RD-E: 2203 SPHとALEを用いた着水(マルチドメイン)
マルチドメインでのSPHおよびALEアプローチを用いた単純な試験体の水への衝突。
問題は単純な試験体の水の中への落下から成り、ヘリコプターの着水をシミュレートします。
使用されるオプションとキーワード
- /SUBDOMAIN (マルチドメイン)
- /RAD2RAD/ON (Engine)
入力ファイル
- SPH(マルチドメイン)
- <install_directory>/hwsolvers/demos/radioss/example/22_Ditching/Ditching_Multi_Domain_SPH/*
- ALE(マルチドメイン)
- <install_directory>/hwsolvers/demos/radioss/example/22_Ditching/Ditching_Multi_Domain_ALE/*
モデル概要
単位: mm, ms, KN, GPa, kg
SPH着水として例題2201を、ALE着水として例題2202を使用し、続いてSPH着水とALE着水にマルチドメインアプローチを適用します。
マルチドメイン(単一入力フォーマット)アプローチのモデリングの方法
- Starterで/SUBDOMAINをセットアップします:
- サブドメインの定義に/SUBDOMAINを使用します。この例題では、パートID 19がサブドメインとして定義されます。
- SPH着水の場合:
図 1. - ALE着水の場合:
図 2.注:Subdomain_title
“SPH_SubDomain
”(または“ALE_SubDomain
”)は、サブドメインEngine名SPH_SubDomain_0001.rad(またはALE_SubDomain_0001.rad)と同じでなければなりません。
図 3. マルチドメインアプローチにおけるドメインの説明
- 2つのEngineファイルでセットアップします:
- 1つ目のEngineファイル(メインドメイン):
- 単一ドメインのEngineを取り込み、/RAD2RAD/ON キーワードを挿入。
- 1つ目のEngineファイル内のALE用自由要素時間ステップコントロールまたはSPH用自由節点タイムステップコントロール。
- 2つ目のEngineファイル(サブドメイン):
- 単一ドメインのEngineを取り込み、/RAD2RAD/ON キーワードを挿入。
- Engine名および/RUN内の実行名を更新。それらは、Starter /SUBDOAMIN内の
subdomain_title
と一致している必要があります。 - Lagrangeパート(part ID 19)固有のタイムステップコントロールを設定。
図 4. StarterおよびEngineファイル内でのマルチドメインのセットアップ(例としてSPH着水) - 1つ目のEngineファイル(メインドメイン):
メインドメインとサブドメインとの間の接触
Radiossバージョン14.0よりStarterは、マルチドメイン単一入力フォーマットのドメイン間のカップリングリンクを自動的に生成します。SPHでは、LagrangeサブドメインとSPHメインドメイン間の/INTER/TYPE7カップリングリンクを用いた着水が自動的に生成されます。ALEでは、LagrangeサブドメインとALEメインドメイン間の/INTER/TYPE18カップリングリンクを用いた着水が自動的に生成されます。
結果
単一ドメインとマルチドメインの結果
単一ドメインとマルチドメインの結果を比較するために、SPH着水とALE着水での初速11m/sのモデルを使用します。
- 単一ドメインとマルチドメインのエネルギー比較
図 5. 左: SPH着水; 右: ALE着水 - 単一ドメインとマルチドメインの加速度比較
図 6. 左: SPH着水; 右: ALE着水マルチドメインでの時間ステップは、単一ドメインと比べてかなり大きくなっています。
- 単一ドメインとマルチドメインの時間ステップ比較
図 7. 左: SPH着水; 右: ALE着水理論的な速度上昇αの定式化:(1) ここで、- 要素数
- サイクル数
- 要素平均時間コスト / サイクル
速度上昇αは以下のファクターで定式化することも可能です:- 相対的な要素数:
(2) - 相対的な時間ステップ(相対的なサイクル数):
(3) ここで、- 時間ステップ
- 相対的なサイクル毎のコスト:
(4) - Lagrangeシェル
- = 1
- Lagrangeソリッド
- = 3
- ALEソリッド
- = 6
- SPHセル
- = 15
そこで、速度上昇αは:(5) 経過時間:
図 8. SPH着水
図 9. ALE着水経過時間の比較後、マルチドメインFSIの速度上昇は、単一ドメインのそれの6~9倍であることが見てとれます。
まとめ
- マルチドメインは特に、多数のALE要素またはSPHセルを含むFSIシミュレーションに適用されます。そこでは、Lagrange構造の要素数ではかなり小さいものと比べて、時間ステップが大幅に大きくなります。
- ドメインを跨ぐ接触が最小化される必要のある純粋なLagrangeモデルへの適用と比較すると(自動化されていない限り)、マルチドメインのFSIへの適用は、そのセットアップの容易さにより、格段にシンプルなものとなっています。
- このセットアップの容易さのおかげで、FSIでのマルチドメイン結果は、従来の単一ドメインの結果と比べて偏差の可能性が少なくなります。
- FSIシミュレーションは大きい時間ステップで大きなALEまたはSPHドメインを擁することがしばしばあり、マルチドメインの速度上昇は、Crashにおけるような純粋なLagrangeシミュレーションでのそれよりも格段に大きくなります。
コメント
- マルチドメインFSIについては、流体と構造間のTYPE7インターフェース(SPH)もしくはTYPE18またはTYPE22インターフェース(ALE)での接触を最小化する必要はありません(純粋なLagrangeマルチドメインでは必要)。
- マルチドメインFSIでは、メインドメインを、スケーリングファクターが0.5の自由要素時間ステップ(ALEの場合)、およびスケーリングファクターが0.6の自由節点時間ステップとして使用することが推奨されます。
- Lagrangeパートがタイド接触インターフェースTYPE2を用いてアセンブルされると、Spotflag = 0または1でパフォーマンスが低下するおそれがあります。
- この問題を解決するために運動条件定式化からペナルティ定式化に切り替えるには、Spotflag = 26 と設定します。そのような(Spotflag = 26 の)場合、アサインされている接触剛性に応じて接触は甘くなります。また、重大なペナルティが起こらないことを確実にするために、アニメーション結果で接触の品質を確認することが推奨されます。