ACU-T:3202 同心球体間の伝熱 - P1輻射モデル

前提条件

このチュートリアルでは、P-1輻射モデルを使用して、同心球体間における輻射伝熱の定常状態シミュレーション結果を設定、解析、表示する方法を紹介します。このチュートリアルを実行する前に、HyperWorksの入門チュートリアルであるACU-T:1000 HyperWorksユーザーインターフェースをすでに完了しHyperMeshAcuSolve、およびHyperViewの基本を理解しているものとします。この解析を実行するには、ライセンス供与済みバージョンのHyperMeshAcuSolveにアクセスできる必要があります。

このチュートリアルを実行する前に、HyperMesh_tutorial_inputs.zip<Altair_installation_directory>\hwcfdsolvers\acusolve\win64\model_files\tutorials\AcuSolveから作業ディレクトリにコピーします。 ACU-T3202_P1Rad.hm HyperMesh_tutorial_inputs.zipから取り出します。

HyperMeshデータベース(.hm ファイル)には、メッシュとジオメトリが含まれています。このチュートリアルには、ジオメトリのインポートおよびメッシュ生成に関する手順は含まれていません。

問題の説明

このチュートリアルで扱う問題は、図 1に図示しています。この問題では、P1輻射モデルを使用して、同心球体間の放射による伝熱をシミュレーションします。内側球体の内側サーフェスと外側球体の外側サーフェスの温度は一定に保持されていますが、球体間のギャップでは球体の間で輻射による熱の移動があります。

この問題では、次の図に示すように、一定の温度に保持されたサーフェスを持つ2つの同心球体の間に、任意の材料特性を持つ流体の領域があります。なお、この図の比率は、ここに示した数字のとおりにはなっていません。外側球体の半径は0.04m、内側球体の半径は0.01mです。内側球体の内側サーフェスでは、300.0K(26.85°C)の一定壁面温度が保持されているものとします。また、外側球体の外側サーフェスでは、1300.0K(1026.85°C)の一定壁面温度が保持されているものとします。外側球体内部の流体は、輻射のみで熱が伝達される非伝導材料であるとします。

この問題を定常状態の事例として解析し、固体と流体領域の熱伝達によって温度平衡が得られるようにします。



図 1.

HyperMeshモデルデータベースを開く

  1. HyperMeshを起動し、AcuSolveのユーザープロファイルを読み込みます。
    User ProfilesからAcuSolveを選択する方法については、HyperMeshの入門チュートリアルACU-T:1000 HyperWorksユーザーインターフェースをご参照ください。
  2. 標準ツールバーのOpen Modelアイコン をクリックします。
    Open Modelダイアログが開きます。
  3. モデルファイルの保存先ディレクトリを参照します。HyperMeshファイルのACU-T3202_P1Rad.hmを選択してOpenをクリックします。
  4. File > Save Asをクリックします。
    Save Model Asダイアログが開きます。
  5. 名前をP1-Radiation_Sphereとして新しいディレクトリを作成し、このディレクトリへ移動します。
    このディレクトリが作業ディレクトリになり、シミュレーションに関連するすべてのファイルがこの場所に保存されます。
  6. データベースのファイル名としてP1-Radiation_Sphereと入力するか、別の名前を入力します。
  7. 保存をクリックしてデータベースを作成します。

一般的なシミュレーションパラメータの設定

  1. Solverブラウザに移動して01.Globalを拡張表示し、PROBLEM_DESCRIPTIONをクリックします。
  2. Entity Editorで、Turbulence equationをAdvective Diffusiveに設定します。
  3. Radiation equationをP-1に設定します。


    図 2.
  4. Solverブラウザで、01.Globalの下の02.SOLVER_SETTINGSをクリックします。
  5. Entity Editorで、Convergence toleranceを1e-05に設定します。
  6. Relaxation Factorが0.3に設定されていることを確認します。
  7. Flowをオフにし、TemperatureとRadiation欄がOnになっていることを確認します。


    図 3.

輻射パラメータと境界条件の設定

この手順では、放射率モデルやサーフェスの境界条件などの輻射パラメータを問題に定義し、流体領域と固体領域に材料特性を割り当てます。

材料モデルパラメータの設定

  1. Solverブラウザで、02.Materialsを右クリックしてMaterial(Fluid)を選択します。
  2. 材料の名前をRadiatingとします。
  3. Entity Editorで、Densityを1000kg/m3に設定します。
  4. Specific heatを10000J/kg-Kに設定します。
  5. Conductivityを1e-6W/m-kに設定します。
    この設定により、輻射のみで熱が伝達されるようになります。
  6. Radiation Propertiesで、Allow Participating Media Radiationをオンにします。
  7. Absorption coefficientを0.0001に設定します。


    図 4.
  8. Solverブラウザで、02.Materialsを右クリックしてMaterial(Solid)を選択します。
  9. 材料の名前をInnerとします。
  10. Entity Editorで、Densityを1000kg/m3に設定します。
  11. Specific heatを10000J/kg-Kに設定します。
  12. Conductivityを2W/m-kに設定します
  13. Solverブラウザで、Innerを右クリックしてDuplicateを選択します。名前をOuterに変更します。
  14. Entity Editorで、Conductivityを0.35W/m-kに設定します。
  15. InnerとOuterの両方でAllow Participating Media Radiationがオフであることを確認します。
    これは、流体媒質のみが輻射による熱伝達に関与するようにするための措置です。

放射率モデルのパラメータの設定

  1. Solverブラウザで、07.Emissivity_Modelコレクターを右クリックし、Createを選択します。
  2. この放射率モデルの名前をInnerとします。
  3. Entity Editorで、Emissivityを0.5に設定します。


    図 5.
  4. 上記の手順を繰り返し、名前をOuter、Emissivityを0.8にそれぞれ設定した別の放射率モデルを作成します。

境界条件の設定

デフォルトでは、すべてのコンポーネントは、壁境界条件に含まれます。この手順では、それらを適切な境界条件に変更し、流体ボリュームに材料特性を割り当てます。
  1. Solverブラウザ12.Surfaces > WALLの順に拡張表示します。
  2. Radiatingをクリックします。Entity Editorで、TypeをFLUIDに変更し、MaterialとしてRadiatingを設定します。


    図 6.
  3. Innerをクリックします。Entity Editorで、TypeをSOLIDに変更し、MaterialとしてInnerを設定します。


    図 7.
  4. Outerをクリックします。Entity Editorで、TypeをSOLIDに変更し、MaterialとしてOuterを設定します。


    図 8.
  5. Inner_Inner_riをクリックします。Entity Editorで、
    1. TypeがWALLに設定されていることを確認します。
    2. Temperature BC typeをValueに設定します。
    3. Temperatureを300Kに設定します。


    図 9.
  6. Outer_Outer_roをクリックします。Entity Editorで、
    1. TypeがWALLに設定されていることを確認します。
    2. Temperature BC typeをValueに設定します。
    3. Temperatureを1300Kに設定します。


    図 10.
  7. Inner_Radiating_r1をクリックします。Entity Editorで、
    1. TypeがWALLに設定されていることを確認します。
    2. Temperature BC typeをFluxに変更します。
    3. Radiation SurfaceタブでDisplayチェックボックスをアクティブにして、Activate radiation surface欄をOnにします。
    4. TypeがWALLに設定されていることを確認し、Emissivity modelとしてInnerを選択します。


    図 11.
  8. Outer_Radiating_r2をクリックします。Entity Editorで、
    1. TypeがWALLに設定されていることを確認します。
    2. Temperature BC typeをFluxに変更します。
    3. Radiation SurfaceタブでDisplayチェックボックスをアクティブにして、Activate radiation surface欄をOnにします。
    4. TypeがWALLに設定されていることを確認し、Emissivity modelとしてOuterを選択します。


    図 12.
  9. モデルを保存します。

解析計算

この手順では、HyperMeshからAcuSolveを直接起動して解析を完了します。

AcuSolveの実行

  1. すべてのメッシュコンポーネントの表示をオンにします。
    解析を実行するには、アクティブなすべてのコンポーネントのメッシュを可視化した状態にする必要があります。
  2. ACUツールバーの をクリックします。
    Solver job Launcherダイアログが開きます。
  3. オプション: 解析時間を短縮するには、使用可能なプロセッサの数に応じて、使用するプロセッサの数に大きい値(4または8)を設定します。
  4. Output time stepsはAllまたはFinalに設定できます。これは定常状態解析なので、最後の時間ステップでの出力が得られれば十分です。
  5. 他のオプションはデフォルト設定のままとして、Launchをクリックして解析プロセスを開始します。


    図 13.

HyperViewによる結果のポスト処理

解析が収束した後、AcuProbeウィンドウとAcuTailウィンドウを閉じます。HyperMeshウィンドウに移動し、AcuSolve Controlタブを閉じます。

HyperViewの起動とモデルおよび結果の読み込み

  1. HyperMeshのメインメニューでApplications > HyperViewをクリックしてHyperMeshを開きます。
    HyperViewウィンドウを読み込むと、デフォルトでLoad model and resultsパネルが開きます。このパネルが表示されない場合は、File > Open > Modelの順にクリックします。
  2. Load model and resultsパネルで、Load modelの隣にある をクリックします。
  3. Load Model Fileダイアログで、作業ディレクトリに移動して、ポスト処理する解析実行のAcuSolve .logファイルを選択します。この例で選択するファイルは、P1-Radiation_Sphere.1.Logです。
  4. Openをクリックします。
  5. パネル領域Applyをクリックしてモデルと結果を読み込みます。
    読み込むと、モデルが形状で色分けされます。

温度コンターの作成

この手順では、領域全体にわたる温度分布のコンタープロットを作成します。

  1. Resultsツールバーで をクリックしてContourパネルを開きます。
  2. Result typeでTemperature(s)を選択します。
    その下のドロップダウンが自動的にScalar valueに設定されます。
  3. Applyをクリックします。
  4. パネル領域のDisplayタブで、Discrete colorオプションをオフにします。


    図 14.
  5. Legendタブをクリックし、つづいてEdit Legendをクリックします。表示されたダイアログで、Numeric formatをFixedに変更してOKをクリックします。
  6. Resultsブラウザの空白部分を右クリックし、Create > Section Cut > Planarの順に選択して切断面を作成します。
    Section Cutsツリーに新しいエンティティ名としてSection 1が作成されます。
  7. Section 1の横にある をクリックして、グラフィックスウィンドウのグリッド表示をオフにします。
  8. Standard Viewsツールバーの をクリックすることで、xz平面を正面から見た表示にします。
  9. 次のようなコンタープロットが表示されることを確認します。


    図 15.

要約

このチュートリアルでは、HyperWorks製品であるAcuSolveHyperMeshHyperViewを使用して、P1輻射モデルの設定、輻射伝熱シミュレーションの実行、その結果のポスト処理のための基本的なワークフローを体験しました。まず、Altair HyperMeshでモデルをインポートしました。次に、シミュレーションパラメータを設定して、HyperMeshから直接AcuSolveを起動しました。AcuSolveによる解析が完了した後、HyperViewを使用して結果をポスト処理し、コンタープロットを作成しました。