ACU-T:4201 結露と蒸発 - 空気ボックス

前提条件

このチュートリアルでは、湿度モデルを使用して閉じられた空気ボックスの過渡シミュレーションを実行する手順を説明します。このチュートリアルを実行する前に、HyperWorksの入門チュートリアルであるACU-T:1000 HyperWorksユーザーインターフェースをすでに完了し、およびAcuSolveの基本を理解しているものとします。この解析を実行するには、ライセンス供与済みバージョンのHyperMeshAcuSolveにアクセスできる必要があります。

このチュートリアルを実行する前に、HyperMesh_tutorial_inputs.zip<Altair_installation_directory>\hwcfdsolvers\acusolve\win64\model_files\tutorials\AcuSolveから作業ディレクトリにコピーします。 ACU-T4201_Air_Box.hm HyperMesh_tutorial_inputs.zipから取り出します。

HyperMeshデータベース(.hm ファイル)には、メッシュとジオメトリが含まれています。このチュートリアルには、ジオメトリのインポートおよびメッシュ生成に関する手順は含まれていません。

問題の説明

このチュートリアルで扱う問題は、図 1に図示しています。ここでは、例として閉じられた空気ボックスの問題を取り上げて、AcuSolveを使用した湿度モデリング(結露と蒸発)の機能を確認します。主な目標は、相対湿度が70%である空気領域内で、温度変化に起因する底壁サーフェス上の水蒸気の蓄積と消失をシミュレートし、数値化することです。


図 1.
この領域では、空気が特定レベルの湿度にあると想定します。結露、蒸発、相対湿度、温度はすべて、露点温度に関係します。サーフェス温度が低下して露点温度を下回ると、その時点から結露が蓄積し始め、最終的に100%に達します。逆にサーフェス温度が上昇して露点に再び達すると、結露は蒸発し始めます。次の図では、結露と蒸発の全体的な定義を示しています。


図 2.

上のプロットから、空気ボリュームの初期温度は297.15Kに設定されていることがわかります。底壁の温度は、1秒間で285.13Kに低下し、1秒間285.13Kを保ち、1秒間で元の297.15Kまで上昇しています。70%の相対湿度における空気の露点温度は291.14Kであり、0.5秒と2.5秒の時点で露点温度に達しています。全体的に見ると、前述のとおり、露点温度に達したときに、結露と蒸発の両方が発生していることがわかります。

HyperMeshモデルデータベースを開く

  1. HyperMeshを起動し、AcuSolveのユーザープロファイルを読み込みます。
    User ProfilesからAcuSolveを選択する方法については、HyperMeshの入門チュートリアルACU-T:1000 HyperWorksユーザーインターフェースをご参照ください。
  2. 標準ツールバーのOpen Modelアイコン をクリックします。
    Open Modelダイアログが開きます。
  3. モデルファイルの保存先ディレクトリを参照します。HyperMeshファイルのACU-T4201_Air_Box.hmを選択してOpenをクリックします。
  4. File > Save Asをクリックします。
    Save Model Asダイアログが開きます。
  5. 名前をAir_Box_Humidityとして新しいディレクトリを作成し、このディレクトリへ移動します。
    このディレクトリが作業ディレクトリになり、シミュレーションに関連するすべてのファイルがこの場所に保存されます。
  6. データベースのファイル名としてAir_Boxと入力するか、別の名前を入力します。
  7. 保存をクリックしてデータベースを作成します。

一般的なシミュレーションパラメータの設定

  1. Solverブラウザに移動して01.Globalを拡張表示し、PROBLEM_DESCRIPTIONをクリックします。
  2. Entity Editorで、TitleとしてAir Boxと入力します。
  3. Analysis typeをTransientに設定します。
  4. Abs. pressure offsetを101325に設定します。
  5. Temperature equationをAdvective Diffusiveに変更します。
  6. Turbulence ModelをSpalart Allmarasに設定します。
  7. Humid Air ModelをOnに切り替えます。
    これにより、Multiphase equationがAdvective Diffusiveに自動的に変更されます。
  8. Global Gravityのパラメータを下図のとおりに設定します。


    図 3.
  9. Solverブラウザで、01.Globalの下の02.SOLVER_SETTINGSをクリックします。
  10. Entity Editorで、Max time stepsを100に設定します。
  11. Initial time incrementを0.1に設定し、他のパラメータを下図のとおりに変更します。


    図 4.

節点初期状態の設定

この手順では、温度と相対湿度の両方について、この問題の節点初期状態(NIC)を定義します。
  1. Solverブラウザで、01.Globalの下の03.NODAL_INTIAL_CONDITIONをクリックします。
  2. TemperatureのDefault valueを297.15Kに変更します。
  3. Eddy velocityのDefault valueを0.0001m2/secに変更します。
  4. Relative HumidityのDefault valueを70に変更します。


    図 5.

材料モデルパラメータと体積力の設定

この手順では、この問題の材料特性を定義し、流体ボリュームに物体力を割り当てます。

材料モデルパラメータの設定

  1. Solverブラウザで、02.Materials > FLUIDの順に拡張表示してAir_HMをクリックします。
  2. Entity Editorで、Material TypeをFLUIDに設定します(まだ設定されていない場合)。
  3. Density typeをBoussinesqに設定します。
  4. Densityの値を下図のとおりに入力し、残りの材料パラメータはそのままにします。


    図 6.
  5. Solverブラウザで、Materialsの下のMULTIPHASEを拡張表示し、HumidAir_HMをクリックします。
  6. Material typeがMULTIPHASEに設定され、Filed Interaction TypeがAdvective Diffusiveに設定されていることを確認します。


    図 7.

物体力の設定

  1. Solverブラウザで、03.Body_Force > BODY_FORCEの順に拡張表示してGravity_HMをクリックします。
  2. GravityのZ方向を-9.81に設定します。


    図 8.

Multiplier Functionの作成

  1. Solverブラウザで、05.Multiplier_Functionを右クリックし、Createを選択します。
    MULTIPLIER_FUNCTION.1という新しい関数が作成されます。
  2. この関数の名前をTemp_MFに変更します。
  3. Entity Editorで、Multiplier Function TypeをPiecewise Linearに変更します。
  4. Curves欄を右クリックし、Createを選択します。
  5. 組み込みEntity Editorで、名前をcurve_Temp_MFに変更します。


    図 9.
  6. もう一度Curves欄を右クリックし、Plot Curvesを選択します。
    Curve editorウィンドウが開きます。
  7. 下図のとおりにデータを入力し、ウィンドウの左下にあるUpdateをクリックします。


    図 10.
  8. Closeをクリックし、ウィンドウを閉じます。

境界条件の設定

  1. Modelブラウザに移動して、Componentsのリストを拡張表示します。
  2. Fluidをクリックします。Entity Editorで、
    1. TypeをMULTIPHASEに設定します。
    2. MaterialをHumidAir_HMに設定します。
    3. Element Outputで、Active Element OutputをOnに設定し、他のパラメータが下記のとおりに設定されていることを確認します。


    図 11.
  3. frontをクリックします。Entity Editorで、TypeをSLIPに変更します。


    図 12.
  4. 同様に、backをクリックしてTypeをSLIPに変更します。
  5. leftをクリックします。Entity Editorで、
    1. TypeをWALLに変更します。
    2. Temperature BC typeをFluxに変更します。


    図 13.
  6. 同様に、righttopをクリックし、これらのTypeをWALLに変更して、Temperature BC typeをFluxに設定します。
  7. bottomをクリックします。Entity Editorで、
    1. TypeをWALLに変更します。
    2. Show advanced featuresをOnに設定します。
    3. Temperature BC typeをValueに設定します。
    4. Temperatureの値を1に設定します。
    5. Temperature multiplier functionをTemp_MFに設定します。
    6. Surface Outputで、Activate Surface OutputがOnに設定されていることを確認します。
      注: このオプションをオンにすると、AcuProbeAcuTransのようなポスト処理プログラムを使用して、特定サーフェスの面積分出力を計算できます。


    図 14.
  8. モデルを保存します。

節点出力変数の設定

  1. Solverブラウザ17.Outputを拡張表示し、NODAL_OUTPUTをクリックします。
  2. Entity Editorで、Time step frequencyを5に設定します。
  3. Output initial conditionチェックボックスをアクティブにします。


    図 15.

解の計算

この手順では、HyperMeshからAcuSolveを直接起動して解析を完了します。

  1. すべてのメッシュコンポーネントの表示をオンにします。
    解析を実行するには、アクティブなすべてのコンポーネントのメッシュを可視化した状態にする必要があります。
  2. ACUツールバーの をクリックします。
    Solver job Launcherダイアログが開きます。
  3. オプション: 解析時間を短縮するには、使用可能なプロセッサの数に応じて、使用するプロセッサの数に大きい値(4または8)を設定します。
  4. Auto run AcuProbeOnになっていることを確認します。
    これは、解析の進捗をモニターするためのAcuProbeダイアログを開くための設定です。
  5. Output time stepsがAllに設定されていることを確認します。
  6. 他のオプションはデフォルト設定のままとして、Launchをクリックして解析プロセスを開始します。


    図 16.
    解析が進行すると、AcuTailAcuProbeダイアログが開きます。解析の進行状況がAcuTailダイアログで報告されます。解析プロセスを制御可能なAcuSolve Controlダイアログも開きます。このダイアログには、解析を停止したり、現在の時間ステップの終了時に出力ファイルを生成するためのオプションがあります。

    AcuTailダイアログに出力される実行のサマリーには、AcuSolveが解析の実行を完了したことが示されます。

AcuProbeによる解析のモニター

AcuProbeを使用して、解析時間におけるさまざまな変数をモニターできます。
  1. AcuProbeダイアログで、Residual Ratioを拡張表示します。
  2. Finalを右クリックし、Plot Allを選択します。
    注: プロットを正しく表示するために、ツールバーで をクリックする必要がある場合があります。


    図 17.
  3. Finalを右クリックし、Plot Noneを選択します。
  4. Surface Output > bottom > Temperatureの順に拡張表示します。
  5. temperatureを右クリックし、Plotを選択します。
  6. 次に、Relative Humidityを拡張表示し、relative_humidityを右クリックしてPlotを選択します。


    図 18.
  7. 同様に、下図のtemperaturedewpoint_temperatureのように、他の変数をプロットします。


    図 19.
  8. 次に、下図のようにtemperaturehumidity_film_thicknessの関係をプロットします。


    図 20.
  9. 最後に、下図のようにrelative_humidityhumidity_film_thicknessの関係をプロットします。


    図 21.

HyperViewによる結果のポスト処理

HyperViewのオープンとモデルおよび結果の読み込み

  1. HyperMeshのメインメニュー領域で、Applications > HyperViewの順にクリックします。
    HyperViewウィンドウを読み込むと、デフォルトでLoad model and resultsパネルが開きます。このパネルが表示されない場合は、File > Open > Modelの順にクリックします。
  2. Load model and resultsパネルで、Load modelの隣にある をクリックします。
  3. Load Model Fileダイアログで、作業ディレクトリに移動して、ポスト処理する解析実行のAcuSolve .Logファイルを選択します。この例で選択するファイルは、Air_Box.1.Logです。
  4. Openをクリックします。
  5. パネル領域で、Reader Optionsをクリックします。
  6. ダイアログで、ReaderをAcuSolve Result Reader、Extended nodal outputをNoに設定します。


    図 22.
  7. Applyをクリックし、ダイアログを閉じます。
  8. パネル領域Applyをクリックしてモデルと結果を読み込みます。
    読み込むと、モデルが形状で色分けされます。

断面上のコンターの作成

この手順では、断面上での温度、相対湿度、および露点温度のコンターを作成します。
  1. これは過渡ケースであるため、最後の時間ステップにおける結果をプロットする必要があります。このためには、ResultsブラウザでTimeドロップダウンメニューをクリックし、リスト内の最後のオプションを選択します。


    図 23.

    ここでは、最後の時間は10秒です。

  2. 新しい断面を作成するには、Resultsブラウザで、右クリックし、コンテキストメニューからCreate > Section Cut > Planarを選択します。
    Section Cuts見出しに、新しいエンティティSection 1が作成されます。
  3. ResultブラウザのSection 1を右クリックし、コンテキストメニューからEditを選択します。
  4. Section cutパネルで、Define planeをZ Axisに変更します。
  5. Display optionsで、Cross sectionオプションをアクティブにします。
  6. Clip elementsオプションがアクティブになっていることを確認します。
  7. Applyをクリックします。
  8. Define planeスライダーバー(Z Axisボタンの下)を動かして、断面の位置を選択します。


    図 24.


    図 25.
  9. Standard Viewsツールバーの をクリックすることで、xy平面を正面から見た表示にします。
  10. Resultsツールバーで をクリックしてContourパネルを開きます。
  11. パネル領域で、Result typeをTemperature (s)に設定します。
  12. Components エンティティセレクターをクリックします。Extended Entity Selection ダイアログでDisplayedを選択します。
  13. Applyをクリックします。
  14. Displayタブで、Discrete colorオプションをオフにします。


    図 26.


    図 27.
  15. Result typeをRelative_humidity (s)に変更し、XY平面の相対湿度コンターを表示します。


    図 28.
  16. Result typeをDew_Point_Temperature (s)に変更し、XY平面の露点温度コンターを表示します。


    図 29.
  17. これらのプロットをイメージファイルとして保存します。
    1. Image Captureツールバーで、Save Image File/Clipboardアイコン(/)を に切り替えます。
    2. Capture Graphics Areaアイコン をクリックします。
    3. ダイアログでイメージの名前を指定して、Saveをクリックします。
      注: プレゼンテーションでイメージを使用する場合は、Save Image to File/Clipboardアイコンを ではなく に切り替えることにより、イメージをクリップボードにコピーすることができます。その後で、イメージをプレゼンテーションに貼り付けます。

要約

このチュートリアルでは、HyperMeshAcuSolveを使用し、過渡多相流問題を設定して解析するための基本的なワークフローを体験しました。また、湿度モデルを使用して、温度変化に起因する底壁サーフェス上の水蒸気の蓄積と消失を数値化する方法も知ることができました。解が計算された後に、HyperViewで結果をポスト処理し、コンタープロットを作成しました。