ACU-T:4000 過渡的なダム決壊のシミュレーション

前提条件

このチュートリアルでは、HyperWorks CFDを使用してAcuSolveの過渡ダム決壊シミュレーションの設定手順を説明します。このチュートリアルを実行する前に、HyperWorksの入門チュートリアルであるACU-T:1000 HyperWorksユーザーインターフェースをすでに完了しHyperWorks CFDAcuSolveの基本を理解しているものとします。この解析を実行するには、ライセンス供与済みバージョンのHyperWorks CFDAcuSolveにアクセスできる必要があります。

このチュートリアルを実行する前に、HyperWorksCFD_tutorial_inputs.zip<Altair_installation_directory>\hwcfdsolvers\acusolve\win64\model_files\tutorials\AcuSolveから作業ディレクトリにコピーします。 ACU-T4000_dambreak2D.x_t をHyperWorksCFD_tutorial_inputs.zipから取り出します。

問題の説明

このチュートリアルで扱う問題は、下の図に示しています。この問題には、貯水池の壁によって保持されている正方形の水柱があります。時間t=0で貯水池の壁を取り除くと、水柱が自由に流出します。シミュレーションは、ダムの決壊で見られるように、水柱が流出したときの大きな波のパターンを可視化し、調査するために使用できます。



図 1.

HyperWorks CFDの起動とHyperMeshモデルデータベースの作成

  1. Windows のスタートメニューからスタート > Altair <バージョン> > HyperWorks CFDをクリックして HyperWorks CFDを起動します。
    HyperWorks CFDが読み込まれると、Geometryリボンが表示されます(デフォルト)。
  2. 以下の方法のいずれかで新規.hmデータベースを作成します。
    • メニューバーで、File > Saveをクリックします。
    • HomeツールのFilesツールグループからSave Asツールをクリックします。


      図 2.
  3. Save File Asダイアログで、データベースを保存したいディレクトリを指定します。
  4. データベース名として DamBreakを入力して、Saveをクリックします。
    このディレクトリが解析用ディレクトリになり、シミュレーションに関連するすべてのファイルがこの場所に保存されます。

形状のインポート検証

形状のインポート

  1. メニューバーからFile > Import > Geometry Modelをクリックします。
  2. Import Fileダイアログで、作業ディレクトリに移動し、 ACU-T4000_dambreak2D.x_tを選択してOpenをクリックします。
  3. Geometry Import Optionsダイアログで、すべてのオプションをデフォルト設定にしたままImportをクリックします。


    図 3.


    図 4.

形状の検証

  1. GeometryリボンからValidateツールをクリックします。


    図 5.
    Validateツールでは、モデル全体をスキャンしてサーフェスおよびソリッドのチェックを実行し、フリーエッジ、閉じたシェル、交差、重複、細長いサーフェスなど、形状内の欠陥にフラグを付けます。

    現在のモデルには、上記のような問題は存在しません。問題が見つかった場合は、ツール名の横の括弧内の数で示されます。

    Validateアイコンの左上に青色のチェックマークが表示されているのがわかります。これは、このツールでは形状モデルの問題は検出されなかったことを示しています。


    図 6.
  2. Escまたは、モデリングウィンドウで右クリックして、緑色のチェックマークの上でカーソルを右から左にスワイプしてください。
  3. データベースを保存します。

問題の設定

シミュレーションパラメータとソルバー設定のセットアップ

  1. FlowリボンからPhysicsツールをクリックします。


    図 7.
    Setupダイアログが開きます。
  2. Physics modelsの設定で
    1. Multiphase flowラジオボタンを有効にします。
    2. Multifluid typeをImmiscibleに、Immiscible materialをAir-Waterに設定します。
    3. Time step sizeを0.002498に、Final timeを1.0に設定します。
    4. TurbulenceモデルとしてLaminarを選択します。
    5. y方向のgravityを-9.81 m/sec2に設定します。


    図 8.
  3. Solver Controls設定をクリックし、Maximum stagger iterationsを5に設定します。


    図 9.
  4. ダイアログを閉じてモデルを保存します。

材料プロパティの割り当て

  1. FlowリボンからMaterialsツールをクリックします。


    図 10.
  2. ダム形状の任意の場所をクリックします。
  3. マイクロダイアログで、MaterialドロップダウンからAir-Waterを選択します。


    図 11.
  4. ガイドバーをクリックすると、コマンドが実行されてツールが終了します。
  5. データベースを保存します。

流れ境界条件の定義

  1. FlowリボンからSymmetryツールをクリックします。


    図 12.
  2. 下の図に示すように、正のZ軸上の一番右のフェイスを選択します。


    図 13.
  3. Boundaries凡例でSymmetryをダブルクリックし、これをz_posという名前に変更して、Enterキーを押します。
  4. ガイドバーをクリックすると、コマンドが実行されますが、ツールは終了しません。
  5. モデルを回転して、反対のフェイスを選択します。
  6. Boundaries凡例でSymmetryをz_negという名前に変更します。
  7. ガイドバーをクリックすると、コマンドが実行されてツールが終了します。
  8. データベースを保存します。

メッシュの生成

この手順では、まずInteractiveメッシングツールを使用してサーフェスメッシュを作成します。次にモデルのグローバルメッシュサイズと成長率を指定し、MeshリボンのBatchツールを使用してボリュームメッシュを生成します。

サーフェスメッシュの作成

  1. MeshリボンからInteractiveツールをクリックします。


    図 14.
    デフォルトでは、Createは2番目のリボンから選択する必要があります。
  2. ガイドバー をクリックしてオプションメニューを開き、次の変更を加えます:
    1. Element sizeを0.00254に設定します。
    2. Mesh typeをMappedに設定します。
    3. Map methodをMap as triangleに設定します。


    図 15.
  3. ガイドバーエンティティセレクターSolidsに変更し、モデリングウィンドウでそのソリッドを選択します。
  4. マイクロダイアログまたはガイドバーMeshをクリックし、サーフェスメッシュを生成します。
  5. サーフェスメッシュが作成されたら、Escキーを押してツールを終了します。

ボリュームメッシュの生成

  1. MeshリボンからBatchツールをクリックします。


    図 16.
    Meshing Operations ダイアログが開きます。
  2. Mesh sizeオプションがAverage sizeに設定されていることを確認します。
  3. Average element sizeを0.006に設定します。


    図 17.
  4. Meshをクリックします。
    Run Statusダイアログが開きます。解析が終了すると、ステータスが更新され、ダイアログを閉じることができます。
    ヒント: メッシュジョブを右クリックし、View log fileを選択してメッシングプロセスの概要を表示します。

節点出力と節点初期状態の定義

この手順では、節点出力の頻度を定義し、水柱の節点初期状態を指定します。

節点出力頻度の設定

  1. SolutionリボンからFieldツールをクリックします。


    図 18.
    Field Outputダイアログが開きます。
  2. Solution variablesを開きます。
  3. Write initial conditionsオプションを有効にします。
  4. Write results at time step intervalオプションが有効になっていることを確認します。
  5. Time step intervalを5に設定します。


    図 19.

節点初期状態の定義

  1. SolutionリボンのZonesツールグループからBoxツールをクリックします。


    図 20.
  2. ダム形状の上にカーソルを置きます。ゾーンがモデルのサーフェスと揃ったら、その形状をダブルクリックします。
    任意の寸法の初期化ゾーンがモデルに表示されます。


    図 21.
  3. マイクロダイアログFluidを選択し、ダイアログ内の空白部分でクリックします。Value fieldをWaterに変更します。


    図 22.
  4. ゾーン初期化マイクロダイアログで、ドロップダウンを拡張表示し、ゾーンの寸法を下の図のように設定します。


    図 23.
    注: 寸法を入力するマイクロダイアログが表示されない場合は、NIC変数のマイクロダイアログを移動します。
  5. 下の図のようにモデル上のマニピュレーターの中心をクリックし、次の中心座標を入力します:0.028575, 0.028575, 0.003


    図 24.

    これにより、ダムの隅に水柱がある状態で流体領域が初期化されます。

  6. モデリングウィンドウ内で右クリックし、チェックマークを選択してツールを終了します。

AcuSolveの実行

  1. SolutionリボンからRunツールをクリックします。


    図 25.
    Launch AcuSolveダイアログが開きます。
  2. Parallel processingオプションをIntel MPIに設定します。
  3. オプション: プロセッサーの数を、利用環境に合わせ、4または8に設定します。
  4. Automatically define pressure referenceオプションがアクティブであることを確認します。
  5. Default initial conditionsタブを拡張表示し、Pre-compute flowオプションを無効にします。
  6. すべての速度成分を0に、Immiscible fluidをAirに設定します(設定されていない場合)。
  7. 他のオプションはデフォルト設定のままとして、Runをクリックして解析プロセスを開始します。


    図 26.
    Run Statusダイアログが開きます。解析が終了すると、ステータスが更新され、ダイアログを閉じることができます。
    ヒント: AcuSolve の実行中に、Run StatusダイアログでAcuSolveジョブを右クリックし、View Log Fileを選択して、解析のプロセスをモニターします。

HyperViewによる結果のポスト処理

この手順では、水柱を囲んでいる壁を除去したときに流出する水流のアニメーションを作成します。

HyperViewのオープンとモデルおよび結果の読み込み

  1. WindowsのスタートメニューからStart > All Programs > Altair <version> > HyperViewをクリックして、HyperViewを起動します。
    HyperViewウィンドウを読み込むと、デフォルトでLoad model and resultsパネルが開きます。このパネルが表示されない場合は、File > Open > Modelの順にクリックします。
  2. Load model and resultsパネルで、Load modelの隣にある をクリックします。
  3. Load Model Fileダイアログで、作業ディレクトリに移動して、ポスト処理する解析実行のAcuSolve .logファイルを選択します。この例で選択するファイルは、DamBreak.1.Logです。
  4. Openをクリックします。
  5. パネル領域Applyをクリックしてモデルと結果を読み込みます。
    読み込むと、モデルが形状で色分けされます。

水流アニメーションの作成

  1. Standard Viewsツールバーの をクリックすることで、xy平面を正面から見た表示にします。
  2. Resultsツールバーで をクリックしてContourパネルを開きます。
  3. Result typeとしてVolume_fraction-2-Water (s)を選択します。
  4. Applyをクリックして、最初の時間ステップにおける体積分率コンターを表示します。
  5. Legendタブをクリックし、つづいてEdit Legendをクリックします。
  6. Edit Legendダイアログで、Number of levelsを2、Numeric formatをFixedにそれぞれ変更し、OKをクリックします。


    図 27.
  7. AnimationツールバーでAnimation Controlsアイコン をクリックします。
  8. Max frame Rateスライダーを20fpsまでドラッグします。
  9. Start/Pause Animationアイコン をクリックして、グラフィックス領域でアニメーションを再生します。

アニメーションの保存

  1. メニュー領域でPreferences > Export Settings > AVIの順に選択します。
  2. Export Settings AVIダイアログで、Frame rateを20fpsに設定してOKをクリックします。
  3. ImageCaptureツールバーでSave Image to Fileオプションがオンであることを確認します。


  4. Capture Graphics Area Videoアイコン をクリックします。
    Save Graphics Area Video Asダイアログが開きます。
  5. ファイルの保存先とする場所に移動し、任意のファイル名を指定してSaveをクリックします。

要約

このチュートリアルでは、HyperWorks CFDAcuSolveを使用して多相流問題を正しく設定し、解析する方法を知ることができました。まず、形状をインポートし、流れの設定を計算しました。ボリュームメッシングが完了したら、ゾーン初期化のツールを使用して氷柱の場の初期条件を指定しました。解が計算されたら、HyperViewで結果をポスト処理しました。ここで、ダムの壁を取り除いたことによって流出する水流のアニメーションを生成しました。