RD-E: 1102 ひずみ速度効果
ひずみ速度効果を検討し、ひずみ速度の除去(フィルター処理)による影響を確認します。
荷重速度による機械的特性の変化は、流動応力の増加速度に起因しています。流動応力が増加すると、材料に応じて破断伸度が増加または減少します。これによって、急速に変化する荷重が発生したときに、破断に至らない状態で材料の各部が吸収できるエネルギーも変化します。この例題では、フィルターの有無に応じた材料のひずみ速度の影響を検討します。
使用されるオプションとキーワード
- シェル要素
- 等方性弾塑性Johnson-Cook材料(/MAT/LAW2 (PLAS_JOHNS))
- 等方性弾塑性材料(/MAT/LAW36 (PLAS_TAB))
- 工学ひずみ / 公称応力、ひずみ速度効果、フィルタリング
- 境界条件(/BCS)
- 強制速度(/IMPVEL)
入力ファイル
本例題で使用される入力ファイルは下記のとおり:
<install_directory>/hwsolvers/demos/radioss/example/11_Tensile_Test/
モデル概要
RD-E: 1101弾塑性材料則の特性化では、1件の材料試験に基づいて材料の弾塑性挙動をモデル化することに注目しました。動的な問題では、材料の剛性が変形の速度(ひずみ速度)に応じて変化することがあります。この例題では、材料の剛性をひずみ速度の関数としてモデル化する方法を取り上げます。まず、ひずみ速度に応じて応力ひずみ曲線をスケーリングする2つの係数を指定した/MAT/LAW2を使用します。次に、さまざまなひずみ速度で得られた試験データを/MAT/LAW36で使用して、材料のひずみ速度の挙動をモデル化します。各要素の相当ひずみ速度は、/ANIM/ELEM/EPSD出力要求または/H3D/ELEM/EPSD出力要求を使用してコンター出力として得ることができます。
引張試験のひずみ速度は、測定部位の伸張速度を測定部位の長さで除算して求めます。このモデルにおける測定部位の長さは、節点102から節点616までの距離なので80mmです。節点616の変位と速度は、節点102を原点とする運動座標系(/FRAME/MOV)を基準とした値として出力されます。したがって、節点616の相対変位と相対速度に基づいて、測定部位長さの変位と速度を直接プロットできます。
単位: mm、ms、Kg、N、 GPa
時間の単位はミリ秒(ms)なので、このモデルで使用するひずみ速度の単位は次とおりです:
/MAT/LAW2
Johnson-Cook塑性モデル(/MAT/LAW2)を使用して、弾塑性に対するひずみ速度の効果を考慮します。
- ひずみ速度
- 参照ひずみ速度
- ひずみ速度係数
項は、ひずみ速度がその参照値を上回る場合に、応力ひずみ曲線をスケーリングします。
ひずみ速度が参照ひずみ速度よりも小さい場合、応力ひずみ曲線はスケーリングされません。この例題には試験データがないので、概略値である = 1x10-4ms-1と = 0.05を使用して、この挙動を表現します。材料のひずみ速度の挙動が未知の場合、一般的にはひずみ速度の係数を=0と定義します。したがって、材料に対するひずみ速度の効果はありません。
/MAT/LAW36
結果
動的荷重を数値的に適用していることから、ひずみ速度が激しく振動しています。これにより、実際の局所的応力応答にノイズが多い結果が得られることがあります。なめらかで、より物理的なひずみ結果を得るには、Fsmooth = 1を設定し、Fcutを使用してカットオフ周波数を定義することにより、ひずみ速度のフィルター処理を有効にします。
- シミュレーションの時間ステップ
- カットオフ周波数
- フィルタリングされたひずみ速度
したがって、
カットオフ周波数は、モデルの時間ステップの関数です。経験上、変形の速度も重要であることがわかります。自動車の衝突のように低速である場合、1~10kHz(1000~10,000Hz)が良好な値ですが、弾道のような高速イベントでは、フィルターによる減衰域を少なくするべきであり、したがって、1~10GHzが適切です。各シミュレーションの妥当な値を決定するためには、優れた工学的判断が必要です。
ひずみ速度効果がある/MAT/LAW2
陽解法はエレメント-バイ-エレメントの手法で、時間的な振動の局所的な取り扱いがメッシュ内に空間的な振動を加えます。フィルタリングにより、より物理的なひずみ速度が得られています。また、フィルターによる減衰がない応力ひずみ曲線の結果には振動が見られます。
ひずみ速度効果がある/MAT/LAW36
図 9からわかるように、準静的試験の場合よりもひずみ速度が速いと、材料の剛性が高くなります。準静的試験の場合とひずみ速度フィルターを使用しない場合は、応力が減少する原因となる材料のネッキングが発生します。
まとめ
動的イベントでは、ひずみ速度効果が重要です。LAW2には、モデルにひずみ速度効果を追加するために使用できる2つのパラメータがあります。LAW36では、さまざまなひずみ速度に対して、それぞれ別々の応力塑性ひずみ関数を定義できます。どの材料モデルを使用する場合でも、ひずみ速度フィルター処理を使用して数値ノイズを低減し、応答をなめらかにすることが重要です。