ACU-T:3311 代数オイラーモデルを使用した多相核沸騰

前提条件

このチュートリアルでは、管内の二相核沸騰の過渡シミュレーションを、代数オイラーモデルを使用して実行する手順を説明します。このチュートリアルを実行する前に、HyperWorksの入門チュートリアルであるACU-T:1000 HyperWorksユーザーインターフェースをすでに完了しHyperMeshAcuSolve、およびHyperViewの基本を理解しているものとします。この解析を実行するには、ライセンス供与済みバージョンのHyperMeshAcuSolveにアクセスできる必要があります。

このチュートリアルを実行する前に、HyperMesh_tutorial_inputs.zip<Altair_installation_directory>\hwcfdsolvers\acusolve\win64\model_files\tutorials\AcuSolveから作業ディレクトリにコピーします。 ACU-T3311_Steiner.hm HyperMesh_tutorial_inputs.zipから取り出します。

HyperMeshデータベース(.hm ファイル)には、メッシュとジオメトリが含まれています。このチュートリアルには、ジオメトリのインポートおよびメッシュ生成に関する手順は含まれていません。

問題の説明

このチュートリアルで扱う問題は、図 1に図示しています。ここでは、例としてスタイナー問題を取り上げて、AcuSolveにおける多相核沸騰モデリングの機能を確認します。相変化を伴う代数オイラー(AE)モデルは、分散領域と搬送領域の間で見られる熱伝達と運動量交換のシミュレーションに使用します。

この問題では、搬送領域の材料は水であり、分散領域の材料は蒸気であると考えます。圧力が2バールで温度が95℃の水が、0.39m/secの平均速度で入口に流入し、130℃に保たれている加熱壁を通過します。


図 1. チャネルの概略図

HyperMeshモデルデータベースを開く

  1. HyperMeshを起動し、AcuSolveのユーザープロファイルを読み込みます。
    User ProfilesからAcuSolveを選択する方法については、HyperMeshの入門チュートリアルACU-T:1000 HyperWorksユーザーインターフェースをご参照ください。
  2. 標準ツールバーのOpen Modelアイコン をクリックします。
    Open Modelダイアログが開きます。
  3. モデルファイルの保存先ディレクトリを参照します。HyperMeshファイルのACU-T3311_Steiner.hmを選択してOpenをクリックします。
  4. File > Save Asをクリックします。
    Save Model Asダイアログが開きます。
  5. 名前をMultiphase_NBとして新しいディレクトリを作成し、このディレクトリへ移動します。
    このディレクトリが作業ディレクトリになり、シミュレーションに関連するすべてのファイルがこの場所に保存されます。
  6. データベースのファイル名としてSteinerと入力するか、別の名前を入力します。
  7. 保存をクリックしてデータベースを作成します。

一般的なシミュレーションパラメータの設定

解析パラメータの設定

  1. Solverブラウザに移動して01.Globalを拡張表示し、PROBLEM_DESCRIPTIONをクリックします。
  2. Entity EditorでAnalysis typeをTransientに設定します。
  3. Abs. temperature offsetを200000に設定します。
  4. Turbulence ModelをSpalart Allmarasに設定します。
  5. Temperature equationをAdvective Diffusiveに設定します。
  6. Multiphase equationをAlgebraic Eulerianに設定します。
  7. Global Gravity in the Z directionを-9.8に設定します。


    図 2.

ソルバー設定

  1. Solverブラウザで、01.Globalの下の02.SOLVER_SETTINGSをクリックします。
  2. Entity Editorで、Max time stepsを40に設定します。
  3. Initial time incrementを0.01に設定します。
  4. Min stagger iterationsを2に設定します。
  5. Max stagger iterationsを4に設定します。
  6. Relaxation factorを0に設定します。
  7. Flow、Turbulence、およびFieldがオンになっていることを確認します。


    図 3.

節点出力の定義

  1. Solverブラウザ17.Ouputを拡張表示し、NODAL_OUTPUTをクリックします。
  2. Entity Editorで、Time step frequencyを10に設定します。
  3. Output initial condition欄をオンにします。


    図 4.

材料モデルパラメータの設定

この手順では、まずVaporという名前の新しい材料を作成します。次に、多相材料モデルを設定します。

  1. Solverブラウザで、02.Materialsを拡張表示します。
  2. FLUIDを右クリックし、Createを選択して新しい流体材料を作成します。これにVaporという名前を付けます。
  3. Entity Editorで、Densityの値を1.128に設定します。
  4. Specific heatの値を2174.59に設定します。
  5. Latent heat typeをConstantに変更します。
  6. Latent heatの値を2256000に設定します。
  7. Latent heat temperatureの値を393.45に設定します。
  8. Viscosityの値を1.29e-05に設定します。
  9. Conductivityの値を0.02749に設定します。


    図 5.
  10. Solverブラウザで、FLUIDの下のWater_HMをクリックし、材料特性を変更します。
    1. Densityを956.36に変更します。
    2. Specific heatを4204.8に変更します。
    3. Viscosityを0.000314に変更します。
    4. Conductivityを0.675に変更します。
  11. Solverブラウザで、02.Materialsの下のMULTIPHASEを右クリックし、Createを選択して新しい多相材料を作成します。これにVapourWater-Eulerian_HMという名前を付けます。
  12. Entity Editorで、Field Interaction TypeがAlgebraic Eulerianに設定されていることを確認します。
  13. Carrier MaterialをWater_HMに設定します(まだ設定されていない場合)。
    この解析では水が搬送領域なので、このオプションは変更せずに、このままとします。
  14. Number of Dispersed Fieldが1に設定されていることを確認します。


    図 6.
  15. Edit Field Interaction Modelsのチェックボックスをオンにします。
    Field Interaction Modelダイアログが開きます。
  16. このダイアログで、Dispersed Field 1 MaterialをVaporに設定します。
  17. Enable Phase changeチェックボックスをアクティブにします。
  18. Phase change typeをWall boilingに設定します(設定されていない場合)。
  19. Dispersed field diameter typeをBoiling Kurul exponentialに設定します。その他のパラメータも下図にならって設定します。


    図 7.
  20. Save & Closeをクリックします。

境界条件と節点初期状態の設定

境界条件と節点初期状態の設定

この手順では、多相流体ボリュームに材料特性を割り当て、つづいてサーフェス境界条件を割り当てます。

  1. CompsWithNoCardImageでNONEを拡張表示します。
  2. FluidVolumeをクリックします。Entity Editorで、
    1. TypeをMULITPHASEに変更します(設定されていない場合)。
    2. MaterialをVaperWater_Eulerian_HMに設定します。


    図 8.
  3. Solverブラウザ12.Surfaces > INFLOWの順に拡張表示します。
  4. Inflowをクリックします。Entity Editorで、
    1. TypeをINFLOWに変更します(設定されていない場合)。
    2. Inflow typeをAverage velocityに変更します。
    3. Average velocityを0.39m/secに設定します。
    4. Temperatureを368.15に設定します。


      図 9.
    5. No. of multiphase incoming fieldsを2に設定して、Enterキーを押します。
    6. ダイアログで、1つ目のIncoming FieldとしてWater_CF.VaporWater_Eulerian_HMを選択し、そのVolume Fractionを1に設定します。
    7. 同様に、2つ目のIncoming FieldとしてVapor_DF1.VaporWater_Eulerian_HMを選択し、そのVolume Fractionを0に設定します。


      図 10.
    8. Save and Closeをクリックします。
  5. 同様に、OUTFLOWを拡張表示し、Outflowコンポーネントをクリックします。Entity Editorで、TypeをOUTFLOWに変更します(設定されていない場合)。


    図 11.
  6. 同様に、WALLを拡張表示し、Side_MaxYコンポーネントをクリックします。Entity Editorで、TypeがWALLに設定されていることを確認します。


    図 12.
  7. 同様に、Side_MaxYTop、およびBottomの各コンポーネントをクリックし、TypeがWALLに設定されていることを確認します。
  8. HeatedWallをクリックします。Entity Editorで、
    1. TypeがWALLに設定されていることを確認します。
    2. Temperature BC typeをValueに設定します。
    3. Temperatureの値を403.15に設定します。


    図 13.
  9. モデルを保存します。

初期条件の定義

  1. Solverブラウザ01.Globalを拡張表示し、03.NODAL_INTIAL_CONDITIONをクリックします。
  2. Entity Editorで、x-Velocityの値を0.39に設定します。
  3. TemperatureのDefault valueを368.15に設定します。
  4. FieldタブでNo. of Fieldsを2に設定してEnterキーを押します。
  5. Fieldsダイアログで、次の図のように値を設定します。


    図 14.
  6. Save & Closeをクリックします。
  7. モデルを保存します。

解の計算

この手順では、HyperMeshからAcuSolveを直接起動して解析を完了します。

  1. すべてのメッシュコンポーネントの表示をオンにします。
    解析を実行するには、アクティブなすべてのコンポーネントのメッシュを可視化した状態にする必要があります。
  2. ACUツールバーの をクリックします。
    Solver job Launcherダイアログが開きます。
  3. オプション: 解析時間を短縮するには、使用可能なプロセッサの数に応じて、使用するプロセッサの数に大きい値(4または8)を設定します。
  4. Output time stepsがAllに設定されていることを確認します。
  5. 他のオプションはデフォルト設定のままとして、Launchをクリックして解析プロセスを開始します。


    図 15.

HyperViewによる結果のポスト処理

AcuSolveの実行が完了したら、HyperWorks Solver Viewダイアログを閉じます。HyperMesh Desktopウィンドウで、AcuSolve ControlダイアログとSolver job Launcherダイアログを閉じます。次のいくつかの手順では、蒸気の体積分率のコンターをプロットします。

HyperViewインターフェースへの切り替えと、AcuSolveのモデルと結果の読み込み

  1. HyperMesh Desktopウィンドウで、グラフィックスウィンドウの左下隅にあるClientSelectorドロップダウンをクリックします。


    図 16.
  2. リストから、HyperViewを選択します。
  3. 表示されるポップアップダイアログで、Yesをクリックします。
    インターフェースがHyperViewに変更されます。

    HyperViewを読み込むと、デフォルトでLoad model and resultsパネルが開きます。このパネルが表示されない場合は、File > Open > Modelの順にクリックします。

  4. Load model and resultsパネルで、Load modelの隣にある をクリックします。
  5. Load Model Fileダイアログで、作業ディレクトリに移動して、ポスト処理する解析実行のAcuSolve .Logファイルを選択します。この例で選択するファイルは、Steiner.1.Logです。
  6. Openをクリックします。
  7. パネル領域Applyをクリックしてモデルと結果を読み込みます。
    読み込むと、モデルが形状で色分けされます。

蒸気の体積分率に関するコンターの作成

この手順では、蒸気の体積分率に関するコンターを表示します。
  1. これは過渡ケースであるため、最後の時間ステップにおける結果をプロットする必要があります。このためには、ResultsブラウザでTimeドロップダウンメニューをクリックし、リスト内の最後のオプションを選択します。


    図 17.
  2. ResultsブラウザComponentsのリストを拡張表示します。
  3. Isolate Shownアイコン をクリックし、Ctrlキーを押しながらHeatedWallコンポーネントとBottomコンポーネントを選択して、必要なコンポーネントを除くすべてのコンポーネントの表示をオフにします。


    図 18.
  4. Resultsツールバーで をクリックしてContourパネルを開きます。
  5. パネル領域で、Result typeをVolume_fraction-1-Vapor_DF1.VaporWater_Eulerian_HM(s)に変更します。
  6. Components エンティティセレクターをクリックします。Extended Entity Selection ダイアログでDisplayedを選択します。
  7. Applyをクリックして、蒸気の体積分率のコンターをプロットします。
  8. パネル領域のDisplayタブで、Discrete colorオプションをオフにします。


    図 19.
  9. Legendタブをクリックし、つづいてEdit Legendをクリックします。表示されたダイアログで、Numeric formatをFixedに変更してOKをクリックします。
    次の図のようなコンタープロットが表示されます。


    図 20.

要約

このチュートリアルでは、代数オイラー多相モデルを使用し、過渡二相核沸騰流の問題を設定して解析するための基本的なワークフローを体験しました。まず、HyperMeshでモデルをインポートしました。次に、シミュレーションパラメータを設定して、HyperMeshから直接AcuSolveを起動しました。AcuSolveによる解析が完了した後、HyperViewを使用して結果をポスト処理し、体積分率のコンタープロットを作成しました。