RD-E: 2201 SPHを用いた着水(単一ドメイン)

単純な試験体の水への衝突

問題は単純な試験体の水の中への落下から成り、ヘリコプターの着水をシミュレートします。

使用されるオプションとキーワード

  • SPHモデル化と6面体ネット
  • 粘性流体則(/MAT/LAW6 (HYDROまたはHYD_VISC))と水への衝突のモデル化
  • インターフェース(/INTER/TYPE7
    シミュレーションでは1種類の接触が起きます。構造の表皮(シェル有限要素)と水(SPH セル)の間の接触がスライディングインターフェース(TYPE7)を用いてモデル化されます。サーフェスの表皮とSPHセルの間のギャップは3 mmです。最適化の後、剛な試験体と水との間のインターフェース力の制御に用いられるペナルティ剛性インターフェースは 0.1が用いられています。

    rad_ex_fig_22-2
    図 1. SPH流出境界サーフェスのサイレント境界(NRF)(緑色)
  • 剛体(/RBODY

    試験体は剛体を用いてモデル化され、剛体のメイン節点(ID: 287002)に質量23.0422 kgが付加されます。

  • 初速度(/INIVEL

    初速度が、Z軸に一致させて剛体のメイン節点に設定され、その値はそれぞれ3.5 m/s、6.8 m/s、および11 m/sです。

  • 加速度計(/ACCEL

    加速度計が剛体のメイン節点に設定されます。

  • 重力(/GRAV

    重力荷重gz = -9.81 m.s-2が試験体に作用されます。

  • インターフェース(/INTER)
  • SPH流出(/SPH/INOUT

    平行6面体の水のメッシュは5つのOUTLET SPH境界フロンティア吸収条件の面で囲まれます。水の中の距離2 x hoにコントロールサーフェスが置かれます。このサーフェスは緑色で示され(図 1)、その法線ベクトルが領域内部を指すように向けられます。この流出サーフェスで、特定のサイレント境界(NRF)がSPHセルに与えられます。

入力ファイル

本例題で使用される入力ファイルは下記のとおり:
Impact_velocity=3.5m/s
<install_directory>/hwsolvers/demos/radioss/example/22_Ditching/Ditching_Mono_Domain_SPH/v_35/*
Impact_velocity=6.8m/s
<install_directory>/hwsolvers/demos/radioss/example/22_Ditching/Ditching_Mono_Domain_SPH/v_68/*
Impact_velocity=11m/s
<install_directory>/hwsolvers/demos/radioss/example/22_Ditching/Ditching_Mono_Domain_SPH/v_110/*

モデル概要

単位: mm, ms, KN, GPa, kg

三角形の試験体の水上への衝突が実行され、結果は質的に2と共に、また、Politecnico di Milanoにより得られた実験データとも比較されます。 1

比較は3.5 m/s、6.8 m/s、11 m/sの複数の衝突速度で実行されます。

試験体に用いられる材料は線形弾性材料則(/MAT/LAW1)に従い、以下の特性を持ちます:
材料特性
初期密度
7.8 x 10-6 kg.mm-3
ヤング率
206.9 GPa
ポアソン比
0.3
水の材料則は粘性流体則(/MAT/LAW6)で、以下の特性を持ちます:
材料特性
初期密度
1 x 10-6 kg.mm-3
運動粘性
0
圧力のカットオフ
-0.0001 GPa
圧力シフト
0 GPa
C0
0 GPa
C1
2.199 GPa
C2
5.351 GPa
C3
7.324 GPa
C4
0 GPa
C5
0 GPa
単位体積あたりの初期エネルギー
0 mJ/mm3

ex22_fig1
図 2. 問題のデータ

モデリング手法

試験体はシェル要素を用いて平均メッシュサイズは15 x 15 mm2です。

水は6方最密充填ネットでスムージング長さ“ho” が28.2843 mmに等しいSPH粒子でモデル化されます。それぞれのネットの粒子が16 mm3と質量16 gを表します。このパートは36075 SPHセルを用います。

水のブロックの大きさはモデルサイズとシミュレーションCPU時間を減らす目的から試験体の形状に合わせられます。

結果

出力圧力

SPHモジュールは圧力時刻歴値を出力できません。アニメーションの値のみは、実験データと比較することができます。 図 3図 4は、6.8 m/sという衝突速度に対応して、くさびがSPH水に着水するときの圧力の変化を示しています。代表的な圧力勾配を実現するために、圧力範囲は、最小値については-0.01 GPaに固定され、最大値については0.08 GPaに固定されています。実験データとの比較では、その圧力値は基本的に同じで、波動伝播が良く描写されています。

rad_ex_fig_22-3
図 3. 着水シミュレーション(最初から3 msまで)

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図 4. 着水シミュレーション(4 msから9 msまで)

加速度出力

試験体には、剛体のメイン節点に加速度計が設定されています。9単位で表された加速度値が実験値 1とVon Karmanによる解析解の両方と比較されます。2 信号は計算後CFC 60(-3db)フィルター周波数でフィルタリングされます。フィルタリングはピークの間の不一致を減少させます。

図 5図 6および図 7は、くさび試験体の剛体のメイン節点の3とおりの衝突速度3.5、6.8、および11 m/sでの時刻歴結果を示します。

rad_ex_fig_22-5
図 5. 衝突速度3.5 m/sでのくさびの減速度

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図 6. 衝突速度6.8 m/sでのくさびの減速度

rad_ex_fig_22-7
図 7. 衝突速度11 m/sでのくさびの減速度

3つのケースで、OUTLET SPH境界条件を用いたSPHアプローチは良い減速度を示しています。ヘリコプターの着水形態8 m/s付近の衝突速度で、減速度は実験データ1とVon Karmanの解析解と連成されています。 2

まとめ

シミュレーションは、OUTLETオプションを用いた SPHアプローチを用いて、単純な試験体の着水を数値的な問題なくモデル化できることを示しています。

SPHと流出の結果は実験結果とも解析解とも非常に近くなっています。結論として、着水のシミュレーションで正しい結果を達成するためには、SPH法を用いた水のブロックをOUTLET境界条件と共にモデル化することが必要と言えます。

1 CAST Deliverable 5.5.1 Generic Water Impact Tests performed at Politecnico di Milano (Polytechnic University of Milan)
2 Olivier Pastore Study and modelization of rigid bodies impact during sea landing phase; Annex 1 Von Karman's Theoretical Models, T. Miloh et al.May.