ACU-T:3203 同心球体間の伝熱 - Discrete Ordinate輻射モデル

前提条件

このチュートリアルでは、Discrete Ordinate(DO)輻射モデルを使用して、同心球体間における輻射伝熱の定常状態シミュレーション結果を設定、解析、表示する方法を紹介します。このチュートリアルを実行する前に、HyperWorksの入門チュートリアルであるACU-T:1000 HyperWorksユーザーインターフェースをすでに完了しHyperWorks CFDAcuSolveの基本を理解しているものとします。この解析を実行するには、ライセンス供与済みバージョンのHyperWorks CFDAcuSolveにアクセスできる必要があります。

このチュートリアルを実行する前に、HyperWorksCFD_tutorial_inputs.zip<Altair_installation_directory>\hwcfdsolvers\acusolve\win64\model_files\tutorials\AcuSolveから作業ディレクトリにコピーします。 ACU-T3203_DO_Rad.hm をHyperWorksCFD_tutorial_inputs.zipから取り出します。

問題の説明

このチュートリアルで扱う問題は、図 1で図式的に示されています。この問題では、DO輻射モデルを使用して、同心球体間の放射による伝熱をシミュレーションします。内側球体の内側サーフェスと外側球体の外側サーフェスの温度は一定に保持されていますが、球体間のギャップでは球体の間で輻射による熱の移動があります。

この問題では、次の図に示すように、一定の温度に保持されたサーフェスを持つ2つの同心球体の間に、任意の材料特性を持つ流体の領域があります。なお、この図の比率は、ここに示した数字のとおりにはなっていません。外側球体の半径は0.04m、内側球体の半径は0.01mです。内側球体の内側サーフェスでは、300.0K(26.85°C)の一定壁面温度が保持されているものとします。また、外側球体の外側サーフェスでは、1300.0K(1026.85°C)の一定壁面温度が保持されているものとします。外側球体内部の流体は、輻射のみで熱が伝達される非伝導材料であるとします。

この問題を定常状態の事例として解析し、固体と流体領域の熱伝達によって温度平衡が得られるようにします。



図 1.

HyperWorks CFDの起動とHyperMeshデータベースのオープン

  1. Windows のスタートメニューからスタート > Altair <バージョン> > HyperWorks CFDをクリックして HyperWorks CFDを起動します。
  2. HomeツールのFilesツールグループからOpen Modelツールをクリックします。


    図 2.
    Open Fileダイアログが開きます。
  3. モデルファイルの保存先ディレクトリを参照します。HyperMeshファイルのACU-T3203_DO_Rad.hmを選択してOpenをクリックします。
  4. File > Save Asをクリックします。
  5. 名前をDO_radiationとして新しいディレクトリを作成し、このディレクトリへ移動します。
    このディレクトリが作業ディレクトリになり、シミュレーションに関連するすべてのファイルがこの場所に保存されます。
  6. データベースのファイル名としてDO_radiationと入力するか、別の名前を入力します。
  7. 保存をクリックしてデータベースを作成します。

形状の検証

Validateツールは、モデル全体をスキャンし、サーフェスおよびソリッド上でチェックを実行して、形状に不具合(フリーエッジ、閉じたシェル、交差、重複、スライバーなど)があればフラグ付けします。

シミュレーションの物理パートに集中するために、このチュートリアルの入力ファイルにはすでに検証済みの形状が含まれています。GeometryリボンのValidateアイコンの左上隅に青色のチェックマークが表示されていることを確認します。これは、形状が有効で、フロー設定に進めることを示しています。


図 3.

流れのセットアップ

シミュレーションパラメーターとソルバーの設定

  1. FlowリボンからPhysicsツールをクリックします。


    図 4.
    Setupダイアログが開きます。
  2. Physics modelsの設定で
    1. Time marchingを Steadyに設定します。
    2. Turbulenceモデルを Laminarに設定します。
    3. Heat transferチェックボックスを有効にします。


    図 5.
  3. Solver controls設定をクリックします。
  4. Flowのチェックボックスをオフにします。
    このチュートリアルでは、Temperatureフィールドのみを解くことになります。


    図 6.
  5. ダイアログを閉じてモデルを保存します。

材料モデルの作成

  1. FlowリボンからMaterial Libraryツールをクリックします。


    図 7.
    Material Libraryダイアログが開きます。
  2. Settingsで、Fluidをクリックして、My Materialタブをクリックします。
  3. をクリックして、新しい材料を作成します。
  4. 新しいダイアログで、左上隅にある名前をクリックして、材料の名前をRadiatingに変更します。
  5. 材料特性のタブごとに以下の値を入力して、ダイアログを閉じます。
    • Density – 1000kg/m3
    • Specific Heat – 10000J/kg-K
    • Viscosity – 1e-5kg/m-sec
    • Conductivity – 1e-6W/m-K








    図 8.
  6. Solid設定をクリックします。
  7. 上記の手順を繰り返し、以下のパラメータを使用して2つの材料モデル(InnerOuter)を作成します。
    Inner
    • Density – 1000kg/m3
    • Specific Heat – 10000J/kg-K
    • Conductivity – 2W/m-K
    Outer
    • Density – 1000kg/m3
    • Specific Heat – 10000J/kg-K
    • Conductivity – 0.35W/m-K

材料プロパティの割り当て

  1. FlowリボンからMaterialsツールをクリックします。


    図 9.
  2. 外側のソリッドを選択して、マイクロダイアログからOuter材料モデルを割り当てます。


    図 10.
  3. ガイドバーをクリックすると、コマンドが実行されますが、ツールは終了しません。
  4. 材料の凡例で、Airを右クリックし、Isolateを選択します。
  5. 外側のソリッドを選択して、Radiating材料モデルを割り当てます。
  6. ガイドバーで、をクリックします。
  7. 材料の凡例で、もう一度Airを右クリックし、Isolateを選択します。
  8. 残りのソリッドを選択して、Inner材料モデルを割り当てます。
  9. ガイドバーをクリックすると、コマンドが実行されてツールが終了します。
  10. モデルを保存します。

流れ境界条件の割り当て

  1. FlowリボンからNo Slipツールをクリックします。


    図 11.
  2. 球の2つのフェイスを選択し、右クリックしてHideを選択します。
  3. モデリングウィンドウで、残りの2つのフェイスを選択します。マイクロダイアログで、300KのTemperature境界条件を割り当てます。


    図 12.
  4. 境界の凡例で、WallをダブルクリックしてInnerという名前に変更します。
  5. ガイドバーをクリックすると、コマンドが実行されますが、ツールは終了しません。
  6. Aキーを押して、すべてのサーフェスの表示をオンにします。
  7. 2つの外側フェイスを選択します。マイクロダイアログで、1300KのTemperature境界条件を割り当てます。
  8. 境界の凡例で、WallをダブルクリックしてOuterという名前に変更します。
  9. ガイドバーをクリックすると、コマンドが実行されてツールが終了します。
  10. モデルを保存します。

放射のセットアップ

放射モデルの選択

  1. RadiationリボンのThermal RadiationツールからPhysicsツールをクリックします。


    図 13.
    Radiation Settingsダイアログが開きます。
  2. Thermal radiationチェックボックスを有効にし、放射モデルをDiscrete Ordinateに設定します。


    図 14.
  3. Radiation quadratureをS4に設定します。
  4. Default radiation surface diffused fractionが1に設定されていることを確認してください。

輻射材料特性の定義

  1. Surface Finish Libraryツールをクリックします。


    図 15.
    Surface finish libraryが開きます。
  2. をクリックします。
  3. テーブルで、Surface Finishをダブルクリックして名前をInnerに変更し、Emissivityを0.5に設定します。
  4. 同様に、名前をOuter、Emissivityを0.8にそれぞれ設定した別のEmissivityモデルを作成します。


    図 16.
  5. Participating MediaツールでModelツールをクリックします。


    図 17.
    Participating media model libraryが開きます。
  6. をクリックして、以下の特性を持つモデルを作成します。


    図 18.

関与媒体モデルの割り当て

  1. Participating MediaツールでAssignツールをクリックします。


    図 19.
  2. モデリングウィンドウで、右クリックして、Select > Advanced > By Material > Radiatingの順に選択します。
  3. マイクロダイアログで、Airモデルが選択されていることを確認します。
  4. ガイドバーをクリックしてします。
  5. Participating Mediaの凡例で、Airを右クリックし、Isolateを選択します。

放射率モデルの割り当て

  1. Thermal RadiationツールでSurface Finishツールをクリックします。


    図 20.
  2. 2つの外側の面を選択します。
  3. マイクロダイアログで、Outerサーフェス仕上げモデルを選択します。
  4. ガイドバーをクリックしてします。
  5. Participating Mediaの凡例で、Black Bodyを右クリックし、Isolateを選択します。
  6. 表示されている2つのサーフェスを選択し、 Innerサーフェス仕上げモデルを割り当てます。
  7. ガイドバーをクリックしてします。
  8. モデルを保存します。

メッシュの生成

このチュートリアルのメッシングパラメータはすでに入力ファイルに設定されています。
  1. MeshリボンからBatchツールをクリックします。


    図 21.
    Meshing Operations ダイアログが開きます。
    注: モデルが検証されていない場合、バッチメッシュを実行する前にシミュレーションモデルを作成するように求められます。
  2. 平均要素サイズが0.0025、メッシュ成長率が1.0であることを確認します。
  3. その他すべてのデフォルト設定を受け入れます。


    図 22.
  4. Meshをクリックします。
    Run Statusダイアログが開きます。解析が終了すると、ステータスが更新され、ダイアログを閉じることができます。
    ヒント: メッシュジョブを右クリックし、View log fileを選択してメッシングプロセスの概要を表示します。

AcuSolveの実行

  1. SolutionリボンからRunツールをクリックします。


    図 23.
  2. Parallel processingオプションをIntel MPIに設定します。
  3. オプション: プロセッサーの数を、利用環境に合わせ、4または8に設定します。
  4. Default initial conditionを展開し、Temperatureを 300 Kに設定します。
  5. 他のオプションはデフォルト設定のままとして、Runをクリックして解析プロセスを開始します。


    図 24.
    Run Statusダイアログが開きます。解析が終了すると、ステータスが更新され、ダイアログを閉じることができます。
    ヒント: AcuSolve の実行中に、Run StatusダイアログでAcuSolveジョブを右クリックし、View Log Fileを選択して、解析のプロセスをモニターします。
  6. Plotツールをクリックします。


    図 25.
  7. Plot Utilityダイアログで、Residual Ratio ダブルクリックして残差をプロットします。


    図 26.

HW-CFD Postによる結果のポスト処理

  1. 解析の完了後、Postリボンに移動します。
  2. メニューバーで、File > Open > Resultsの順にクリックします。
  3. 作業ディレクトリでAcuSolveログファイルを選択し、ポスト処理の結果を読み込みます。
    ソリッドとすべてのサーフェスがPostブラウザに読み込まれます。
  4. ブラウザで、Flow Boundariesの横のアイコンをクリックして、すべてのサーフェスの表示をオフにします。


    図 27.
  5. Slice Planesツールをクリックします。


    図 28.
  6. モデリングウィンドウで、x-y平面を選択します。
  7. スライス平面のマイクロダイアログで、をクリックしてスライス平面を作成します。
  8. 表示プロパティマイクロダイアログで、表示をTemperatureに設定し、Legendのトグルスイッチをアクティブにします。
  9. をクリックして、Colormap NameをRainbow Uniformに設定します。


    図 29.
  10. ガイドバーをクリックして、Fキーを押して断面を画面に合わせます。


    図 30.

要約

このチュートリアルでは、Discrete Ordinate輻射モデルを使用し、輻射熱伝達シミュレーションを設定して解析する方法を知ることができました。まず、HyperWorks CFD入力データベースをインポートして、流れと輻射の設定を定義しました。次に、メッシュを生成し、AcuSolveシミュレーションを送信しました。解析の完了後、HyperWorks CFDのプロットユーティリティを使用して、残差指標のプロットを作成しました。最後に、HyperWorks CFD Postを使用して、切断面上の温度分布のコンタープロットを作成しました。