RD-E: 2100 カム

カムシャフトのモデル化で、エンジンの回転移動を取り込んでインテークとエギゾーストバルブ動作のための線形移動への変換が検討されます。

カムは、移動を円から線形に変換するデバイスと考えることができます。自動車のカムシャフトはエンジンの回転移動を取り込み、インテークやエギゾーズトバルブの動作に必要な線形移動に変換します。この例題の目的はカム-バルブシステムの動的挙動と運動学的移動のRadiossでのシミュレーション能力を示すことにあります。2次曲面とギャップのない接触アルゴリズムを持つ適切で正確な接触モデルを用いてスムーズなバルブの移動がシミュレートできます。

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図 1.

使用されるオプションとキーワード

  • カムに一定角速度を与えるため、剛体が内部節点に対して図 2に示すように生成されます。メイン節点はカムシャフトの軸に移動します。
    バルブヘッドをスプリングに付けるため、もう1つの剛体が生成されてスプリングのない力を複数の節点に分配します。

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    図 2. 剛体カム
  • 境界条件:
    • カムのメイン節点は、Y軸を中心とした回転を除いて拘束されています。
    • バルブのメイン節点は、Z軸方向の並進を除いて拘束されています。
    • スプリングの一端はバルブに対して結合され、他は固定されます。

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      図 3. バルブの境界条件
  • 強制速度:剛体のメイン節点に回転速度314rad/sを適用します。速度は時間のセンサーで短い遅れ時間(Tdelay =0.0002s)でアクティブにされます。このセンサーは初速度と強制速度を同時に与えるのを避けるために必要です。

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    図 4. 強制速度
  • 初速度:
    剛体のメイン節点を含むすべてのカムの節点に初期回転速度を適用します。原点(回転の中心)とオリエンテーションベクトルを定義する必要があります。

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    図 5. 初速度
  • インターフェース:TYPE16インターフェースで、2次メインサーフェスと節点グループとの接触をシミュレートします。曲面と平面との接触の場合は、曲面をメインサーフェスとして定義し、平面パートの節点をセカンダリとします。

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    図 6. インターフェースTYPE6
    TYPE7インターフェースはペナルティ法またはLagrange乗数法のどちらかで機能します。その基本的な定式化では、2つの多面体のサーフェス間の接触をシミュレートします。Lagrange乗数法の使用で、その運動条件をギャップの導入なしに厳密に満足させることができます。

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    図 7. インターフェースTYPE7

入力ファイル

本例題で使用される入力ファイルは下記のとおり:
インターフェース16:
細かいメッシュ
<install_directory>/hwsolvers/demos/radioss/example/21_Cam/interface16/fine_mesh/I16S16FM*
粗いメッシュ
<install_directory>/hwsolvers/demos/radioss/example/21_Cam/interface16/coarse_mesh/I16S16CM*
インターフェース7:
ペナルティ法
<install_directory>/hwsolvers/demos/radioss/example/21_Cam/interface7/penalty/second_cam/I7PMCAM*
<install_directory>/hwsolvers/demos/radioss/example/21_Cam/interface7/penalty/second_valve/I7PMVALVE*
Lagrange乗数法
<install_directory>/hwsolvers/demos/radioss/example/21_Cam/interface7/lagrange/second_cam/I7LMCAM*
<install_directory>/hwsolvers/demos/radioss/example/21_Cam/interface7/lagrange/second_valve/I7LMVALVE*
摩擦
<install_directory>/hwsolvers/demos/radioss/example/21_Cam/interface7/friction/I7PFMCAM*

モデル概要

平面と曲面の間の接触のモデル化には多面体の曲面を用います。問題の形状と曲面に適合する、インターフェース7と16が記述され、比較されます。

説明する問題は、角速度314 rad/sで回転するカムから成り、2つのスプリングにつながれたバルブと交わってそのへ並進移動をを誘発します。重ねられたスプリングは可変剛性を持っています(スプリング 1: 30000 N/mとspring 2: 15000 N/m)。スプリング高次と低次の回転周波数をコントロールします。
  • カムは長さ36mmで、最大幅14mm、厚さ18mmです。
  • バルブは直径44mmで厚さ3mmです(図 8)。
  • スプリングは長さ40mmです。

以下の単位系が用いられます: mm, s, kg, mN , KPa

カムとバルブに用いられる材料はスチールです。これは等方性弾塑性材料(/MAT/LAW2)とJohnson-Cook塑性モデルで特性化され、以下の特性に従います:
材料特性
初期密度
7.8 x 10-06 Mkg/l
ヤング率
2.1 x 10+08 KPa
ポアソン比
0.3
降伏応力
20000 KPa
硬化パラメータ
40000 KPa
硬化指数
0.5

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図 8. 問題の形状

モデリング手法

この例題で取り上げられた問題は平面と曲面の間のインターフェースのモデル化です。このケースでは2次要素の使用が最も適切です。

最初のモデリングでは、TYPE16インターフェースと16節点シェル要素がバルブとカムの両方に使用されます。20節点ソリッド要素がカム内部のメッシュに用いられます(図 9)。

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図 9. BRIC20とSHEL16メッシュ
線形要素を用いた別のモデルも検討されます。カムとバルブの間の接触はTYPE7インターフェースで定義されます。パート間の閉じた接触を満足するため、Lagrange乗数法が選択されます。

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図 10. BRICK要素メッシュ
スプリングはRadioss TYPE4スプリングを用いてモデル化されます。剛性は線形で以下の関数で定義されます。減衰は無視されます。
l-l0 (mm) -40 0 50
Fspring 1 (mN) -1.5 e+06 -0.3 e+06 1.2 e+06
Fspring 2 (mN) -0.75 e+06 -0.15 e+06 0.6 e+06

結果

最初に、問題の運動学的結果に焦点を当てます。ここでは、剛体のバルブのメイン節点における速度と加速度について得られた結果を比較します。

図 11のグラフは、ペナルティ法でTYPE7インターフェースを使用した場合にバルブのメイン節点で得られる速度を示しています。生の結果はペナルティ法が不連続な力を与えるためノイズの多い結果が得られています。スムーズな曲線はローパスCFC 180(3db)フィルターにより得られたものです。 図 12 に同じメイン節点での加速度を示します。

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図 11. ペナルティ法を用いたTYPE7インターフェースでのメイン節点バルブの鉛直速度
フィルターを用いる場合には注意を払う必要があります。フィルターの曲線は実際、一般的に周辺効果(border effect)の影響を受けます。フィルターは曲線の最初と最後の部分で誤差を引き起こします(例えば、0 < t < 0.002と0.038 < t < 0.04の間)。

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図 12. ペナルティ法を用いたTYPE7インターフェースでのメイン節点バルブの鉛直加速度

フィルターの品質はサンプルの数に依存し、このケースではRadiossでそれぞれのサイクルで計算された点の数になります。このため、良い結果を得るため、特に加速度曲線でのためにEngineファイル(*_0001.rad)内の/TFILEパラメーターには小さな値が使用されます。

以下のセクションでは、フィルターをかけた曲線のみが異なるモデルを比較するために示されます。

インターフェースの比較

図 13図 14はペナルティ法のTYPE7インターフェースを用いたモデルでの速度と加速度曲線を示します。メインパートとセカンダリパートの定義の場合は、結果が少し異なります。

図 15図 16はLagrange 乗数法を用いたTYPE7インターフェースでの速度と加速度曲線を示します。

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図 13. ペナルティ法を用いたTYPE7インターフェースでのバルブのメイン節点の鉛直速度

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図 14. ペナルティ法を用いたTYPE7インターフェースでのバルブのメイン節点の鉛直加速度
図 15図 16のいずれでも、カム上のセカンダリ節点とバルブ上のメインサーフェスを使用したモデルが最も現実に近いと考えられます。

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図 15. Lagrange乗数法を用いたTYPE7インターフェースでのバルブのメイン節点の鉛直速度

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図 16. Lagrange乗数法を用いたTYPE7インターフェースでのバルブのメイン節点の鉛直加速度

ペナルティまたはLagrange乗数法のTYPE7インターフェースを用いた場合でも良い結果を達成することは可能ですが、2次メッシュでTYPE16インターフェースを用いて多面体による振動を減らすことができます。

図 17図 18で、TYPE7とTYPE16インターフェースを用いたモデルの結果を比較します。

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図 17. バルブのメイン節点の鉛直速度

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図 18. バルブのメイン節点の鉛直加速度

メッシュの比較

TYPE16インターフェースでのモデル化を考慮して、相対的に粗いメッシュと細かいメッシュを用いてメッシュ密度の影響を検討します。
細かいメッシュ:
カム
200個のSHEL16要素(外側)と250個のBRIC20要素(内側)
バルブ:
88個のSHEL16要素
粗いメッシュ:
カム
40個のSHEL16要素
バルブ:
12個のSHEL16要素

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図 19. バルブのメイン節点の鉛直速度

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図 20. バルブのメイン節点の鉛直加速度

粗いメッシュでは曲面の多面体化を増幅するものの、フィルター後の速度の結果に影響を与えていません。しかしながら、細かいメッシュの加速度では、それぞれの節点 / サーフェス接触で限られた寄生振動を持ち、より良い結果を与えています。

摩擦

ペナルティ法を用いたインターフェースTYPE7のオプションで、摩擦をモデルに与えることができます。いくつかの摩擦モデルが利用可能です。ここではCoulomb摩擦モデルが用いられます。摩擦ありとなしのモデルの間で比較がなされます。

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図 21. ペナルティと摩擦を用いたTYPE7インターフェース

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図 22. ペナルティ法を用いたTYPE7インターフェースでのバルブのメイン節点の鉛直速度

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図 23. ペナルティ法を用いたTYPE7インターフェースでのバルブのメイン節点の鉛直加速度
表 1. CPU と時間ステップの比較
シミュレーション CPU(正規化) 時間ステップ
細かいメッシュでのTYPE16インターフェース 22,50 0.8365 x 10-7
粗いメッシュでのTYPE16インターフェース 1 0.207 x 10-6
ペナルティ法でのTYPE7インターフェース

(カム上のセカンダリ節点とバルブ上のメインサーフェス)

1.65 0.2133 x 10-6
ペナルティ法でのTYPE7インターフェース

(バルブ上のセカンダリ節点とカム上のメインサーフェス)

1.75 0.2117 x 10-6
TYPE7インターフェース: Lagrange乗数法

(カム上のセカンダリ節点とバルブ上のメインサーフェス)

1.68 0.2133 x 10-6
TYPE7インターフェース: Lagrange乗数法

(バルブ上のセカンダリ節点とカム上のメインサーフェス)

1.69 0.2126 x 10-6
ペナルティ法と摩擦を用いたTYPE7インターフェース

(カム上のセカンダリ節点とバルブ上のメインサーフェス)

1.66 0.2133 x 10-6
ペナルティ法と摩擦を用いたTYPE7インターフェース

(バルブ上のセカンダリ節点とカム上のメインサーフェス)

1.65 0.2126 x 10-6

まとめ

この例題ではRadiossでのメカニズムのモデル化、特に接触のメカニズムの場合の能力について示しました。インターフェースTYPE16およびTYPE7が、平面と曲面の間の接触のモデル化に用いることができます。TYPE16インターフェースでは、2次曲面の間の接触をギャップを用いることなしでシミュレートすることが可能で、正確な結果を妥当な計算時間内に得ることができます。TYPE7インターフェースは接触の摩擦をモデル化することが可能で、少ない計算時間で良い結果を得ることができます。