec8aWjabl+y6NjaacIcacaWGYbWaa0baaSqaaiaad+gaaeaa caaIYaaaaOGaeyOeI0IaamOCamaaDaaaleaacaWGPbaabaGaaGOmaa aakiaacMcaaaa@43EB@

ここで、θはディスク上のブレーキパッドのスイープを表しています。平均熱流束は、現実的な熱源に基づいて次の式で計算できます。

q avg =q θ 2π MathType@MTEF@5@5@+= feaagKart1ev2aaatCvAUfeBSjuyZL2yd9gzLbvyNv2CaerbuLwBLn hiov2DGi1BTfMBaeXatLxBI9gBaerbd9wDYLwzYbItLDharqqtubsr 4rNCHbGeaGqiVu0Je9sqqrpepC0xbbL8F4rqqrFfpeea0xe9Lq=Jc9 vqaqpepm0xbba9pwe9Q8fs0=yqaqpepae9pg0FirpepeKkFr0xfr=x fr=xb9adbaqaaeGaciGaaiaabeqaamaabaabaaGcbaGaamyCamaaBa aaleaacaWGHbGaamODaiaadEgaaeqaaOGaeyypa0JaamyCamaalaaa baGaeqiUdehabaGaaGOmaiabec8aWbaaaaa@402A@

qがrpmと車速に比例しているという想定に基づいて、0.0秒から2.8秒までの熱源は、次の式で与えられます。

q r e a l = 2.7 s t 2.7 s · 1.331 · 10 7 W / m 2 MathType@MTEF@5@5@+= feaagKart1ev2aaatCvAUfeBSjuyZL2yd9gzLbvyNv2CaerbuLwBLn hiov2DGi1BTfMBaeXatLxBI9gBaerbd9wDYLwzYbItLDharqqtubsr 4rNCHbGeaGqiVu0Je9sqqrpepC0xbbL8F4rqqrFfpeea0xe9Lq=Jc9 vqaqpepm0xbba9pwe9Q8fs0=yqaqpepae9pg0FirpepeKkFr0xfr=x fr=xb9adbaqaaeGaciGaaiaabeqaamaabaabaaGcbaGaamyCamaaBa aaleaacaWGYbGaamyzaiaadggacaWGSbaabeaakiabg2da9maalaaa baGaaGOmaiaac6cacaaI3aGaam4CaiabgkHiTiaadshaaeaacaaIYa GaaiOlaiaaiEdacaWGZbaaaiabl+y6NjaaigdacaGGUaGaaG4maiaa iodacaaIXaGaeS4JPFMaaGymaiaaicdadaahaaWcbeqaaiaaiEdaaa GccaWGxbGaai4laiaad2gadaahaaWcbeqaaiaaikdaaaaaaa@527D@

q a v g = q r e a l · θ 2 π MathType@MTEF@5@5@+= feaagKart1ev2aaatCvAUfeBSjuyZL2yd9gzLbvyNv2CaerbuLwBLn hiov2DGi1BTfMBaeXatLxBI9gBaerbd9wDYLwzYbItLDharqqtubsr 4rNCHbGeaGqiVu0Je9sqqrpepC0xbbL8F4rqqrFfpeea0xe9Lq=Jc9 vqaqpepm0xbba9pwe9Q8fs0=yqaqpepae9pg0FirpepeKkFr0xfr=x fr=xb9adbaqaaeGaciGaaiaabeqaamaabaabaaGcbaGaamyCamaaBa aaleaacaWGHbGaamODaiaadEgaaeqaaOGaeyypa0JaamyCamaaBaaa leaacaWGYbGaamyzaiaadggacaWGSbaabeaakiabl+y6Nnaalaaaba GaeqiUdehabaGaaGOmaiabec8aWbaaaaa@4688@

q a v g = 2.7 s t 2.7 s · 2.219 · 10 6 W / m 2 MathType@MTEF@5@5@+= feaagKart1ev2aaatCvAUfeBSjuyZL2yd9gzLbvyNv2CaerbuLwBLn hiov2DGi1BTfMBaeXatLxBI9gBaerbd9wDYLwzYbItLDharqqtubsr 4rNCHbGeaGqiVu0Je9sqqrpepC0xbbL8F4rqqrFfpeea0xe9Lq=Jc9 vqaqpepm0xbba9pwe9Q8fs0=yqaqpepae9pg0FirpepeKkFr0xfr=x fr=xb9adbaqaaeGaciGaaiaabeqaamaabaabaaGcbaGaamyCamaaBa aaleaacaWGHbGaamODaiaadEgaaeqaaOGaeyypa0ZaaSaaaeaacaaI YaGaaiOlaiaaiEdacaWGZbGaeyOeI0IaamiDaaqaaiaaikdacaGGUa GaaG4naiaadohaaaGaeS4JPFMaaGOmaiaac6cacaaIYaGaaGymaiaa iMdacqWIpM+zcaaIXaGaaGimamaaCaaaleqabaGaaGOnaaaakiaadE facaGGVaGaamyBamaaCaaaleqabaGaaGOmaaaaaaa@5197@

与えられている形状の場合、ブレーキパッドの半径はri = 0~11mおよびro = 0~14mで、ディスクサーフェス上のパッドスイープ角度は60度です。この結果、ディスクの各面の接触パッチ面積は0.003927m2となります。ディスクの外縁半径は0.15m、ディスクの外縁での厚みは0.016mです。

現在のシミュレーションでは、熱源の時間関数はUDFで直接定義されています。熱源の時間関数は、時間に伴う事前定義済み速度変化から推測されます。熱源を計算するには、車両の質量、速度プロファイル、および図5に示されているいくつかの実験係数が必要です。

AcuSolveでのシミュレーションオプション

AcuSolveでは、シミュレーションを設定する際に問題の物理特性を表現するためのいくつかの方法が用意されています。これらの方法のいくつかを使用して、ブレーキ-解除のサイクル、およびブレーキディスクと周辺空気の間の相対運動を表現します。

ディスクの回転運動を定義するための1つの方法は、スライディングメッシュ手法を使用することです。この手法では、空間内のブレーキディスクの実際の物理運動がシミュレートされます。ただし、現在の形状では、ディスクの一部しかモデリングされていないため、この手法を使用することはできません。ディスクが回転すると、静止している周辺空気と最終的には接触しなくなります。この状況を定義するための正しいモデリング方法は、移動座標系(MRF)手法を使用する方法です。MRF手法では、ディスクのサーフェスとそれを囲む空気に座標が定義されます。しかし、シミュレーションの実行中にディスク自体は回転しません。

ディスクのサーフェスとそれを囲む空気に使用するMRFの定義では、車両の減速と加速に伴って変化するディスク回転数を考慮する必要があります。このために、図2に示したブレーキ-解除のサイクル曲線と同一になるMultiplier Functionを使用します。

ブレーキ動作に起因するディスク上の熱源は、ユーザー設計関数を使用してシミュレートされます。付属のスクリプトheatSource.cをご参照ください。熱源が適用されるのは、ブレーキがかけられたときのみであり、その対象はパッドがディスクと接触している領域のみです。

先行シミュレーションを使用して、流れに関する数量(シミュレーション領域内の圧力、速度、および渦粘性)の初期状態を生成します。ブレーキをかける前に、車両は60mphの一定速度で走行しているものとします。ブレーキをかける前の温度場は、一様に300Kとみなされます。これは、先行シミュレーションで解析不要です。ただし、ディスク内部の空気はディスクとともに回転しているため、速度場は定常状態の場ではありません。したがって、この先行シミュレーションでは、流体方程式と乱流方程式のみが解析されます。この先行シミュレーションの結果は、precursor_runディレクトリに格納されています。これらの結果は補間され、このシミュレーションの初期流れ場が定義されます。

解析パラメータの定義

AcuConsoleの起動とシミュレーションデータベースの作成

このチュートリアルでは、まずデータベースの作成、形状に依存しない設定の入力、形状の読み込み、ボリュームグループとサーフェスグループの作成、グループパラメータの設定、グループへの形状コンポーネントの追加、およびグループへのメッシュコントロールと境界条件の割り当てを行います。次に、メッシュを生成して、AcuSolveを実行し、指定された時間ステップの数だけ解析します。最後に、AcuProbeAcuFieldViewを使用して結果の一部の特性を可視化します。

次の手順では、AcuConsoleを起動して、シミュレーション設定を保存するためのデータベースを作成します。

  1. Windows のスタートメニューからスタート > Altair <バージョン> > AcuConsoleをクリックして AcuConsoleを起動します。
  2. Fileメニューをクリックし、Newをクリックし、New data baseダイアログを開きます。
    注: ツールバーの をクリックしてNew data baseダイアログを開くこともできます。
  3. 作業ディレクトリとして使用する場所に移動します。
    このディレクトリには、そのシミュレーションに関するすべてのファイルが保存されます。AcuConsoleのデータベースファイル(.acs)はこのディレクトリに保存されます。メッシュと解が作成されたら、追加のファイルとディレクトリがこのディレクトリ内に作成されます。
  4. この場所に新しいディレクトリを作成します。この名前をBrake_Coolingとし、これを開きます。
  5. データベースのFile nameとしてbrake_coolingと入力します。
    注: AcuConsoleによって書き込まれたファイルを他のアプリケーションで読み取り可能にするためには、データベースのパスと名前にスペースが含まれないようにしてください。
  6. 保存をクリックしてデータベースを作成します。

一般的なシミュレーションパラメータの設定

次の手順では、シミュレーション全体に適用されるパラメータを設定します。単純にするため、Data Tree Manager内のBASフィルタを使用して、任意のシミュレーションに適用できる基本的な設定をフィルタできます。このフィルタにより、Data Tree内の使用可能な項目の小さなサブセットのみを表示できるようになり、エントリの移動が容易になります。

  1. Data Tree ManagerBASをクリックして、Data Tree内の基本ビューに切り替えます。


    図 7.
  2. GlobalData Tree項目をダブルクリックして拡張表示します。
    ヒント: 項目名の横にある をクリックしてツリー項目を拡張表示することもできます。


    図 8.
  3. Problem DescriptionをダブルクリックしてProblem Description詳細パネルを開きます。
    注: パネルフレームの右端をドラッグすることで、詳細パネルをデフォルトサイズから広げる必要がある場合があります。
  4. TitleとしてAcuSolve Tutorialと入力します。
  5. Sub titleとしてBrake Cooling MRFと入力します。
  6. Analysis typeをTransientに設定します。
  7. Temperature equationをAdvective Diffusiveに設定します。
  8. Turbulence equationをSpalart Allmarasに設定します。
  9. Radiation equationをEnclosureに設定します。


    図 9.

解法パラメータの設定

次の手順では、解析の進行時にAcuSolveの挙動を制御するパラメータを設定します。

  1. Auto Solution StrategyをダブルクリックしてAuto Solution Strategy詳細パネルを開きます。
  2. Analysis typeがTransientに設定されていることを確認します。
  3. Max time stepsを500に設定します。
  4. Final timeを37.4秒に設定します。
  5. Initial time incrementを0.1秒に設定します。
    非定常解析は、Final timeあるいはMax time stepsに到達することで終了します。
  6. Min stagger iterationsとMax stagger iterationsをそれぞれ24に設定します。
  7. Flow、Temperature、Enclosure radiation、およびTurbulenceフラグがOnに、Temperature flowフラグがOffに設定されていることを確認します。


    図 10.

材料モデルパラメータの設定

AcuConsoleには以下の3つの材料があらかじめ定義されています。標準的パラメータのAir、Aluminum、およびWater。次の手順では、空気の定義済み材料プロパティがこの問題の目的のプロパティと一致することを確認します。その後で、新しいカスタム材料を作成し、関連する材料特性を割り当てます。
  1. Data TreeMaterial Modelをダブルクリックして拡張表示します。


    図 11.
  2. Data TreeAirをダブルクリックしてAir詳細パネルを開きます。

    空気の材料タイプはFluidです。AcuConsoleで作成されるすべての新しい材料に対して、Fluidがデフォルトの材料タイプとなります。

  3. Densityタブをクリックします。空気の密度は1.225kg/m3で、Constantタイプです。
  4. Viscosityタブをクリックします。空気の粘性は1.781 x 10-5 kg/m - secで、Constantタイプです。
  5. 同様に、Specific Heat and Conductivityタブをチェックして、値が次のようになっていることを確認します。
    1. Specific Heat:1005.0 J/kg-K
    2. Conductivity:0.02521 W/m-K
    3. Turbulent Prandtl number:0.91
  6. データベースを保存して設定のバックアップを作成します。これは、次のいずれかの方法で実行できます。
    • Fileメニューをクリックして、Saveをクリックします。
    • ツールバーの をクリックします。
    • Ctrlキーを押しながらSを押します。
    注: AcuConsoleで加えられた変更は、直ちにデータベースファイル(.acs)に保存されます。保存操作を実行すると、データベースがバックアップファイルにコピーされます。今後の変更内容を利用することを希望しない場合は、このバックアップファイルを使用して、その保存済み状態からデータベースを再読み込みすることができます。
  7. Data TreeMaterial Modelを右クリックし、表示されたコンテキストメニューからNewを選択します。
    新しいエントリMaterial Model 1がData TreeのMaterial Model分岐の下に作成されます。
  8. 材料モデルの名前を変更します。
    1. Material Model 1を右クリックします。
    2. コンテキストメニューからRenameを選択します。
    3. 材料名としてDisc Steelと入力します。
    4. Enterキーを押します。
      注: Data Tree内の項目の名前を変更した場合、Enterが押されるまでは変更内容は保存されません。Enterキーを押さずに入力フォーカスをその項目から移動すると、変更内容は失われます。
  9. Data TreeDisc Steelをダブルクリックして材料詳細パネルを開きます。
    Material typeがFluidとしてリストされます。AcuConsoleで作成されるすべての新しい材料に対して、これがデフォルトタイプになります。
  10. Material typeドロップダウンセレクターをクリックし、表示されたリストからSolidを選択します。
  11. 詳細パネルの各タブを移動しながら、Disc Steelの材料特性を次のように設定します。
    1. Density:7200 kg/m3
    2. Specific Heat:537.0 J/kg-K
    3. Conductivity:45.0 W/m-K
  12. データベースを保存して設定のバックアップを作成します。

形状のインポートとモデルの定義

形状のインポート

このチュートリアルの次のパートでは、形状をインポートします。この手順を完了するには、 brake_disc_partial.x_t の場所がわかっている必要があります。このファイルには、ParasolidASCII形式で形状に関する情報が含まれています。
  1. File > Importをクリックします。
  2. brake_disc_partial.x_tを含むディレクトリを参照します。
  3. ファイル名のフィルタをParasolid File (*.x_t *.xmt *X_T …)に変更します。
  4. brake_disc_partial.x_tを選択し、OpenをクリックしてImport Geometryダイアログを開きます。


    図 12.

    このチュートリアルでは、Import Geometryダイアログのデフォルト値を使用して形状を読み込みます。AcuConsoleを使用していた場合は、自身が変更した可能性のある設定を手動で変更して、図に示すデフォルト値と一致させてください。デフォルト設定を使用した場合は、CADモデルのボリュームはデフォルトのボリュームグループに追加されます。CADモデルのサーフェスはデフォルトのサーフェスグループに追加されます。このチュートリアルでは後ほどグループを操作して、新しいグループの作成、流れパラメータの設定、形状コンポーネントの追加、およびメッシングパラメータの設定を行います。

  5. OKをクリックして形状のインポートを完了します。
  6. 表示を回転してモデル全体を確認します。


    図 13.

    このチュートリアルでモデリングウィンドウに表示されるオブジェクトの色と、ユーザーの画面に表示されるオブジェクトの色は異なる場合があります。AcuConsoleのデフォルト配色は“ランダム”であり、作成されたグループに色がランダムに割り当てられます。また、このチュートリアルはWindows上で作成されました。このチュートリアルを異なるオペレーティングシステムで実行する場合は、画面に表示されるイメージとこのチュートリアルで表示されるイメージが多少異なる可能性があります。

移動座標系のMultiplier Functionの作成

このチュートリアルの冒頭で述べたとおり、このチュートリアルでは反復ブレーキのシナリオをシミュレートします。シミュレーションは、ブレーキがかけられた瞬間に開始されます。車両の初期速度は60mphであり、これは400rpmというディスクローター速度に対応しています。シミュレーション全体にわたって、車両は速度が0になるまで減速された後に、再び60mphまで加速されます。このブレーキ-解除のサイクル全体がもう一度繰り返されます。AcuConsoleでは、この挙動はMultiplier Functionを使用して表現されます。このMultiplier Functionは後で移動座標系の定義に割り当てられ、この移動座標系によって最終的にディスクの運動が制御されます。

  1. Data Tree ManagerPB*をクリックして、Data Tree内の一般的な問題設定に関連する使用可能なすべての設定を表示します。
  2. Multiplier Functionを右クリックし、コンテキストメニューからNewを選択します。
  3. 新たに作成したMultiplier Functionの名前をMRF_Multiplierに変更します。
    新規の名前を入力したら、必ずEnterを押してください。
  4. MRF_Multiplierをダブルクリックして詳細パネルを開きます。詳細パネルで、
    1. TypeをPiecewise Linearに変更します。
    2. Curve fit variableをTimeに設定します。
    3. Curve fit valuesの横にあるOpen Arrayボタンをクリックします。
    4. Array Editorダイアログで、Addボタンをクリックして5つの行を作成します。
    5. 次のように値を入力します。


      図 14.
    6. OKをクリックし、ダイアログを閉じます。

空気とディスクの放射率モデルの作成

ここでは、空気とディスクの放射率モデルを作成および定義します。このモデルは、放射サーフェスの定義に使用されます。

  1. Data Tree ManagerRADをクリックし、Data Tree内の放射関連設定以外のすべてをフィルタします。
  2. Data TreeEmissivity Modelを右クリックし、コンテキストメニューからNewを選択します。
    Emissivity Model 1という新しいエントリがData TreeのEmissivity Model分岐の下に作成されます。
  3. 上記手順を繰り返して、Emissivity Model 2というもう1つのエントリを作成します。
  4. Emissivity Model 1の名前を変更します。
    1. Emissivity Model 1を右クリックします。
    2. コンテキストメニューからRenameを選択します。
    3. モデル名としてDisc Steelと入力します。
    4. Enterキーを押します。
  5. 同様に、Emissivity Model 2の名前をAirに変更します。
  6. Disc Steelをダブルクリックしてモデルの詳細パネルを開き、Emissivityを0.75に設定します。
  7. 同様に、AirのEmissivityを0.05に設定します。

移動座標系の定義

ここでは、移動座標系を作成および定義します。この移動座標系は、後で回転をシミュレートするためのディスクサーフェスと内側の空気ボリュームに割り当てます。前の項で定義したMultiplier Functionをこの移動座標系に割り当て、車両の加速時と減速時のディスク速度の変化を表現します。

  1. Data Tree ManagerALLをクリックして、Data Tree内のすべての設定を表示します。
  2. Reference Frameを右クリックし、Newを選択します。
  3. 新たに作成した移動座標系の名前をDisc_MRFに変更します。
    新規の名前を入力したら、必ずEnterを押してください。
  4. Disc_MRFをダブルクリックして詳細パネルを開きます。
  5. Rotation centerの横のOpen Arrayボタンをクリックして、回転中心のx、y、z座標が(0, 0, 0)であることを確認します。
  6. Angular velocityの横のOpen Arrayボタンをクリックします。開かれたダイアログボックスで、次の手順を実行します。
    1. 単位セレクターをRPMに変更します。


      図 15.
    2. Y-component行に400と入力します。
    3. OKをクリックし、ダイアログを閉じます。
  7. Multiplier functionをMRF_Multiplierに設定します。これは、以前の手順で作成した関数です。
    シミュレーションの進行に伴い、移動座標系のrpm値(400rpm)が、各時間ステップにおいてMRF_Multiplier関数によって与えられる乗数の瞬時値で乗算されます。したがって、Multiplier Functionが1に評価される時間0においては、ディスクのrpmは400になります。rpmは乗数に従って、その後の2.8秒で0まで線形に減少した後、再び400まで増大するというサイクルを繰り返します。

ボリュームパラメータの適用

ボリュームグループは、ボリューム領域に関する情報を保存するためのコンテナです。これらの情報には、そのコンテナに関連付けられた形状ボリュームのリストや、材料モデルやメッシュサイズ情報などの属性が含まれます。

形状がAcuConsoleにインポートされたときに、すべてのボリュームは“デフォルトの”ボリュームコンテナに配置されました。

次の手順では、モデル内のボリュームごとにボリュームグループを作成し、ボリュームをそれぞれのボリュームグループに割り当て、デフォルトボリュームグループコンテナの名前を変更し、ボリュームグループごとに材料とその他の特性を設定します。

シミュレーションの設定プロセスにおいて、特に、サーフェスが非常に多いモデルの場合、複雑になりがちな材料モデル、境界条件やメッシュパラメータなどを設定するため、別のパネルに移動する必要があります。これを簡単にして、エラーを減らし、時間を節約するために、AcuConsoleでは2つの新しいダイアログが追加されています。これらのダイアログを使用すれば、すべてのサーフェスまたはボリュームエンティティに関する情報を一度に確認したり、指定することができます。これらのダイアログはVolume ManagerSurface Managerです。ここでは、Volume Managerのいくつかの機能を利用します。

  1. Data Tree ManagerBASをクリックして、Data Tree内の基本ビューに切り替えます。
  2. ModelData Tree項目を拡張表示します。
  3. Surfacesを右クリックして、Display offを選択することにより、サーフェスの表示をオフにします。
  4. Volumesを拡張表示します。ボリューム名の横にある をクリックして、デフォルトボリュームコンテナの表示のオン / オフを切り替えます。
    注: Surfacesが表示されている場合は、サーフェスとボリュームが重なっている可能性があるため、表示を切り替えても何も変わらないことがあります。
  5. Volumesを右クリックして、Volumes Managerを選択します。
  6. Volume Manager DialogColumnsをクリックし、リストからMediumを選択し、Okをクリックします。


    図 16.
  7. Newを2回クリックして新規のボリュームグループを2つ作成します。
  8. デフォルトボリューム以外のすべてのボリュームの表示をオフにします。
  9. デフォルトボリュームの名前をdiscに設定し、Volume 1をinner_airに、Volume 2をouter_airに設定します。
  10. 以下の表に示すよう、ボリュームグループのMedium、Material Model、および Reference Frameを設定します。


    図 17.
    注: すべてのカラムを表示するためには、ダイアログの拡大が必要となることがあります。
  11. それぞれのボリュームをボリュームグループに割り当てます。
    1. inner_airの行のAdd toをクリックします。
    2. 下の図に示すボリュームを選択して、Doneをクリックします。


      図 18.
    3. outer_airの行のAdd toをクリックし、下の図に示すボリュームを選択して、Doneをクリックします。


      図 19.
    4. 形状がAcuConsoleに読み込まれたときに、形状ボリューム全体がデフォルトボリュームグループに配置されました。ボリュームグループ名はdiscに変更され、この時点では、ブレーキのローターディスクを構成するすべてはdiscボリュームグループに残されたままです。


      図 20.
  12. Volume Manager Dialogダイアログを閉じます。

サーフェスグループの作成とサーフェスパラメータの適用

サーフェスグループは、サーフェスに関する情報を保存するためのコンテナです。この情報には、解析およびメッシングパラメータや、パラメータが適用される形状内の対応するサーフェスが含まれます。

次の手順では、サーフェスグループを定義して、問題のさまざまな特性に適切な設定を割り当て、これらのグループコンテナにサーフェスを追加します。

前の項では、ボリュームグループの基本的なパラメータをすばやく確認および設定するためのVolume Managerを紹介しました。ここでは、Surface Managerのいくつかの機能を利用します。

  1. Volumesを右クリックして、Display offを選択することにより、Volumesの表示をオフにします。
  2. Data TreeSurfacesを拡張表示し、デフォルトのサーフェスコンテナーの表示をオンにします。
  3. Surfacesを右クリックして、Surface Managerを選択します。
  4. Surface Manager Dialogダイアログで、Newを7回クリックし、7つの新しいサーフェスグループを作成します。
  5. Simple BC Active列とSimple BC Type列が表示されていない場合は、Columnsをクリックして、リストからこの2つの列を選択し、Okをクリックします。
  6. デフォルトサーフェス以外のすべてのサーフェスの表示をオフにして、デフォルトサーフェスの名前をdisc_surfに変更します。
  7. 下の表のように、他のサーフェスの名前を変更して、Simple BC Active列とSimple BC Type列を設定します。


    図 21.
  8. サーフェスをそれぞれのサーフェスグループに割り当てます。
    1. symm_air_2の行のAdd toをクリックします。
    2. 下の図に示す2つのサーフェスを選択して、Doneをクリックします。
      図 22.
    3. symm_disc_2の行のAdd toをクリックします。
    4. 下の図に示すサーフェスを選択して、Doneをクリックします。


      図 23.
    5. 領域の反対側の対応するサーフェスをそれぞれsymm_air_1グループとsymm_disc_1グループに割り当てます。
    6. 下の図に示すように、形状の残りの周辺サーフェスをambientサーフェスグループに割り当てます。


      図 24.
    7. inner_outer_interfaceのサーフェスを割り当てます。これらは、inner_airボリュームとouter_airボリュームが合わさるサーフェスです。これらのサーフェスは互いに重なり合うことに留意してください。これらのサーフェスセットの1つは、inner_airボリュームに属することになり、もう1つのサーフェスセットはouter_airボリュームに属することになります。この重なり合いにより、同じサーフェスグループのように見える可能性があるものについて、この手順を2回繰り返す必要が生じることがあります。ただし、これらは2つの異なるサーフェスセットです。


      図 25.
    8. inner_disc_interfaceのサーフェスを割り当てます。これらは、inner_airボリュームがdiscボリュームと接触するサーフェスです。これらのサーフェスは、discボリュームに属する別のサーフェスセットと重なり合うことに留意してください。ただし、前の手順とは異なり、選択する必要があるのは、このサーフェスグループのinner_airボリューム側のサーフェスのみです。


      図 26.
    9. 形状がAcuConsoleに読み込まれたときに、すべての形状サーフェスはデフォルトサーフェスグループに配置されました。そのサーフェスグループの名前はdisc_surfに変更されました。この時点で、残っているのはdisc_surfサーフェスグループのみで、これがdiscボリュームの境界サーフェスを構成します。

サーフェスパラメータの割り当て(境界条件)

次の手順では、シミュレーション全体に適用されるサーフェス境界条件を設定します。設定を簡素化するため、Data Tree Manager内のBC フィルタを使用して、任意のシミュレーションに適用可能な基本的な境界条件をフィルタできます。ただし、このチュートリアルでは、境界条件を指定するためのより高度なAcuConsoleの機能をいくつか使用します。

Data Tree ManagerALLをクリックして、Data Tree内のすべての設定を表示します。

inner_outer_interface, inner_disc_interface, symm_air_1, symm_air_2, symm_disc_1, symm_disc_2

Data Tree内のこれらサーフェスグループをそれぞれ拡張表示し、Surface Boundary Conditionオプションが有効になっていないこを確認します。

ambient

  1. Data Treeで、ambientサーフェスグループを拡張表示します。
  2. Simple Boundary Conditionをダブルクリックして、Simple Boundary Condition詳細パネルを開きます。
  3. TypeがWallに設定されていることを確認します。
  4. Temperature BC typeをValueに設定します。
  5. Temperatureの値を300Kに設定します。


    図 27.
  6. ambientの下のRadiation Parametersをダブルクリックしてradiation detail パネルを開きます。
  7. Activateフラグがオフになっている場合はこれをOnにします。
  8. TypeをOpeningに設定します。
  9. Emissivity modelをAirに設定します。
  10. Opening temperatureを300Kに設定します。


    図 28.

disc_surf

  1. Data Treeで、disc_surfサーフェスグループを拡張表示します。
  2. Surface Boundary Conditionオプションが有効になっていないのを確認します。
  3. disc_surfの下のRadiation Surfaceをダブルクリックしてradiation detail パネルを開きます。
  4. Activateフラグがオフになっている場合はこれをOnにします。
  5. TypeをWallに設定します。
  6. Emissivity modelをDisc Steelに設定します。
  7. その他すべてのデフォルト設定を受け入れます。


    図 29.
  8. disc_surfの下のAdvanced Optionsツリーを拡張表示します。
  9. Turbulence Wallをダブルクリックして詳細パネルを開きます。
  10. Activateフラグがオフになっている場合はこれをOnにします。
  11. TypeをWall Functionに設定します。
  12. Advanced Optionsの下のNodal Boundary Conditionsツリーを拡張表示します。
  13. X-Velocityをダブルクリックして詳細パネルを開きます。
  14. Activateフラグがオフになっている場合はこれをOnにします。
  15. Reference frameをDisc_MRFに設定します。


    図 30.
  16. Y-VelocityおよびZ-Velocityに対し、上記3つのステップを繰り返します。
  17. Eddy Viscosityをダブルクリックします。
  18. Activateフラグがオフになっている場合はこれをOnにします。デフォルト設定のままにします。

ディスクへの熱伝達パラメータの適用

このチュートリアルの冒頭で述べたとおり、ユーザー定義関数を使用してディスク上の熱源を定義します。heatSource.cスクリプトに含まれているusrDiscHeatSource関数を使用して、ブレーキ動作に起因する熱源に対応するディスクサーフェス上の熱流束を割り当てます。また、放射熱流束パラメータもディスクに適用します。

  1. disc_surfサーフェスグループのAdvanced Optionsで、Element Boundary Conditionsツリーを拡張表示します。
  2. Heat Fluxをダブルクリックして詳細パネルを開きます。
  3. Activateフラグがオフになっている場合はこれをOnにします。
  4. TypeをUser Functionに設定します。
  5. User function nameとして、usrDiscHeatSourceと入力します。


    図 31.
  6. Radiation Heat Fluxをダブルクリックして詳細パネルを開きます。
  7. Activateフラグがオフになっている場合はこれをOnにします。
  8. TypeをConstantに設定します。
  9. Constant valueを4.2525e-008W/m2-K4に設定します。
  10. Reference temperatureを300Kに設定します。


    図 32.

周期境界条件の設定

サーフェスグループsymm_air_1およびsymm_air_2は、ディスクの回転軸を中心にした軸対称の周期性を有する周期的サーフェスグループです。同様に、サーフェスグループsymm_disc_1およびsymm_disc_2も周期的です。これらの周期的サーフェスペアの間でメッシュを適合させるには、周期的境界条件を定義して、メッシュの作成前に節点をペアリングする必要があります。その後に作成されるメッシュは周期的になります。

  1. Data Tree ManagerBASをクリックして、Data Tree内の基本ビューに切り替えます。
  2. Data TreePeriodicsを右クリックして、Newを選択します。
  3. 上記手順を繰り返して、Periodic 2というもう1つのエントリを作成します。
  4. Periodic 1の名前をperiodicity_discに変更します。
  5. Periodic 2の名前をperiodicity_airに変更します。
  6. periodicity_discを右クリックして、Defineを選択します。
  7. 表示されるダイアログで、次の条件を設定します。
    1. Side 1: symm_disc_1
    2. Side 2: symm_disc_2
    3. Type: Rotational
    4. Point 1 (x, y, z): (0, 0, 0)
    5. Point 2 (x, y, z): (0, 1, 0)
    6. Angle: 45
    7. Tolerance: 0.001


    図 33.
  8. 同様に、periodicity_airを次のように定義します。


    図 34.
  9. データベースを保存して設定のバックアップを作成します。

節点出力の定義

節点出力コマンドは、出力頻度や保存されている状態の数などの節点出力パラメータを指定します。

  1. Outputツリーを拡張表示してから、Nodal Outputをダブルクリックして、Nodal Output詳細パネルを開きます。
  2. Time step frequencyを1に設定します。
    これにより、時間ステップごとに節点出力が保存されます。
  3. Output initial conditionをOnに設定します。
    これにより、初期状態を最初の出力ファイルとして書き込むようにソルバーに指示されます。
  4. Number of saved statesオプションが0に設定されていることを確認します。
    このオプションを0に設定すると、すべての結果ファイルを保存するようにソルバーに指示されます。


    図 35.
    .

時刻歴出力ポイントの作成

Time history outputコマンドを使用すれば、領域内の任意の点の節点解を抽出することができます。このシミュレーションでは、ブレーキがかかりそれが解除される際のパッド接触領域内のディスク上の点の温度を確認します。

  1. Outputツリーを拡張表示して、Time History Outputを右クリックし、Newを選択します。
  2. Time History Output 1をMonitorPointに変更します。
    新規の名前を入力したら、必ずEnterを押してください。
  3. MonitorPointをダブルクリックします。詳細パネルで、
    1. TypeをCoordinatesに変更します。
    2. Coordinatesの横にあるOpen Arrayをクリックして、Array Editorダイアログ内の値を次のように更新します。


      図 36.
    3. Time step frequencyを1に設定します。
      これにより、時間ステップごとに定義された時刻歴ポイントの結果が保存されます。
  4. データベースを保存して設定のバックアップを作成します。

メッシュコントロールの割り当て

グローバルメッシュ属性の設定

問題全体に対して流体特性を設定したので、十分に細分化されたメッシュを生成する必要があります。

グローバルメッシュ属性は、特定の形状ボリューム、サーフェス、エッジ、およびポイントに参照されるのではなく、モデル全体に適用されるメッシングパラメータです。モデルの特定の形状コンポーネントのメッシュ生成コントロールを作成するには、ローカルメッシュ属性を使用します。

次の手順では、グローバルメッシュ属性を設定します。

  1. データツリーマネージャーMSHをクリックして、Data Tree内の設定をフィルタ処理して、メッシングに関するコントロールのみを表示します。
  2. GlobalData Tree項目をダブルクリックして拡張表示します。
  3. Global Mesh AttributesをダブルクリックしてGlobal Mesh Attributes詳細パネルを開きます。
  4. Mesh size typeをAbsoluteに変更します。
  5. Absolute mesh sizeに0.1を入力します。


    図 37.

サーフェスメッシュパラメータの設定

サーフェスメッシュ属性は、モデル内の特定のサーフェスに適用されます。これは、1つまたは複数の特定のサーフェスのためのメッシュコントロールの作成に使用される、ローカルメッシングパラメータの一種です。

サーフェスメッシュ属性などのローカルメッシュ属性は必ずしも設定する必要ありません。あるコンポーネント用のローカルメッシュ属性が見つからなかった場合は、グローバル属性がそのコンポーネントのメッシュ生成コントロールとして使用されます。ローカルメッシュ属性が存在する場合は、グローバル設定より優先されます。

次の手順では、サーフェスメッシング属性を設定します。

  1. Data TreeModelを拡張表示してから、Surfacesを拡張表示します。
  2. Surfacesの下のinner_disc_interfaceサーフェスグループを拡張表示します。
  3. inner_disc_interfaceの下のSurface Mesh AttributesをダブルクリックしてSurface Mesh Attributes詳細パネルを開きます。
  4. Activateフラグがオフになっている場合はこれをOnにします。
  5. Mesh size typeがAbsoluteに設定されていることを確認します。
  6. Absolute mesh sizeに0.005mと入力します。
  7. Region of influence parametersフラグをOnに切り替えます。

    影響領域は、サーフェスからの距離に基づいて、サーフェスとサーフェスを囲んでいるボリュームメッシュのサイズと成長率を制御可能なサイズコントロールです。

  8. Influence size factorを1.5に設定します。
  9. Influence distanceを0.03に設定します。
  10. Boundary layer flagをOnに切り替えます。
  11. Boundary layer typeがFull Controlに設定されていることを確認します。
  12. ResolveをTotal Layer Heightに設定します。
    これにより、指定した他の設定に基づいて合計層高さが設定されます。
  13. 残りの設定を次のように設定します:
    1. First element height:0.001
    2. Growth rate:1.2
    3. Number of layers:4
    4. Boundary layer elements type:Tetrahedron
  14. Boundary layer propagate flagをOnに設定します。


    図 38.
  15. 同様に、disc_surf usingのSurface Mesh Attributesを以下のように設定します。


    図 39.

メッシュの生成

次の手順では、問題の解を計算する際に使用されるメッシュを生成します。

  1. ツールバーの をクリックしてLaunch AcuMeshSimダイアログを開きます。
    このケースでは、デフォルトの設定を使用します。
  2. Okをクリックしてメッシングを開始します。

    メッシング時に、AcuTailウィンドウが開きます。メッシングの進行状況はこのウィンドウで報告されます。メッシングプロセスのサマリーで、メッシュが生成されたことが示されます。



    図 40.
    注: 節点と要素の実際の数およびメモリ使用量は、マシンによって少し異なる場合があります。
  3. モデリングウィンドウにメッシュを表示します。サーフェスの表示をオンにして、display typeをsolid and wireに設定します。
  4. さまざまなメッシュ領域を解析するには、モデル内で回転やズームを行います。

解の計算と結果の確認

初期状態の設定

以前の項で述べたとおり、先行シミュレーションの結果を使用してこのケースの初期状態を定義します。次の手順では、AcuProjユーティリティを使用して、使用可能な結果を現在のメッシュに投影します。

  1. メニューバーからTools > Project Solutionの順に選択します。
  2. 表示されるAcuSolve solution projectionダイアログで、AcuSolve log file欄の横のBrowseをクリックします。
  3. 投影する解が含まれたprecursor_runディレクトリに移動します。
  4. このディレクトリからbrake_cooling.1.Logを選択します。
  5. Openをクリックします。
  6. AcuSolve solution projectionダイアログで、Step idが29であることを確認します。
  7. Variables to project欄で、すべての使用可能な変数を選択します(velocity、pressure、eddy_viscosity)。
    Shiftキーを押したままリストの一番上と一番下をクリックすると、すべての変数を選択できます。


    図 41.
  8. Projectをクリックしてから、Closeをクリックします。
    上記の設定により、圧力、速度、および渦粘性の各場の初期状態が設定されます。先行実行では温度場のデータを得られないため、これは手動で設定する必要があります。
  9. Data Tree ManagerBASをクリックして、Data Tree内の基本ビューに切り替えます。
  10. Data Treeで、Globalの下のNodal Initial Conditionをダブルクリックします。
  11. 詳細パネルで、Temperature initial condition typeをConstantに、Temperatureを300Kに設定します。
  12. データベースを保存して設定のバックアップを作成します。

UDFのコンパイル

C言語で書かれたUDF(heatSource.c)がチュートリアルに付属しています。次の手順に従って、このCプログラムをコンパイルする必要があります。

コンパイルに必要なユーティリティは、WindowsおよびUnixオペレーティングシステムでは異なります。お使いのシステムに応じて以下のステップを実行してください。
  1. Windows用のUDFのコンパイル:
    1. Start > All Programs > Altair HyperWorks <version> > AcuSolve > AcuSolve Cmd Promptの順にクリックして、WindowsのスタートメニューからAcuSolve コマンドプロンプトを起動します。
    2. cdコマンドを使用して、ディレクトリを現在の作業ディレクトリに変更します。
    3. プロンプトに以下のコマンドを入力します:

      acuMakeDll –src heatSource.c

  2. Unixオペレーションシステム用のUDFのコンパイル:
    1. 端末で、cdコマンドを使用して、ディレクトリを現在の作業ディレクトリに変更します。
      注: 新しいターミナルを開く場合は、先に進む前にAcuSolveビルドをSourceコマンドで実行してください。
    2. プロンプトに以下のコマンドを入力します:

      acuMakeLib –src heatSource.c

    コンパイルが完了すると、UDFの読み取りと処理のためのAcuSolveに必要な一連のファイルが作成されます。

AcuSolveの実行

次の手順では、AcuSolveを起動してこのケースの解を計算します。

  1. ツールバーでをクリックしてLaunch AcuSolveダイアログを開きます。
  2. Okをクリックして解析プロセスを開始します。

    計算中、AcuTailウィンドウが開きます。解析の進行状況はこのウィンドウで報告されます。解析プロセスのサマリーで、実行が完了したことが示されます。

    このサマリーで提供される情報は、AcuSolveで使用されるプロセッサの数に基づいています。このチュートリアル内で示されている数と異なる数のプロセッサを使用した場合は、示されているサマリーと実行時のサマリーが少し異なる場合があります。



    図 42.
  3. AcuTailウィンドウを閉じ、データベースを保存して設定のバックアップを作成します。

AcuProbeでのポスト処理

AcuProbeを使用して、解析時間におけるさまざまな変数をモニターできます。

  1. ツールバーの アイコンをクリックして、AcuProbeを開きます。
  2. 左側のData Treeで、Time History > MonitorPoint > node 1の順に選択します。
  3. temperatureを右クリックし、Plotを選択します。
    これは、時刻履歴出力点として定義した点における温度の解析の過程での変化をプロットします。
    注: プロットを正しく表示するために、ツールバーで をクリックする必要がある場合があります。


    図 43.

    この出力点における温度プロファイルは、予想される挙動に従います。次の制動サイクルが始まる前にディスクが完全に冷却されないことが分かり、したがって、到達する最高温度はサイクルごとに上昇することになります。

  4. プロットを画像として保存することもできます。
    1. AcuProbeダイアログで、File > Saveをクリックします。
    2. 画像の名前を入力して、Saveをクリックします。
  5. 変数の時系列データをテキストファイルとしてエクスポートして、さらにポスト処理することもできます。
    1. エクスポートする変数を右クリックして、Exportをクリックします。
    2. File nameを入力して、Save as typeに.txtを選択します。
    3. Saveをクリックします。

AcuFieldViewでの結果の表示

前提条件

本チュートリアルは、AcuFieldViewのインターフェースと基本的な操作に慣れていることが前提となっています。本チュートリアルは、一般に次の基本事項の理解に役立ちます:

  • メインメニューのFileプルダウンでデータリーダーを検索し、データ入力のための目的のリーダーパネルを開く方法。
  • サイドツールバーまたはメインメニューのVisualizationパネルプルダウンから表示パネルを検索し、AcuFieldViewでサーフェスを作成および変更する方法。
  • マウスアクションを使用してグラフィックスウィンドウでデータを動かし、データの移動、回転、およびズームを行う方法。

このチュートリアルでは、非定常解析データの操作方法を示します。

AcuFieldViewの起動

  1. AcuConsoleツールバーで をクリックしてLaunch AcuFieldViewダイアログを開きます。
  2. OkをクリックしてAcuFieldViewを起動します。
    温度コンターがメッシュを含むすべての境界サーフェス上に表示されていることが確認できます。AcuConsoleからAcuFieldViewを起動するときには、ディスクに書き込まれた、解析の最後の時間ステップの結果が、ポスト処理のために読み込まれます。

AcuFieldViewの設定

  1. Boundary Surfaceダイアログを閉じます。
  2. Viewer Optionsをクリックします。


    図 44.
  3. Viewer Optionsダイアログで:
    1. Perspectiveを選択解除して、遠近法表示をオフにします。
    2. Axis Markersをクリックして、 軸マーカーを無効にします。
    3. Closeをクリックします。
  4. ツールバーで、Colormapアイコン をクリックします。
  5. Scalar Colormap SpecificationダイアログでBackgroundをクリックし、Whiteを選択します。
  6. Scalar Colormap Specificationダイアログを閉じます。
  7. ツールバーでToggle Outlineアイコン をクリックし、輪郭表示をオフにします。
    画面は次のようになります。


    図 45.

時間による温度の変化の可視化とアニメーションの保存

  1. をクリックしてBoundary Surfaceダイアログを開きます。
  2. Boundary TypesリストでOSF: disc_surfを選択し、OKをクリックします。
  3. ColoringをScalarに変更します。
  4. Display TypeをSmoothに変更します。
  5. Show Meshチェックボックスを無効にします。
  6. ツールバーでをクリックし、Defined Viewsダイアログを開きます。
  7. -Yを選択し、Closeをクリックします。
  8. Boundary SurfaceダイアログのColormapタブで、Localチェックボックスを有効にします。
  9. LegendタブでShow Legendチェックボックスを有効にします。
  10. ラベルの色を黒に変更します。
    画面は次のようになります。表示されるディスクサーフェス上の温度プロファイルは、シミュレーション内の最後の時間ステップ時点でのプロファイルです。
    注: モデルの表示率や表示位置を調整し、以下に示すように表示します。


    図 46.
  11. Boundary Surfaceダイアログを閉じます。
  12. Toolsメニューで、Flipbook Build Modeを選択します。Flipbook Size WarningウィンドウでOKをクリックします。
  13. Toolsメニューに再び戻り、Transient Dataを選択します。
    Transient Data Controlsダイアログが開かれます。


    図 47.

    このダイアログのSweep ControlにBuildではなくSweepが表示された場合は、Flipbook Buildモードがアクティブになっていません。Sweepモードでは、アニメーションを作成して表示できますが、それを保存できません。アニメーションを保存するには、Flipbook Buildモードを有効にします。

  14. 時間ステップスライダーを左端の位置までドラッグします。または、Time StepボックスかSolution Timeボックスに0と入力します。Applyをクリックします。
    現在表示されている状態は、このセットアップの初期化に使用されるprecursor_runディレクトリから投影されたソリューションによって定義される領域の初期状態に対応します。投影されたソリューションには温度データが含まれていないため、温度初期状態は一定値です。
  15. Buildをクリックします。
    AcuFieldViewが、可能なすべての時間ステップを経過する解析のフレーム単位アニメーションを構築します。Building Flipbookダイアログで進捗を確認することができます。構築プロセスが完了すると、Flipbook Controlsダイアログが表示されます。
  16. をクリックしてアニメーションを再生します。
    アニメーションが進行するにつれて、ディスク表面上の温度の変化を時間とともに見ることができます。ブレーキが踏み込まれている間に温度が上昇し、ブレーキが解除されると、ブレーキが再びかかる前にディスクがゆっくりと冷却されます。このサイクルが繰り返されます。
  17. アニメーションを保存するには、 をクリックしてから、Saveをクリックします。

要約

このAcuSolveチュートリアルでは、ディスクブレーキシミュレーション問題を正しく設定して解析しました。チュートリアルは、AcuConsoleでデータベースを作成し、シミュレーションのパラメータを設定して、形状をインポートおよびメッシングすることから始めました。移動座標系の手法とMultiplier Functionを組み合わせて使用して、車両内のブレーキ-解除のサイクルをモデリングしました。ケースが設定されると、AcuSolveを使用して解が生成されました。AcuProbeを使用して、シミュレーション中のディスクサーフェス上のモニターポイントの温度変化を可視化しました。次にAcuFieldViewを使用して、シミュレーション中のディスク上の温度プロファイルのアニメーションを作成しました。